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「好きだ!」
「好きです!」
花火の音があまりにも大きく、2人の声はそれによって見事にかき消されてしまったけれど。
奇しくも全く同じタイミングで振り向き合った2人の口の動きはほとんど同じだったため、互いの発した言葉が何だったのかなどということは、言い直すまでもないことだった。
「・・・。」
「・・・。」
花火の音が続いていく中で、2人は赤や青やオレンジ色に変わりゆくお互いの顔を見つめ合いながら、少しずつ距離を縮め、
キスをした。
2つの黒いシルエットの足元から、花火の光で産み出された山なりの影が、いくつもいくつも伸び広がっては消えていき・・・。
やがてそれは2つの楕円へと形を変えた。
「・・・夢みたい。」
「・・・。」
隼人は未だに夢見心地な美奈のほっぺたをきゅっとつねった。
「え?・・・いふぁい!?」
「夢を見ていられると困る。私としては一世一代の告白だったのだからな。」
「わ、私だってすごく勇気を振り絞ったよ!?」
「・・・ああ。すごく、伝わってきたのだ。これ以上ないくらいに。」
涙目になりながら抗議の視線を送っていた美奈だったが、隼人の優しい眼差しに見つめられて、再び頬を赤らめるのだった。
それから2人は、手を繋いで肩を寄せ合いながら、ようやくその存在に気がついたかのように、目の前に燦然と広がる光のアートを堪能するのだった。