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次は工藤の番だった。
「では工藤。苦手な所はどこなのだ?」
「あー。俺は正直全部苦手だからよ。一番点数取りやすそうな地理で頼むぜ!」
「まあ暗記ものだからな。ではテストに出そうな所だけ重点的にやるか。」
地理の教科書を開いて基本的な所を順番にやぅていこうとした矢先のことだった。
「しかし、おまえってさあ。椎名のこと好きなのか?」
「ぶはっっ!!」
なぜこいつはいつも不意討ちでぶっこんでくるのか。
「なんだよ。やっぱ図星なのか。」
「・・・なぜそう思ったのだ。」
まあ気づかれても仕方ない発言をしたかもしれないが。
「え?だってさっき思いっきりプールで抱き合ってたじゃん?」
「ぶはっっ!!!!」
「さっきからきったねーなー。」
「なっ・・・見ていたのか!?」
「あ、あー。いや、高野が慌てて気が動転してたから大丈夫だって、なんて言っててさ。そうこうしてるうちに水がはねる音が聞こえたから上から確認したんだよ。そしたら・・・まあ2人がそんな感じだったもんでさ。」
「・・・。」
「え?君島?大丈夫か?おーい。君島さーん。」
「・・・あ、ああ。大丈夫だ。気にするな。」
「えー?相変わらず連れないやつだな。とにかく椎名のことは好きってことなんだよな?」
工藤は煮え切らないような。探るような。そんな表情で見てくる。
「はー。今はもうそんなことはいいだろう。今日は皆で勉強をするために集まったのだ。いい加減にしろ。」
「ちっ。わぁーったよ。でもさ。俺は正直お前は高野のことが好きなんだと思ってたからさ。」
「は?何を言う。」
勉強に持っていこうとしているはずなのに、なぜか聞き返してしまった。
「だってさ。お前、高野としゃべるとき楽しそうじゃん。俺はさ、正直付き合いも浅いから高野ほどお前と仲良くねーかもしんねーけどよ。なんかさ。君島はこんな顔もするんだな。とか見てて思っちゃうわけよ。あ、言っとくけどそんなにお前を見てる訳じゃねーからな!?高野を見てるんだからな!?なんか俺言ってること気持ちわりーか!?」
工藤が言ってることが気持ち悪いのは置いといて。
狐につままれるような思いだった。
何を言うのか。
今日の工藤は私の心を掻き乱したいのか。
とにかく、私に高野に告白することを話す工藤の気持ちが理解できた。
私がきっかけで繋がったということに対する気遣いという面と、私を一種のライバルという視点で見ていたからなのだろう。
「・・・それに高野もさ・・・。」
「ん?高野もなんだ?」
「いやっ!この話はお前には関係ないからいんだよっ!」
工藤は急に慌てふためいて話をはぐらかした。高野のことを見ている工藤だからこそまあ思うこともあるのだろう。
「はあ・・・。まあいい。だいぶ時間を費やしてしまった。とにかく早く勉強をするぞ。」
マンツーマンの勉強会は誰ともはかどりそうにない・・・。