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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第4章 告白などしてはいけないのである
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明岩駅に着くと、駅前で工藤が待っていた。


「よう!・・・う・・・あ・・・高野・・・かわいい。」


「え・・・と、ありがとう・・・。工藤くんも似合ってるね。」


ギクシャクしまくりの工藤。因みに今日の工藤は黒の甚平を着ていた。なんだかチェックシャツにジーンズの私だけ浮いてしまった。


「あのー、工藤くん?わたしもいるんですけど?」


「え?あ、あー。そうだな!似合ってんじゃん!?」


ここまでわかりやすいとかえって気持ちいいものだな。


「いーよいーよ!じゃあ行きましょ!」


椎名はプイッと高野の手を取って行こうとする。私も後に続いて行くと、工藤が私の隣に来た。


「君島、今日は頼むぜ!打ち合わせ通り!」


さっと耳打ちしてさくさくと人波を進んでいくのだった。



花火大会は海岸で打ち上げられる。今いる場所は海岸からは2、3キロ内陸に位置する明岩神社なのだが、ここの神社は小高い丘の上に位置するようになっており、そこから更に100段以上もの石造りの階段を登った先にあるので、花火を見るのには絶景のスポットとなっている。

なので、毎年この時期は周辺で屋台の出店も多く配置され、お祭りのような賑わいをみせる。


花火大会自体は7時半からとなっており、皆で屋台で腹ごしらえなどしてから花火を見る予定となっている。


「うわー。すごい人ねー。」


皆で集まってからもうかれこれ30分程進んだが、普通に歩けたのは最初の10分程で、その後は人がごった返し始め、中々思うように前に進めない。いつの間にか、私たちの位置取りも、前に工藤と高野、後ろに椎名と私というふうになっていた。


「このままだと何か食べている時間も無さそうだな。」


このペースで進んでも、神社まで辿り着けるかどうかも怪しいものだ。


「えー。お腹減ったなー。何か食べたいなー。というか焼きそば食べたいなー。そこの屋台の焼きそば食べたいなー。」


椎名はやはり食い気なのだな。と心の中で苦笑しつつ、私はさっと焼きそばの屋台の方へ移動した。


「焼きそば1つください。」


「へい!400円ね!」


屋台のお兄さんは透明なパックに入れて置いてある焼きそばを1つ、私の方に渡してくれた。


「椎名、ほら、食べたらどうだ。」


私は浴衣で歩きづらそうにしている椎名に焼きそばを差し出した。


「え?いいの?」


「早く食べないと時間がなくなってしまうぞ。」


「あ、うん。なんだかやけに紳士ね。ありがと。あ、そうだ!美奈たちは!?」


そうして周りを見渡すと、2人はどこにも見当たらなかった。


「あー。はぐれてしまったようだな。だが目的地は分かっているのだ、焼きそばを食べてから追いかけよう。」


「あー・・・。うん。しょうがないか。これだけの人じゃ。」


「ここの道を逸れれば少し落ち着けそうだぞ。」


屋台の脇から奥に続くスペースがあり、椅子などがあるわけではないが、人は少なく、休めそうだった。


私たちはそこへ入っていき、木にもたれ掛かって休憩することにした。


黙って焼きそばを頬張る椎名。それを見ている私。


「・・・ちょっと。あんまり見られると食べにくいんですけど。」


それもそうだ。何を見ているのだろうか。私は。


「ああ。そうだな。特にやることもなかったのでな。つい。」


「・・・はー。私ってほんと色気ないね。見られてる姿が焼きそば食べてるとこって・・・。」


そう言いながら、すごい勢いで焼きそばを食べ続ける。


「いや。椎名はそこが良いところではないか。いつも元気で、明るくて、健康的で。なのでそんなことは気にするところではないと思うぞ。」


「う・・・君島くんさ。」


椎名の焼きそばを食べる手が止まる。


「ん?何か変なことを言ったか?椎名を褒めているつもりだったのだがな。」


「だーかーらっ!」


そう言って焼きそばの最後の一口を頬張り、側に置いてあったくずかごに入れ物を捨てる。


「そういうことは好きな子に言いなさいよ!なんだか、その・・・調子狂っちゃうじゃない!」


そのまますたすたと歩いていこうとする。


「あれ?めぐみじゃないか?こんなところで会うなんてね。」


その時、誰かが椎名に声をかけてきた。


「あ・・・綾小路くん。」


見てみれば他に男友達1人と女友達2人を連れた綾小路だった。他の3人を私は知らないので部活か何かの繋がりだろう。


「あとそこにいるのは君島か?おやおや、最近君たちは妙に仲良くしているみたいだね。めぐみ、僕の誘いは断るのに、君島とは行くのかい?なんだかひどくないかな?」


私をちらりと一瞥して椎名に向き直る。綾小路は以前高野が椎名をデートに誘おうとしていると言っていた。その後にきれいさっぱり断りを入れて、それ以来は何も言ってこなくなったと聞いていたが。


「別に、今日は他に工藤くんと美奈も一緒よ。デートって訳じゃないし、私が誰といようと、綾小路くんには関係ないじゃない。」


「ふーん。君島はいいのに僕はダメなのかい?さすがに傷つくなあ。勉強しかできない無口な男といるより、僕といた方がめぐみも楽しいと思うんだけど。めぐみの感性を疑ってしまうよ。」


「なっ!?」


「おい。綾小路。」


椎名が顔に怒りの色を滲ませたのを横目に私は椎名の前に立ち塞がった。


「なっ・・・なんだ。君島。」


「私のことを悪く言うのは構わない。実際お前の言うとおりだと思うしな。だが、自分が一緒にいたいと思う相手を悪く言うのは矛盾してはいないか?少なくとも一緒にいたいと思うなら、相手のことを思いやり、敬い、お互いいい関係を築けないというならば、それではおまえは一体何のために椎名と一緒にいたいというのだ?」


私は綾小路を真っ直ぐと見据えて伝えた。目は一時たりとも逸らさない。


「ちっ!何だよ、ごちゃごちゃと、屁理屈理屈かい?結局は君は椎名のことが好きでいい格好見せたいだけなんだろう?」


「・・・だったらなんだというのだ。好きな相手すら敬えないお前に言われたくはない。頼むから、私たちの前から去ってくれ、私のことが気に入らないなら一発や二発、殴ればいいだろう。」


「なんだと?」


いよいよ綾小路の声にも怒気がはらみはじめた。私も殴られるくらいはしょうがないと覚悟を決めた時、


「おい!もうやめとこうぜ、綾小路!別にこんなやつ、ほっとけよ!気分が削がれちまう。それにほんとに殴ったりなんかしてみろ!後で色々面倒くさいぞ!」


「そうだよ!綾小路くん。なんでそんなムキになってるの!?怖いよ!早く行こう!?」


回りにいた連れの者たちが、慌てて止めに入ってくれた。

結局綾小路1人がムキになって熱くなってしまっていただけなので、自体はことのほかすんなりと終息してくれた。


「ふう・・・行ったか。」


綾小路は納得はいかないといった風だったが、しぶしぶとこの場を去っていき、ようやくこの場も落ち着きを取り戻した。

しばらく私も事が終わってから、慣れない問答をしたためかドキドキと動悸が早まり、その場に佇んでいた。


「君島くん。」


椎名がおずおずと声をかけてくる。


「ん?」


「ごめん・・・。ありがと。」


珍しく俯き加減でしおらしい椎名がすぐ隣にいた。


「あ、いや。私も余計なことをしたかもしれないな。2学期が思いやられるな。」


「・・・ほんとだよ。・・・余計なことばっかりして。私、応援出来なくなるじゃない。」


「ん?」


何か椎名が小声で呟いていたような気がしたが。


「じゃ、行こっか。」


そのまま進んでいく。


時間はもう7時を回っていた。

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