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わたしはきょうもひとりだった。
いつものこうえんで、いつものきにもたれかかって、ただじかんがすぎるのをまっていた。
みんなたのしそうにあそんでいる。
ぶらんこや、すべりだいや、すなばでおやまをつくったり、おにごっこをしたり。
「・・・いいなあ。」
「なにがいいんだ?」
「え?」
ぼそりとつぶやいたひとりごとを、きかれるとはおもっていなくて、わたしはびっくりして、ないてしまいそうになる。
「なんだよ。なかなくたっていいだろ。ないてばっかりいるこは、おににおしおきされるんだぞ?」
「え?おしおき?おにに?おこられるの?」
「そうだ。おとうさんがゆってたからまちがいない。おにはな、つのとかきばとかあって、とにかくすんごいつよくてこわいんだ。こどもはいつもげんきにしてないと、よわいこどもからつれさっておしおきされたり、さらわれたりするらしい。」
とたんにわたしはこわくなって、なみだがでそうになる。
でもこのこのいうとおりならわたしはおににおしおきされてしまう。こわい。わたしがこんなんだから、きっとおにもどこかへつれていってしまうんだ。
なきたくなくても、なみだがあふれてきてしまいそうだった。
「だからなくなよ。だいじょうぶだ。おにがきたってぼくがたすけてやる。」
「え?」
そのこは、えがおでわたしのてをとった。
「おれはいつもげんきでつよいこだから、おになんかこわくないんだ。きてもぼくがげきたいしてやるから、あんしんしろ。」
なんだかそのこのてはあったかくて、ちからづよくて、わたしはげんきをもらえたきがした。
「わたしを・・・たすけてくれるの?」
「うん。まかしとけ!おまえはおんなのこだからな。おんなのこはよわいから、おとこのこがまもってやらなきゃな。これもおとうさんがゆってたからな。」
そのおとこのこはとくいげに、はなをこすりながら、わたしのてをひっぱってあるきだした。
「えっ・・・と、どこにいくの?」
「ん?せっかくだから、いっしょにあそぼうぜ。ぼく、きみしまはやと!」
「え・・・と、わたし・・・どんくさいから。」
「だから、ぼくがまもってやるっていってるだろ!おまえ、さっきあそびたそうにしてたろ。」
「・・・うん。・・・あそびたい。ひとりでいるの、つまらないもの。」
「じゃあぼくにまかせとけって!あとなんていうんだ?」
「え?なにが?」
「なまえだよ、な・ま・え。」
「あ・・・たかの。たかの・・・みな。」
「わかったっ!じゃあみなっ!すべりだいからすべろうぜ!おーい!みんな!ぼくたちにもすべらせてくれよー!」
「ま、まってよ!はやとくん!」
グイグイとわたしをひっぱっていってくれる、そのおとこのこのてを、わたしはちからいっぱいにぎりしめて、おくれないようについていった。




