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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第4章 告白などしてはいけないのである
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花火大会が始まる5分前になってしまった。私は途中君島くんとめぐみちゃんとはぐれてしまって、工藤くんと一緒だった。


はぐれたことに気づいて、2人に連絡しようとしたんだけど、工藤くんが、この人混みでは連絡し合うより合流場所に行って待っていた方が確実じゃないかと提案してきたので、それにしたがったのだけれど、一向に2人は姿を見せなかった。


「やっぱり連絡だけしとこうかな。」


「大丈夫だよ、アイツらも子供じゃねーんだし。それよりさ、もう時間来ちまうから見やすい場所にいないとな。」


そう言って工藤くんは私の手を取って歩きだした。


「あ、ちょっ・・・。」


私は少し転びそうになって、それでも何とかこらえてついていった。そのまま工藤くんは私の手を握ったままだった。


子供じゃない、か。

めぐみちゃんと君島くんは今2人っきりで、この後始まる花火大会を一緒に見ることになって、子供じゃない2人の気持ちが盛り上がってしまったら。

ましてや君島くんはきっとめぐみちゃんの事が好きだから。

この状況の中で、あの2人が今2人っきりでいることを考えただけで、私は胸がズキリとした。


「あのっ!」


私は意を決して工藤くんを引き止めた。


「私!やっぱり2人のこと探してくるね!」


そう言って階段の方へ戻ろうとした私の手を工藤くんはもう一度しっかりと掴み直した。


「え!?」


そのまま私は工藤くんの腕の中へと吸い寄せられていた。

私は一瞬何が起こったのか分からず、頭が真っ白になってしまう。


その直後、私の目の前の空に、花火が上がった。


「好きだ。」


花火が弾けると同時か、その後か、順番なんてどうでもいいことだけれど、そんなことを考えながら、少しずつ耳元で聴こえた言葉を、頭の中で咀嚼していく。


好き・・・?今好きって言ったの?私のことを?どうして?


「中間テストの時ぶつかって転んだ時あったろ?その時から気になってたんだ。」


私も、保育園の時から気になってたよ?


「初めて出かけた時は緊張してあんまりうまく話せなかったけど、やっぱり可愛いなって思った。」


初めてお出かけするまでに、何年も何年もかかってしまったけれど、やっぱり思ったとおり、優しかった。


「メールとかしても、毎回きちんと返事してくれて、律儀な娘だなってもっと好きになって、その辺から毎日学校で会うのが楽しみになって、いつも目で追ってて、勉強会の時とか、ずっと心臓バクバク言いっぱなしでよ。」


メールでも、電話でも、素っ気ない感じだけど、不器用な私とおんなじで、感情を表に出すのが苦手なだけなんだなって、その優しさに気づかされて、毎日いつも目で追ってて、学校で会えるのがすごく楽しみで。


「好きで好きでたまんないんだよ。」


私は君島くんのことが好きで好きでたまらない!いつも側にいたい!


「たか・・・。」


「いやっ!」


私は気がつくと、工藤くんを両手で突き飛ばしてしまっていた。


はっとなって謝ろうとしたけれど、なんだか涙が溢れてきそうになって・・・。そのまま走り出していた。


「高野っ!」


その声は少し遠くから聞こえて、工藤くんが追いかけてきてはいないのだと思うと、ほっとしている自分もいて、そうしたらもっともっと涙が溢れてきた。


私は溢れる涙を拭うこともせず、履き慣れていないサンダルで何度も転びそうになりながら、逃げるように階段を駆け下りた。

花火が始まったからだろうか、人の流れはなく、階段の一列だけが空いており、すんなりと下りることができた。


「はあっ、はあっ・・・。」


階段を下りきったら、急に足ががくがくしてきて、汗が大量に吹き出してきた。

腰を折り、息を整える。


花火の音も急に耳に飛び込んできて、まるで止まっていた時が動き出したみたいになった。


ふと顔を上げると、目の前に花火の光が広がった。


綺麗だな。君島くんと一緒に見たかったよ。

そんなことを考えていると、急に頭が冷静になってきて、この後工藤くんとどうするかということや、君島くんとめぐみちゃんはどこへ行ってしまったのだろうかとか、焦るような気持ちになった。


そして。


私は見てしまった。


目の前に広がる花火の下で、手を繋いで同じ景色を見ている、今最も会いたかった2人のことを。


私が最も見たくなかった形で。


ドンッ、パンッと、花火はまだ始まったばかりだ。

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