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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第3章 揺れる想いなどあってはならないのである
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私と椎名がウォータースライダーを滑り落ちた後、結局高野と工藤は階段をかけ降りてきて私たちと合流した。高野がどうしても滑るのが怖くて拒否して、私たち2人のことも心配だったのですぐに階段で戻ろうということになったのだとか。


もちろん合流した頃には私たちは抱き合ってなどおらず、プールから上がって休憩していた。椎名はそのあとも至って普通で、私も変に意識するのもやめにしようと思い直した。椎名の行動と振る舞いに救われたのかもしれない。高野が少し静かだとは感じたが、まだ1日は長いのだ。後でなんとか謝ろう。


そのあとは軽く食事をして、ようやく高野の家に戻ってきた。


「さて。では勉強会に突入だな。やるぞ。みんな。」


なんだかここに来るまでがすごく長かったように思うが、気を取り直して頑張ろう。


「あの・・・私・・・ちょっと昼寝希望したいなーなんて?」


椎名の発言にはさすがに辟易するな・・・。


「駄目だ。休憩するにしてもまず一時間ほど勉強してからにするべきだ。何のために集まったと思っている。」


「じゃ、じゃあ!わかった!先に苦手分野克服会にしましょう!?1人30分ずつ隣の部屋で君島くんとマンツーマンで教えてもらうのでどう!?」


相変わらずあの手この手で対応してくるのだな。まあ私としてもその方が好都合かもしれない。


「わかったわかった!では高野。隣の部屋を使わせてもらうぞ。一緒に来てくれ。」


「え!?私?私からなの!?」


高野はびくんと肩を震わせた。少し動揺の色も見える。


「そうだな。隣は高野の部屋だし、そもそも後の2人はお昼寝希望だろうからな。」


さすがに女の子の部屋に本人の許可なくずかずかと入っていく勇気はない。椎名と同様工藤も完全にお昼寝モードだ。必然的にそういう流れになる。


「う・・・うん。わかった。じゃあこのまま移動しようか。数学なんだけど。いいかな?」


「ああ。構わないぞ。」


「おー行ってこい行ってこい!うっかり一時間でもいーぞ。」


こうして私と高野は隣の高野の部屋でまず勉強することになった。



さて。隣の部屋に移動してきたのだが。先程いた部屋は客間のようで、畳の部屋でテーブルとタンスが1つずつあるだけというような殺風景な部屋だったのだが、何ともこちらはいかにも女の子らしい部屋だった。


ベッドやタンスの上にいくつかぬいぐるみが置いてあり、カーテンは色こそ薄緑色であるものの、花びらが散りばめられた模様をしている。

何よりさっきの部屋と違い、いい匂いがした。

そう言えば、以前図書室で勉強を教えた時も、高野と近づき過ぎてしまい、この香りがしたのを思い出した。

私はこの匂いが好きだった。何とも落ち着くのだ。


「君島くん・・・あの・・・あんまりジロジロ見られると・・・恥ずかしいかな。」


高野が顔を真っ赤にしながら俯いてしまっていた。


「す・・・すまない。つい・・・な。」


「別に・・・いいけど・・・君島く・・・あ、何でもない。」


高野が急にはっとした顔になり、今度は落ち込んだようになってしまった。私は今がいいと思った。


「高野。あの、さっきのことなのだが。」


「え?」


高野と目が合った。心なしか寂しそうな表情に見えるのは気のせいなのだろうか。


「プールで2人で休憩していた時のことだ。なんだが言い方がきつくなってしまってすまなかった。」


私は正座をして頭を下げた。


「え!?いや、そんな!だって私が変なこと言ったから!君島くんに嫌な思いをさせてしまったと思って、私の方こそごめんなさい!」


高野も正座をして頭を下げてきた。


「高野。それは違うぞ。」


「え?」


高野は顔を上げた。


「高野が私が楽しいと思ってくれるなら自分も楽しいと言ってくれたことは、すごく嬉しい。それほど私を気遣ってくれているのかと、感動を覚える程だ。」


私は姿勢を正して、高野の顔をまっすぐ見据えて続ける。


「だが、高野はいつも人に気を遣いすぎるようだ。私は高野のことを友人として、大切に思っている。そんな相手に気を遣わせすぎたりはしたくないし、私も高野が楽しいと思うことを、そうしたいと思うことを、気兼ねなく、実行していってほしいのだ。私は高野には周りを思い煩うことなく正直に行動してほしい。そこに対して私に構わないでくれ。そこに対して私は高野の足枷には絶対になりたくないのだ。」


私は高野と、そして自分にも言い聞かせるように、高野に言葉を紡いだのだった。


「・・・。」


この時の高野の表情は、今まで見てきたどの表情とも違っていた。何かを噛みしめるような、深く考え込むような、そしてそこに笑顔はなく、しばらく沈黙した後、高野は私の目を見つめた。


「わかりました。君島くん。ありがとう。」


まるで心臓を射抜かれたような気持ちを味わいながら、私はこれでいいのだ、と思った。


「うむ。では高野。勉強会開始だ。」

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