死神~Prologue of "DOLL"
すべての存在の死は、死を司る神・タナトゥスにより齎されるものである。
老衰、病死、事故死、他殺……。
死へと至る理由は様々だ。
一見理不尽に思える死もすべて、すべて神の御心に依るものである。
幽世は生者にとっての瘴気に満ち溢れている。
神が直接統治するゆえに、現世の穢れを祓わねばその神聖さに耐えることが出来ず、
自我に深刻な障害をきたすこととなる。
ゆえに死を迎える直前に死神"タナトゥス"は加護を与え魂を浄化する。
穢れからの救済を与えるために。
――だがここでひとつ諸君の胸のうちに疑問が生じることであろう。
"自らの意思で死を選んだ死者の魂は、いったいどこへ向かうのか?"
自殺による死を遂げた者は、死神"タナトゥス"の加護を受けぬまま死を迎えることになる。
加護を受けることのできるタイミングは、死を迎える直前ほんの一瞬のみ。
神からの寵愛を自ら拒んだ愚かな魂は天国へも地獄へも行くことが出来ず、
現世と幽世の狭間に留まり続けるしかない。
瘴気に直接あてられ自我を蝕まれながら、魂の終焉を待ち続けるのだ。
死ぬことはおろか転生すら許されず、永遠にも近い時のなかで囚われ続けるほかないのである。
そしてまた、寵愛を拒絶した魂の成れの果てがひとつ、
朽ちてゆく――