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「先輩? 一人で何してるの?」


 そう声を掛けてきたのはノエルだ。あの時以来会っていなかったから久しぶりだけど、丁度よかった。


「久しぶりだねノエル。僕はレイラ先生の研究室に向かってるだけだよ。君は?」


「私は、まあ適当に学校を徘徊してただけだよ。それより、レイラ先生のところに何しに行くの? もしかして面白そうなことでもする?」


 興味深々と言った様子で話してくるから、僕としてもやりやすい。


「うーん……面白くはないかもしれないけど、珍しいものは見れるよ。一緒に行く?」


「いいの? 先輩ありがとう!」


 そうして元気なノエルを連れて、僕らは廊下を歩く。


「そういえば聞きたいことがあったんだけどさ……レフィアがチームに入ってくれたら、ノエルも入ってくれるんだよね?」


 最初に遭遇した時に、そんなことを聞いた覚えがあったから勝手に思っていたけど、一応確認しておきたかった。


「……そうだね。私はフィアの親友だから。どこにでもついていくよ」


 親友だから、か。


「聞けて良かったよ。それと、レフィアの事で教えて欲しいことがあるんだけどいいかな?」


 レフィアを魔法に惹きつける為にはもちろん彼女のことを知る必要がある。親友のノエルは、その情報を引き出すのにうってつけだ。だから会いに行かなければならないとは思っていた。ここで偶然出会えてよかったよ。


「いいよ。フィアの事なら何でも聞いて!」


「ありがとう。なら遠慮なく聞かせてもらうよ。まず、レフィアの適性属性が何かは分かる?」


「知らないんだ……結構有名だよ。フィアは水の魔法を好んで使ってる。後、得意なのは広範囲に及ぶ大魔法。逆に細かい制御は苦手なんだよ。フィアらしいでしょ?」


 想像できる。細かい作業とかは嫌いそうだ。


「確かにそれっぽい。性格が見えてきて面白いね。」


「でしょ? もう事情は聞いただろうから話すけど……フィアが魔法の制御に失敗して仲間を巻き込んじゃったなんてこともあったみたい」


「それって……レフィアが前に入っていたチームでのこと?」


「うん。それが辞める時の直接的な理由になったって聞いた」


 そんなことがあったのか。魔法による事故はどこのチームでもある。そこを仕方なかったで済ませられない程に、チームメイトとレフィアの間で溝があったのだろう。


「嫌な事件だね」


 レフィアの言葉を聞いていた限り、元々嫉妬などもあって、その件で爆発しちゃったのだろう。喧嘩になってレフィアが責められいる姿が簡単に思い浮かんだ


「フィアがそれで責められちゃうんだから嫌になるよね。私思うんだ。本当はその件で怒ったんじゃなくて、なんとかしてフィアを怒りたかったから、フィアに非がある事件が起こるのを待ってんじゃないかなって……」


 本人にしか本心は分からないけど、そういう部分もあるのかもしれない。ノエルは余程その事件に思う部分があったのだろう。真面目な顔になっている。


「ごめん。話が逸れたね。まだ聞きたいことはある?」


 瞬時に笑顔になるノエルの切り替えの早さに僕は驚いた。


「じゃあ、レフィアが初めて魔法を使った時の事とかは知ってる?」


「うーん…………ちょっと思い出すから待ってね。そんなことを言ってたような言ってなかったような……」


 レフィアの魔法に対する原初の記憶。それが大事だと思った。レフィアが魔法に魅了されるきっかけになった事だろうから。


「あ、思い出した! 初めてかどうかは分からないけど、王城に居た時の事なんかは聞いたことがあるよ」


 まだ、魔法学校に夢を見ていた頃のレフィア。僕の知りたいところだ。


「確か、魔法を使い始めてすぐに魔法で生成した水を凍らせたとか。周りが驚いて、それを見て才能を自覚したとか言ってたような気がする」


 いきなり生成した水を凍らせるまでに習熟していたのか。そこまでの温度操作はかなりの高等テクニックだ。


「それは凄いな」


「えへへ。私もその話を聞いた時はちょっと引いちゃったよ」


 そんな少女が、さらに努力して魔法を磨くんだから、入学時点でもレフィアの腕前は相当なものだったのだろう。


「うん。なんだかレフィアのことが深く分かってきたような気がする。ありがとうノエル」


「それなら良かった。……今度は私が質問してもいい?」


「いいよ。何が聞きたいの?」


「先輩は、本当にフィアと暮らしていて不自由ないの? あの時はフィアがいたし、もう一度聞かせて欲しいな」


正直なんでそんなことが気になるのか分からない。レフィアのことを気にするのならともかく、なんで僕をそんなに気遣うんだろう。


「前にも言ったけど、僕は大丈夫だよ。レフィアとも上手くやれてるしね」


「ふーん。そうなんだ。じゃあ……フィアと別れて私と一緒に暮らさない?って言ったらどうする?私なら、毎日疲れて帰ってくる先輩を癒してあげられるよ」


何を言ってるんだノエルは。僕にどう答えて欲しいんだろう。


「それは……」


僕が迷っているのを見て、ノエルは真剣な顔をしていた。


「ごめん。今のは忘れてね。特に重要なことでもないから…………」


よく分からないけど、そう言い残してノエルが先に歩いていく。もう少しでレイラ先生の研究室だ。






研究室に着いた僕らは、室内でレイラ先生と話していた。


「お前までいるとはな。何をしに来たんだ?」


ノエルの方を見てレイラ先生は言う。これまでは僕一人でしか来たことがなかったから、そう言われるのも仕方ない。あんまり見せるような事でもなかったし、ノエルに話を聞くための口実であって今日も一人で来るつもりだったから、予測できるわけはない。


「先輩の付き添いだよ。なんだか面白いことをするみたいだったから……。それで、何をするの?」


「そんな大したことじゃないよ」


そう言って、僕は準備されていたある物を手に取った。


「石?」


ノエルは頭にはてなを浮かべる。まあぱっと見ではただの黒い石にしか見えないだろう。その姿を見て、レイラ先生が解説する。


「魔法石だ。かなりのレアものだからよく見ておけ」


その言葉と同時に、魔法石へ向けて僕の魔力をそのまま放つ。魔力というものは直接放っても何の意味も持たない。魔法として使って初めて意味を持つものだ。しかし、魔法石が魔力を受けた瞬間、黒い石が光り始める。


その後も、光は様々な色を放ち続ける。ノエルの方を見ると、綺麗な光景に見惚れているようだった。


しばらくそれを続けると、僕の魔力が限界に近づいてきたので止める。そして魔法石の輝きも同じく消えた。


「綺麗だった……何が起きたの?」


「魔法石の特徴の一つとして、魔力を受けると光り輝くというものがある。そして、その光の色は個人の魔力の質によって変わる。これほど綺麗に見えるのはレンの魔力が当たっている時くらいだろう」


「へー。私がすると何色になるんだろう」


気になるのは分かるけど、ノエルに渡すわけにはいかない。これが僕にとって大切なものだからだ。


「大丈夫かレン?」


「はい。いくら魔力量が少ないって言っても、何度もやれば調整出来るようになりましたよ」


「そうか。明日使うんだから今日はそれを持って帰れ。というよりこっちで預かるのも今日で最後にしてくれ」


「分かりました」


魔法石を持って僕は立ち上がる。魔力がほとんどないし早く帰って寝よう。


「それ。何に使うの?」


「明日、楽しみにしてて」


「ん?試合で使うってこと?」


そう。僕の欠陥を埋めるための道具だ。


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