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【特別編】アリアSSのご紹介!

今回はもったいなくもサカキショーゴさんが書いてくださったアリアSSを二連発でご紹介させて頂きます!

【ミィヤの関西弁の謎( ´∀` )】

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「ところでミィヤって、なぜそんな変な口調ですの?」


 次なる冒険の地へ転送された後、ふとアリアは疑問に思い、隣で浮遊するミィヤに訊ねた。

 声をかけられた毛玉型生物――否。まだまだ駆け出しの、アリアが生まれた世界の神ナルアーの〝使い〟である彼は「なんや今さら」と、関西弁をアリアに返す。「っちゅーか変な口調とは失礼やな。ウチの口調にはちゃんとワケがあるんや!」


「え、あるんですかミィヤちゃん?」


 すると今度は、アリアを挟んだ、ミィヤの反対側を歩くメイド服の少女フェリナまでもが質問してきた。

 アリアが神の御使いとなって初めて来訪した冒険の地で、彼女の美貌とその無双っぷりに惚れてここまで彼女達に付いてきた少女は意外そうな顔をした。今やもう聞き慣れた変な口調に、ちゃんとした理由があったのかと。


 すると、そんなフェリナの反応を見たミィヤは「な、なんか話さなアカン雰囲気になってきてもうたなぁ」と口にし、目を逸らしつつ苦笑した。


 しかしそれも束の間。

 このまま変な誤解を二人にされるよりはマシだと、ミィヤはポツポツとその関西弁の理由を話し出した。


「実はナルアー様の禁域に、アリアが来る前に別の世界の存在の魂が迷い込んだ事があんねん」


「別の、世界?」

「禁域のような世界でしょうか?」

 初めて知る概念を聞くなり、頭上に疑問符を浮かべて、顔を見合わせるアリアとフェリナ。


「ちゃうちゃう。禁域とはまたちゃうねん。なんっちゅうかなぁ……そもそも生まれた経緯の時点で大きくちゃう世界……って、トコか? まぁええわ。とにかくその世界から、ある魂が迷い込んできたんや。その魂っちゅうのが、どうもその世界で〝マンザイ〟とやらをやってた女でな。メッチャ面白かったでその女。できればその〝マンザイ〟とやらをこっちの世界に広めたいなーと思うくらいや。けどな、ナルアー様は『この世界の文化レヴェル的にまだ早い。というか外来種は勘弁願いたいな』言うてな、そのままその女には、元の世界の輪廻の輪へと還ってもろたんや。でもそれからのナルアー様はふさぎ込んでしもうてな。外来種やったけど、帰したんはもったいなかったとか思うたんやな。そしてウチは、そんなナルアー様を見ていられなくてなぁ。せめてウチがその女のように面白い事とか言えるようになろう思て、まずはその女の喋り方から真似して……こないな喋り方になったんや」


「……え、という事はミィヤあなた……オカマ口調という事ですの?」

「オカマちゃうわ!!」

 見方によっては、確かにそうとも取れるあらましだった。


「いやそもそも……ミィヤちゃんて、雄? 雌?」

 というかそもそもミィヤが雌なのか雄なのか謎なので……フェリナは困惑した。

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【ちょっと戦争モノなアリアSS】

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『実は、どこかの異世界で……時空そのものに干渉する、神の領域に片足突っ込んだよーな激ヤバ兵器が開発されたみたいでね。そしてそれが暴発したせいで、ある国で指名手配中だった呪術師一家が……どうもね、この世界とは異なる世界に転移しちゃったみたいなんだ。それで君達には、呪術師一家の捕縛を目指していたその国の警備兵達の、切なる願いにより……その転移した異世界に行って、その一家をなんとか捕縛してほしいんだ』


 駆け出しの神ナルアーが、数分前に言っていた事を……アリアは思い返す。

 いきなり異世界やらなにやらと、己の知らない概念を言われてチンプンカンプンであったが、ようは禁域以外にも世界があるのだとシンプルに考え、そしてその世界へと、いつものようにフェリナとミィヤと一緒に向かったのだが……。


「って、ここ……戦場ですわぁ!?」

 着いた途端に、アリアは絶叫する。


 そこかしこから聞こえる爆音、時折舞い上がる粉塵、さらには漂ってくる火薬や血の臭い……アリア自身は今まで、経験こそしてはいないが、冒険者としての冒険の中で似たようなニオイと空気は何度も感じ、さらには父から、かつてあった戦争の話をいつだったか聞いた事があるので、解る。


 いったいどういう世界の、どのような場所に転移させられたのかは不明ではあるが……ここが死者の国に一番近い場所の一つである事を。


 しかし考えている場合ではない。

 よく見ればアリア達の方へと、なにやら円錐状の、まるで先が丸い杭みたいな物体が飛んできている。

 アリアだけであれば、独力で、そのスキルを以て破壊できたかもしれない。だがすぐそばには、呪いなどに対しては無敵ではあるが物理攻撃に対しては対抗手段を持たないフェリナがいる。飛来してくる物体がどういうモノであるのか分からない以上、もしかすると破壊した瞬間こそ何かマズい事態になる可能性があるのでは、とアリアの中に嫌な予感が過り……彼女は咄嗟にフェリナをお姫様抱っこしてその場から逃走する道を選んだ。ミィヤについては心配ない。彼は飛べるからだ。


 逃げに逃げて数秒後。

 アリア達の背後――彼女達が先ほどまで立っていた場所で大爆発が起きた。


 先ほどの飛来物――ミサイルが爆発したのか。

 もしもあの場で飛来物を破壊していた場合、フェリナまでその爆発に巻き込んでいた事を知り、アリアは肝を冷やした。


「きゃあああああ!!!!」

 あまりの爆音と熱波と衝撃波に、フェリナがアリアに抱えられながら悲鳴を上げた。というか、集団対集団の戦争を経験していないフェリナにこの状況は、あまりにも刺激が強すぎる。というか幼くして戦争を経験していれば、会った時から心が十中八九(すさ)んでいるだろう。


「っ!! フェリナ、絶対に目を開けるんじゃありませんわよ!?」

 その場から逃げる事に夢中だったアリアが、途中である事に気づき、フェリナに指示をする。


 フェリナは一瞬どういう事か分からなかったが……己が慕うアリアの指示であるために「は、はい姫様!!」と素直に従った。


 フェリナの素直さに安堵の息を吐きながら、アリアは目の前の地獄……敵にやられて血だらけにされた屍たちや、先ほどのと同じ爆発にやられたのかもしれない黒焦げの屍たちの中を走り抜ける。

 少し吸っただけで咽るほどの刺激臭が、鼻腔へと漂ってくる。アリアだけでなくミィヤも、目を瞑っているフェリナも顔をしかめた。とにかくここは、できる限り呼吸をせずに走り抜けねば。


 数十分かけて、屍の中を走り抜けた。

 ようやく空気が、先ほどよりマシになり、アリア達は久方ぶりのマトモな呼吸を繰り返しながら戦場を進む。ミサイルは相変わらず飛び交い、タタタタッと乾いた音が轟き、人々の悲鳴がこだまするが、ここで呼吸せねばどこで呼吸をすればいいのか。


「というかミィヤ! この戦場のどこかに呪術師一家がいるんですの!?」

「ナルアー様が転移させたんやからそうやろ!」


 走りながら、アリアとミィヤは周囲の爆音に負けないくらいの大声で会話する。


「あ、でも……時空に干渉する兵器のせいで時空が乱れてて……そのせいで転移先がズレた可能性もあるかもしれへん」


「ぬわんですってぇ!?」

 まさかの可能性に、アリアは目を丸くした。


 すると、その時だった。


「ケルド人は大地の穢れ!!」

「今こそ我らレギド人に栄光あれ!!」

「ケルド人を一人残らず殺せ!!」

「俺達優秀なレギド人から仕事を奪ったケルド人を粛清しろ!!」


 向かった先から、濁声が聞こえてくる。

 ナルアーから、転移のついでに異世界語翻訳能力を貰っていたアリアは……その言葉に絶句した。


 ――まさか民族紛争か。


 そう思ったのも束の間。

 その濁声を発した兵士達が、ついに視界に入り……アリアの視界の中で、命乞いをしていた少年少女数人の頭を、次々に撃ち抜いた。銃を持つその手には、一切の躊躇がなかった。相手が穢れた存在だと、信じて疑っていないのだ。


「んなっ!! アイツら、なんちゅう事を!!」

 ミィヤは目の前の光景に驚愕した。


 己が仕える駆け出しの神ナルアーと一緒に、人類の歴史……戦いの歴史をかつて見てきたが、さすがの彼も、何度戦争の場面を見ても、慣れないモノは慣れないのだ。


 すると、その直後。

 彼はさらに驚愕した。


 隣から……自分でさえも背筋が凍るような禍々しい闘氣を感じたからだ。


「…………なん、で……」

 見ると、フェリナを抱えたアリアが肩を震わせていた。

 兵士への怒りで。殺された少年少女への悲しみで。そして……自分達人間の醜い姿に悔しさを覚えて。


「なんで……民族云々程度で、簡単に殺せますの!!!!?」


 分かっては、いる。


 これが人間の本性。

 自分とは違う存在を受け入れられない人間の、心の弱さ。


 それがこんな結果を生んだのだ。

 しかしそれでも、いやだからこそ……アリアは悔しかった。


 人はその意志の力でどこまでも強くなれるハズだ。綺麗な一面を持てるハズだ。

 だけど、どんなキッカケがあったかは知らないが。こんなにも醜い結果を生んでしまうほど、まだまだ人間が弱い事が……同じ人間として、とても悔しい。


「ふんっ!!!!」

 そしてその悔しさを、アリアは大地へと叩きつけた。


 フェリナをお姫様抱っこしているので、俗に言う震脚で。

 途端に周囲の大地に亀裂が走り、一部の地面が、まるで畳返しの畳の如くめくれ上がり、そして――。


「あなた方こそ、この大地に粛清されなさい!!!!」


 ――めくれ上がった大地を、そのまま兵士達へと蹴り飛ばした!!


「「「「!?!?!?」」」」

 兵士達は異変に気づく……が、もう遅い。


 彼らはめくれ上がった大地に押し潰され……そのまま失神した。


 アリアは、それを見ても……しばらく肩で息をしていた。

 まだ怒りが、悲しみが、悔しさが己の中から出て行かない。

 それだけこの世界は、彼女の知らない異世界は理不尽な世界だった。


「『やぁ、ゴメンゴメン』」

 すると、その時だった。


 ようやくナルアーが……ミィヤを通じて、声だけ再登場した。


「『時空の流れが酷くて、間違えて変な場所に送っちゃったよ。今から正しい場所に送るね』」


「……そう、ですわね」

 アリアは、能天気な己の上司にウンザリした。

 怒りでさらに肩が震える。そしてその怒りのままに、彼女はナルアーを睨みつけ叫んだ。


「早く私達を正しい場所に送りなさい!! もうこの場に……一秒でもいたくないですわ!!」


「『わ、分かったよ。そんなに怒らないでよ。悪かったと思うし』」

 怒鳴るほど怒っているとは思っていなかったナルアーは、一瞬たじろいだ。

 しかし再転移させる寸前に、ミィヤの記憶から何があったのかを確認し『あー。そりゃあ怒るか』とさすがに納得した。


 直後。アリア達は再転移を開始した。

 周囲の光景が歪み、後ろへと高速で流れていく。


「…………姫様……」

 するとその最中、フェリナが口を開いた。


 そしてその直後。

 アリアは思い出した。


 彼女の耳を塞ぐのを、忘れていたと。


「…………私達が行く場所も、あんな悲しい場所なのでしょうか」

 今も言いつけを守って瞑っている目蓋から、涙がこぼれる。


 彼女も聞いたのだ。兵士達の濁声。そして少年少女の悲鳴を。

 まだ幼い彼女にとって、それはどれだけ衝撃的な内容だっただろう。


「……もし、そうだったとしても」

 そんなフェリナを見て、アリアはさらに悲しい気持ちになった。

 しかし彼女は。すぐにフェリナのためにも、自分は前を向かねばと心に決めた。


「そんな理不尽、私が焼き払ってやりますわ」

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お世話になっている割りに不義理ばかりで、本当にサカキショーゴさんには頭が上がりません。

その節は、というか毎度本当にありがとうございます!!!!


実はどちらも書いて頂いたのだーいぶ前なんですよね……。

本編再開に合わせて公開しようと思っていたのですが、詳しくは次で説明します(お

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょいと今さらになって誤字とか気になり始めましたので報告機能使わせていただきますね。
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