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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第1章 私はわがままな人間にはなりたくないのである
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5月15日


あれから高野とはまもなく駅に着き、最寄り駅では反対方向だったのでそのまま分かれて帰った。クラスでは特に会話をするようなこともないので、たぶん次に話すのはまた来週の図書委員会の活動日だろう。


椎名の方はというと、全くいつも通りで、何か悩んでいる様子もない。まあ何かしら悩みがあるからといっていつも私は悩みがありますというような顔をしている人などそういないとは思うが。


綾小路も今日は椎名に話しかけている様子も見受けられなかった。やはりそこまで深刻な話でもないように思える。


一時間目と二時間目の間の休み時間になり、私の席にやって来る者がいた。


「よう!君島!今日も相変わらず無表情だな!」


このいきなり失礼極まりない発言をした男は工藤淳也という。同じクラスで新学期が始まった時、一つ後ろの席だった男だ。

誰にでも物怖じせず話しかけてくるタイプで、席が近かったため話をする仲になってしまった。

制服も着崩し、髪は長めで少しツンツンしている。某バスケ漫画の誰かを意識しているとか以前言っていたか。全体的にだらしない印象を受ける。


まあ辛辣に述べてしまいはしたが、どこか憎めないところもあり、嫌いになれないやつだ。


「いきなりなんなのだ。工藤も相変わらずアホ面だと思うが。」


「いやいや!誰が垂れ目だよ!失礼なやつだな!」


「・・・垂れ目なことを気にしていたのか。いいことを聞いたな。これからはそこをいじっていこう。」


実際工藤は垂れ目では無い。どちらかというとつり目だ。だがどういう訳が本人は垂れ目とつり目を勘違いしているらしく、私としても面白いから放っておいているのだが。それでもいい加減工藤にそれを教えてやる輩が現れないものかとも思うのだ。まあ私が言えた義理では無いのだが。


「うっさい!ってそんなことはどーでもいーんだよ!アホっ。」


工藤は無駄に高いテンションで絡んでくる。正直たまに、いや、かなり面倒くさい。


「全く。お前と話していると無駄に長くなるな。早く用件を言え。」


私は短いため息を一つつき、そろそろこっちも飽きてきたので本題を促す。


「あ?あー。そうそう!君島!」


「なんだ?」


「いや!君島大先生!」


「・・・中間テストのことか。」


「え!?なんでわかんの!?俺まだなんも言ってないけど!?お前はエスパーか!?というか親友か!?」


「来週テストだからノートを見せてほしいのか?」


「おまえ・・・ヤバいな・・・普通に引くわー。」


「そんなことを言っていると見せてやらんぞ。大体おまえは学生の本分を何だと思っているのだ。授業中起きていることの方が珍しいではないか。」


「いやー。面目ない。俺今部活のことで頭がいっぱいなんだわ。それに授業中は俺の睡眠時間だ。」


何を真面目な顔で不真面目なことを言っているのかとも思ったが、工藤は二年生にしてバスケ部のレギュラーで、三年生が引退したら、キャプテン候補なんだとか。


勉強はできないが求心力はありそうなのでやれそうだとは思う。

彼の言うようにそれなりに部活を頑張っているのだろう、だが。


「それとこれとは別問題だ。今回だけだ。期末の時は貸さないからな。とりあえずコピーを持ってきてやるから明日まで待て。」


「うー!恩に切るぜ!それでこそ親友だ!」


出会って一ヶ月ちょっとで親友になった覚えはなかったが、また長くなりそうなのでここはスルーしておこう。


「あー、それとさ。おまえって高野と付き合ってんのか?」


「ぶはっ!!!」


思わず吹き出してしまった。


「う、うわー。そんなあからさまな反応を見せてくれるとは。中々初やつだな。」


余りにも私が過剰に反応し過ぎたせいか、回りもこちらを気にし始めた。椎名や当人の高野もこっちを見ている。私は工藤の首根っこをひっ掴み、声を落として話した。



「ち、ちょっと待て。どうしてそうなる。別に私と高野はそういう関係ではないぞ。」


「いててっ、ちっ、痛いっつの!そうムキになるなよ。昨日バスケの練習が終わって体育館裏で水飲んでたら、ちょうど二人が歩いて帰るところが見えたからさ、そう思っただけだよ。」


なるほど。確かに帰りに校内の生徒はまだチラホラいたし、帰り際にも同じ学校の生徒はいた。誰か知り合いに見られていてもおかしくはないということか。しかしよりによってこのお調子者に見られるとは。


「なるほど。まあいい。とにかく私と高野はそういう関係ではない。一応言っておくがこの事は誰かにベラベラと言い回るのではないぞ?高野に迷惑がかかってしまう。」


「ばーか。さすがに俺もそんなことはしねーよ。でもおまえら仲良かったんだな。」


「いや。小、中、高と同じ学校で、今は同じ図書委員というだけだ。一緒に帰ったのも昨日がたまたまで、初めてだ。」


「ふーん。そっか。まあいいや。とにかくノートの件、頼むな?」


「あ、ああ。そうだな。了解した。」


そう言って、工藤は案外あっさりと席に戻っていった。


「・・・ふう。」


自然とため息がこぼれてしまった。ふと横を見ると、椎名と高野と順番に目が合った。

椎名は満面の笑みで手を振って、高野はペコリとこちらにお辞儀をしてきた。


なんだかとても気恥ずかしくなった。




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