屍の行方
アルフォース国。けして広くはないが平和な国だった。そう。"だった"のだ。この国の場所が悪かった。ここは東西南北を国で囲まれており各国のいざこざに巻き込まれることが屡々あった。そしてその火種はやがて大きな戦争となり宗教の違う国どうしで争いが頻繁した。そう四つの国でアルフォースを取り合ったのだ。アルフォースの領土があればいつでもどの国でも攻められる。各国は砦としてアルフォース国を欲しがった。そしてあの日アルフォースの王族は殺された。漆黒の魔女に。
ダークファンタジーといってもいいのでしょうか。ちょっとまだ書き出し中なので暇でしたら立ち寄って下さい。
アルフォース国。けして広くはないが平和な国だった。そう。"だった"のだ。この国の場所が悪かった。ここは東西南北を国で囲まれており各国のいざこざに巻き込まれることが屡々あった。そしてその火種はやがて大きな戦争となり宗教の違う国どうしで争いが頻繁した。そう四つの国でアルフォースを取り合ったのだ。アルフォースの領土があればいつでもどの国でも攻められる。各国は砦としてアルフォース国を欲しがった。そしてあの日アルフォースの王族は殺された。漆黒の魔女に。
少年は暗闇の中目が覚めた。ここは何処だろうか・・・・。自分の記憶が定かではない。
「ごごは・・・・どごだ・・・・?」
周りを見ても何も思い出せない。いつから自分は此処にいて何故此処にいるのか。全く分からなかった。
「っ!・・・・。」
頭が痛い。いや、頭だけではない。全身が何が可笑しい。まるで自分の体ではないように動かすことができない。
「うっ・・・・どう、な"っでる・・?」
体を動かそうとした時、ベチャリ。と嫌な音がした。そう言えば体が動かない他に何か異臭がする。なんだ・・この肉が腐ったような臭いは・・・・。
段々と暗闇に目が慣れてきた。そして俺は息を飲んだ。俺の目に映ったのは何かの塊。長くて白っぽいそれ。先には五本の何か。そこまで理解してから異臭の正体が自分のそれと理解した。
「う、うあ"あ"あ"ああああああああ!!!!!」
叫びと同時に吐き気が襲う。しかし自分のそれ以外にも色々見えてきた。様々な臓物がビンに入っている。
「な"んな"んだっ!!ごごは!!!」
俺はパニックになる。口も上手く動かせないためか変な声がでる。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!!
するとこの場に相応しくない声が聞こえた。
「あら。目が覚めたの?」
それは柔らかい少女の声だった。
「貴方そんな状態でも生きていられるなんて対したものだわ。」
声は少女のようなのに何故か幾年も過ごしたかのような渋みがある声音で不自然さが際立っていた。
しかし先程から言っていることが理解出来ない。そんな状態とはどの事か。あまり考えたくないが目の前のそれを見て理解した。
「あら?わかってないのかしら?貴方の体半分以上腐ってるのよ。」
薄々解ってはいたがやはりこの異臭は自分のものか。絶望しか感じない。しかし体が腐っているにも関わらず何故自分は生きているのか。
「知りたい?」
まるで心を読んでいるかのように囁く少女。
「貴方は殺されたのよ。私に。家族も全て。」
そう言って少女は微笑んだ。歪な顔で。そうして言ったのだ。
「全部殺せば終わったのに貴方だけ魔法を間違えたわ。いえ。間違えてはないけれど。でも貴方は生き残ったの。良かったわね。ああ、でもその腐った体じゃ生きてるっていっていいのかしら?」
くすくすと笑う少女。段々思い出してきた。自分が何者だったか。俺はアルフォースの王族だった。俺の国は他国に囲まれて戦争を余儀なくされた。そして現れたのだ。この黒い魔女が。あっという間に皆殺された。俺も殺されたはずだ。しかし今この憎い魔女が目の前にいる。怒りで体が腐っていることも忘れ動こうとする。ベチャベチャと嫌な音がするが気にしない。この魔女を殺してやれるなら何でも良かった。
「ごろじてや"る!!!」
そう言うが上手く喋れない。
「あら。顔の半分も腐ってたのね。」
魔女は笑いながら俺を覗き込む。危機感は全くないようだ。
思うように体が動かせないため俺はただベチャベチャと嫌な音をたてるだけだ。魔女は暫く俺を見つめ閃いたように言った。
「ねぇ、助けて欲しい?」
と。何をほざいているのかと怒りでどうにかなってしまいそうだった。しかし俺は思った。何がなんでもこの魔女を殺してやりたい。自分の手で。そのためなら何でもする。命乞いはしない。でも・・・・
「げいや"ぐだ・・・・」
俺は上手く喋れない口でそう持ちかけた。
「契約?貴方と?」
「ぞうだ・・・・い"のぢごいはじない・・・・」
少女は暫く考える素振りをする。そして笑った。
「いいわ。結んであげるその契約。」
そう言って魔女は何か唱え始める。俺の周りに魔方陣が淡く光り詠唱が始まる。
「汝、我のもと145条の不死の契約により冥府より屍の鎧の契約とせん。代償は輪廻転生・・・・」
魔女が契約として使う魔法。俺の体の肉がビチビチと音をたてて集まる。痛みに意識が飛んだ。
絶対に殺してやるから待ってやがれ!!!!
そう思い意識を手放す直前魔女は俺をみて悲しそうに呟いた。
「どうか私を殺して・・・・」
暫くして俺は元の気色悪い部屋で目が覚めた。
「うっ・・・・くそっあの糞魔女どこ行った・・・・」
改めて俺は今の状況と自分の体を確認する。体はどうやら動くし変な生き物にされた訳ではかった。あいつを殺すには人間のほうが都合がいい。しかし、本当に生き返ったのか?自分の体を触り確かめる。造形に変わりはないが何か違う。目の前の机に鏡がかけてあったため確認する。
「!!?」
明らかに顔の肉が抉れていて歯茎が見えていた。その部分以外は元の体だ。
「くそ・・・・完全に元の人間な訳ないか。」
そう呟き今後のことを考え、とりあえず部屋にあった布で抉れた部分を隠した。よく見ればこの部屋に置いてある物は臓物ばかりだが場所には見覚えがあった。自分の住んでいた城の地下室。ということは俺はまだアルフォースにいるのか。そう思い、すぐに城内の地図を思い出す。
すぐに城の裏庭に出た。いったい俺はどのくらい地下にいたのか。いや、それは後でいい。まずはあの糞魔女を探さなければ。そう思った俺は城のなかを歩く。もしかしたら此処にはもういないかもしれないが俺には分かった。奴はまだここにいる。時刻は夜だ。ふと父の書斎に明かりがついているのが見える。
奴と契約をしたことでなのか漠然と居場所がわかる。俺にとって好都合だ。探さなくて手間が省ける。持ってきた剣を片手に書斎の前までいく。そう簡単に殺れるわけはないが、今なら隙をついて殺せる。
「死ね!!!魔女!!!!」
勢いよく扉を破り背を向けていた魔女の背中を刺した。やった!と俺は一瞬勝利を確信した。しかし次の瞬間俺は部屋の外へ飛ばされていた。
「なっっっ!!!」
腹に鈍い衝撃が走った。今何が起きた?彼奴を背中から刺したはずだ。それも心臓を。
刺されたはずの魔女はゆっくりと俺をみて自分に刺さっている剣を抜く。その姿は外見は少女。髪は銀色、目は赤くとても綺麗な顔をしていた。
「もう。こんな時間に乙女を襲うなんて失礼しちゃうわ。」
何事もなかったように喋る姿に背筋が凍る。魔女から出た血はキラキラと輝き消える。
「っ化け物め!!」
「あら。助けてあげたのに化け物呼ばわりかしら。」
そう言って魔女は呆れた顔で俺を見る。
「助けてもらった覚えは、ない!お前など、すぐに殺してやる!!」
痛む背を無視しすぐに立ち上がりもう一度魔女に斬りかかる。
「はぁ。少し落ち着いたらどうかしら。私は・・」
「うるさい!!死ね!!」
今度こそやった、と思った。首を跳ねたとおもった。が刃が届かない。また魔女の血が舞うがそれは幻想的に輝きルビー色に輝き消えた。数本指を斬り落としたが全く微動だにしない。
「まだ、貴方じゃ殺せない。」
そう言って魔女は笑った。次の瞬間俺は気を失っていた・・・・・・。
次に目が覚めたのはベッドの上。
何も出来なかった。悔しさで拳を握りしめる。
その時部屋をノックする音がした。
「入るわね。」
許可もないのに勝手に魔女は部屋に入ってきた。
俺は黙って魔女を睨む。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫よ。何か食べる?」
「・・・・・・・・」
俺は答えない。何をするかもわからない相手から物などもらえるか。
「さて、色々聞きたいことがあるんじゃない?」
そう言いながら魔女は茶を飲み始めた。こいつは俺を馬鹿にしてるのか?
「馬鹿になんてしてないわ。」
ちっ心を読んでる・・・・。めんどくさいことになってきた。俺は適当に聞くことにした。
「何故生かした。」
「それは貴方が私の魔法を破ったからよ。」
「どういうことだ。」
「そのままの意味だけれど。」
「・・・・・・・・」
俺がこの魔女の魔法を破った?そんな記憶はない。しかもこいつの言っていることは矛盾している。実際に俺はこいつに刃を刺すことはできたが殺すことができなかった。なのに何故。
「貴方が今生きているということが証明よ。」
「?」
こいつは何が言いたい?
「私、この国に来た時王族諸々全員殺したはずなの。」
「!?」
それは間違いない。俺もこの目で見た。この国の者全てが殺されるのを。そして自分も。
「でも貴方は生きてる。何故かね。そして私は探してた。私の魔法が効かない者を。」
魔女は赤く光る瞳をじっと向ける。俺は今でも悲惨な国の最後を覚えている。皆体が腐り落ちて死んだ。地獄だった。そんなことをしたこの目の前のやつを簡単になんか信用しない。
「それがどうした。お前は大勢殺した!!もうこの国には誰もいない!!俺の愛した家族もエリーも!!」
「・・・・・・・・」
そうだ。けして許さない。大好きだった父も母も妹も婚約者さえ奪ったこいつが!!
何が探していただ!!皆死んでもいい人間なんて誰一人いなかった!!
「・・・・そうね。この国は平和だったわ。でも今は貴方と私だけ。」
こいつの言葉に怒りを覚えたが何かひっかかった。俺とこいつだけ?どういうことだ。この国は四方八方を国で囲まれているがため戦争が起きたはずだ。その戦でこの魔女はどこかの国に属していたのではないのか?
「私は国に属していないわ。」
魔女は否定した。
「じゃあ何故殺した!!!!」
「話しが進まないわ。さっきもいったと思うわ。探していたと。」
「っ・・・・・・そのためだけに殺したのかっ!!」
「ええ。」
なんて傲慢な魔女だ!!私利私欲のためだけに残虐するなど。俺は怒りとともに恐ろしくなった。
それだけの力がこいつにはあるのだ。
「それより貴方の名前は?」
魔女は当たり前のように死をなかったことにしている。思わず俺は顔がひきつった。
「名などっ!」
「貴方はどうしたいの?」
当然このとを聞かれ段々イライラしてきた。
「うるさい!!お前を殺す!!それだけだ!!」
「そのあとは?」
あとのことなどどうでもよかった。ただ目の前の魔女が憎い。俺の心は憎悪しかない。
「うるさいうるさいうるさい!!!お前の言葉など戯言だ!!」
近くにあったペーパーナイフを魔女の喉に突き付けた。やはり魔女からはルビー色の輝く血が流れ消える。
「今は貴方に私は殺せないわ。でも貴方なら私を殺すことができる可能性がある。だって契約したもの。」
「契約・・・・」
そうだ。俺は契約した。こいつを殺すためなら何でも良かった。
「その契約には条件が幾つかあるわ。一つ、貴方は私がいる限り死ねない。二つ、貴方は輪廻転生から外された。魂は二度と転生しないわ。三つ、貴方は生きながら死んでいる。謂わば屍ね。」
一気に情報を言われ混乱する。俺はもう人間ではないことは理解していたが。一瞬思考が停止しかけたその時魔女は俺を引き倒し馬乗りになる。
「っ!?」
軽い衝撃があり油断した己を呪った。
「勿論私も死ねない体なの。それはもう実験済みでしょう?」
「くっ!」
わかっていた。心臓を刺しても首を落とそうとしても死なないと。では俺のこの怒りはどうしたらいい!?
「そのままでいいわ。貴方は私を殺せるまで強くなってもらうわ。」
「!?」
何を言っているのか分からない。頭が、おかしいのか?
「失礼ね。ちゃんとまともよ。」
「ちっ!」
思わず舌打ちをする。しかし心を読まれるのはやりにくい。
「貴方はこれからここで私と過ごして貰うわ。」
「はぁ!?ふざけるな!!」
「ふざけてないわ。だって貴方は私を殺したいのでしょう?でも今の貴方赤子と変わらないくらい弱いわ。それでは困るの。だから毎日私を殺しに来なさい。」
やっぱりこいつ頭おかしい。
これからまだ続きますので亀更新ですが宜しくお願いします。