僕の目指したサンデルシー
また……逃した。それに引き換え、彼女はまた僕の先を行く。いつから差がついたのだろうか。出会いは3歳の時、まだ言葉も理解もよく分からない時だった。
そして7歳になった時にはその差は歴然だった。僕はもう追いつけないのだと知った。僕は彼女の才能に追い付けないのだ。どんなに音色を奏でても、どんなに楽譜を読んでも、僕の指先からは人を魅了するような音色は生まれてくることが無かった。
僕は彼女とは違う道を歩むことにした。小学、中学……高校。エスカレーター方式で進み、それでも彼女とは同じ学校にいた。そこからが本当に違う道。
大人になった今は、歩む道も見える道も全然違うモノ。彼女は多くの人を惹きつける奏者となった。僕はその彼女を助ける側だ。サンデルシーの使い方は人それぞれだ。
「僅かですが、ズレていますね。僕の方で調律をさせて頂きますね」
僕は奏者の、音を奏でる人たちを調律する者になった。才能の使い道は人の数以上にあるものだから。
お読みいただきありがとうございます。