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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第4章 告白などしてはいけないのである
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7月18日


期末テストが終わってからは、うちの高校は短縮授業になり、毎日昼過ぎには下校していた。

今日は水曜日なので図書室の当番もなく、予定がどちらもない時は私は高野と下校するのが常になっていた。


椎名と工藤はというと、それぞれの部が夏の大会で早々と予選敗退してしまい、いよいよ自分たちの世代となるようだ。三年生が抜けた後の大会自体はまだ先なので、忙しいという訳ではないが、工藤は新キャプテンにもなり、部活に勤しんでいた。


そんな水曜日の下校中。


「花火大会楽しみだね。」


「こういう経験は私は初めてなので、楽しみな反面緊張もしている。」


今週末の土曜日、21日は小久保駅から2つ隣の明岩駅にて毎年恒例の花火大会が催される。さらに、明岩神社では出店なども出て、そこからの花火を楽しみながらのお祭りという事で、けっこうな賑わいになっているという。


私は毎年行く相手もいないので、無縁の行事だったが、今年はお祭り好きの椎名が言い出し、毎度の4人で行くことが決まったのだった。


「私も両親とは行ったことはあるけど、お友達と行くのは初めてだから、変な感じだな。緊張も・・・するといえばするけど、皆と行くと安心するかも。」


「なんだかいつの間にかすっかりお馴染みの4人という感じになってしまったな。4月頃では考えられなかった。人の縁というのは不思議なものだ。」


思えば今まであまり深い友達付き合いというものをしてこなかった私にはあり得ない程の濃い3ヶ月だった。


「そうだね。私もだよ。すごく毎日が楽しいの!君島くん・・・えっと、2学期もよろしくね?」


高野はこういう人に対してお礼を言ったり、挨拶をきちんとしたり、新たまって自身の好意や気持ちを相手にしっかりと伝えようとしてくれる。そういう所は高野の美徳だ。


「何だか今日を最後にしばらく会わないみたいな会話になっているぞ?しみじみするのはまだ早いのではないか?」


「あ、そうだね。なんだか私たち、いつもこういうしみじみしたこと言ってない?」


「そんな気もするな。2人揃って若年寄りだな。まだ16だというのに。」


何だかどうでもいい会話をしてしまっているが、こういう時間も悪くはないものだな。


「ふふっ。まだきっと人生の半分も生きてないのにね。あ、それよりさ、君島くん。あの・・・。」


「ん?どうした?」


「最近何か欲しいものとかないかな?」


唐突な質問ではある。


「ん?いきなりだな。特に考えたこともないが。」


「そう?」


「まあ1つ挙げるとするならば・・・。」


「するならば?」


「安定した老後生活とか?」


「・・・!もうっ!若年寄り引きずりすぎです!」


「ふふっ。すまない。これといって思いつかなかったのでな。物欲もこれといって無いしな。」


もうすぐ1学期が終わる。


そうしたら夏休みが始まって、夏が終わる。


夏が終わる頃にもこうやって笑いあえているのだろうか。


皆でこれからも同じ時間を共有していけるのだろうか。


幸福な時間が幸福であればあるほど、その時間を失ってしまう時のことが脳裏によぎってしまう。


私は空を見上げた。


ギラギラと照りつける太陽が、夏が本格的に始まったことを告げていた。


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