9th〜10th
9:娘よ、今までありがとう
どうか
無理に俺をあまり構わないでほしい
たとえ立ち上がることが出来なくても
まだまだ身体は元気なんだから
俺のことは気にせずに
好きなことに打ち込んでくれればいい
解ってるから
俺の介護で時間が潰れてたのは
俺にも解ってたから
だから
素直に言えなかったんだ
とてもありがたいのに
陰で泣いてるおまえを知ってるから
だからどうしても言いそびれるんだ
ありがとうと
不憫に思う涙も
悔し涙も
陰で全部見てきたから
俺まで悲しくなってくるんだ
全部知ってるから
だから
もう泣かないでほしいんだ
俺のせいなんかで
おまえが進もうとしてる道は
選ばれた者しか進めない道だから
だから
俺に構うことなんかないよ
その分は練習に回せばいい
そして元気を取り戻してほしい
その時俺は初めて言えるんだ
「ありがとう」と
風呂はちょっと辛いから
入れてもらわなきゃ駄目だけど
それ以外は大丈夫だから
この場を借りてもう一度言うよ
今まで本当にありがとう
後はどうか
自分のために時間を割いてほしい
(※学人は今事故により下半身不随になっています)
10:なぜ君はここにいる?
赤い海の中佇む君が
頭を抱え赤く粘ついた髪を揺らす
乱れ髪の隙間から飛び出した
ダイヤのような輝きが
赤い海の中に弾けて消える
赤い海を作り出した剣を片手に
笑ったような顔で泣いている君
俺も
今同じ顔をしているんだろうか
急にフィードバックする二人で笑いあった日々
敵将を前に剣を抜けない俺
なぜ君はここにいる?
君だけは信じてたのに
なぜ俺の前に立つ?
そんな血塗れの剣をかざして……
赤い飛沫を撒き散らしながら
向かってくる君の涙の中には
為す術も無く佇んでいる
俺の姿が映り込んでいた
赤い海を踏み締める足で
大津波を巻き起こしながら
運命に弄ばれるがままの俺達に
君が決着を付けに来る
なぜ君は叫んでる?
君だけは助けたかったのに
なぜ俺を斬りに来る?
君だけは……
生き延びてほしいのに
なぜ……
なぜ……
なぜ……
なぜ君が斃れてる?
頭の付いてない体で……
なぜ俺が斃してる?
もう全てどうでもいい
俺はただ
ずっと君と過ごして居たかっただけなのに……
それだけが望みだったのに……