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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第3章 揺れる想いなどあってはならないのである
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先に言っておくが、私は反対したのだ。


皆で勉強会の日に高野の家にお泊まりさせてもらうという話になった直後。椎名がこんなことを言った。


「私!皆でプール行きたい!」


当然テスト前に勉強会をするのだから、何時から何時くらいまで勉強しようとかそういう会話を想像していたのだが、椎名は何かとあれこれしたいことが多いようだ。


「おおっ!いいねーっ!」


元々勉強に対して前向きでない工藤が、この提案を断るはずもなく・・・。


「いや、待て待て。あくまでも趣旨は勉強会なのだぞ。どうしてそうなる。」


「だってせっかくお泊まりするなら時間もあるし、私、そんな朝から晩までずぅーっと勉強し続ける自信ない!息も詰まっちゃいそうだし、軽く運動してから勉強した方が集中できると思うの!部活も休みだし、体が鈍っちゃうわよ。」


正論のような正論ではないような反論を言う椎名。


「わ・・・私はちょっと・・・どうしようかな。あんまりそういうとこ行かないから、水着とか持ってないし。」


これで2対2に分かれたので、さすがにこの話はなかったことにしようとした矢先、


「美奈!ちょっと!こっち来て!ごにょごにょ・・・。」


何やら椎名が高野に耳打ちをし始めた。


「え?何?・・・え!?・・・そんな・・・こと!・・・。・・・。」


高野の表情が驚き→動揺→恥辱→無表情→決意と変わっていく。相変わらず表情豊かだな。


「・・・わかった!行くよ!私・・・行くよ!」


だから何故2回言うのだろうと思ったが、どうやらまんまと形勢は逆転されてしまったようだ。・・・仕方ない。


「はあ・・・わかった。ただし、長くても2時間としよう。朝には集まって、昼には戻って勉強開始だ。泊まりなら夜も勉強は出来るのでそれなりの時間は取れるだろう。」



そうして朝高野の家に一度集まったあと、勉強道具などを置いて、私達は駅からバスで20分程行った所にある市民プールへとやって来たのだった。



着替えを終えて、男性陣は先に入り口近くで女性陣を待っていた。


「あー!まだかなー!マジで俺たち夏をエンジョイしてるって感じだよなー!君島!恩に切るぜ!」


いつにも増してテンションの高い工藤。まあ無理もない。これから同い年の女の子の水着姿が拝めるのだから。


「いや、私は反対したので恩に切るなら言い出しっぺの椎名に言うべきではないのか?」


「いや!ちげーよ!君島!そういうことじゃなくてさ!今までのことも含めてなんだよ!ここまでおまえが繋げてくれた縁じゃねーか!・・・なんか今まで言うタイミング逃しちまってたけどさ、俺はおまえにほんと感謝してんだわ。」


工藤が柄にもなく謝辞を述べてくる。頭を書きながら目を逸らしているところを見るに、照れているのだろう。


「おまえのおかげて高野と繋がりができてさ、最近は普通にメールしたりして、確かに最初は意外に可愛いなーなんてだけだったんだけどさ。」


私は急に改まってきた工藤の話を黙ったまま聞いていた。


「話してみると、すげーいい子だよな。ちゃんと人の話に真面目に向き合ってくれるし、まあ冗談も真に受けちゃって驚かれたりすることもあるけどさ、ま、そこがいーっつーか?」


工藤は高野のことを、彼女に対する思いを私に粛々と語る。最後には工藤は私の方をまっすぐ向いて、そして、静かにこう、告げた。


「俺、この夏が終わるまでには高野に告白しようと思う。」


予期していたような、それでいて不意打ちな工藤の言葉に、私は気の利いたことも言えず・・・。


「・・・そうか。」


ただ、一言、返す。


「アイツなら、もし駄目でも、俺の気持ちを真剣に受け止めてくれると思うから。好きになったことを後悔するとか絶対ないと思うし。うまくいったらいったで、すげー大事にしたいって思えるんだよな。」


私は正直、工藤の話が頭に入ってこなかった。工藤が高野のことをそこまで真剣に考えていたことがショックだったのだろうか。それとも工藤の考え方を否定したくてもしきれない自分に戸惑っているのだろうか。


本当の所は自分でもはっきりとはわからない。


だが、工藤のこの想いをわがままという一言で片付けるには、余りにも稚拙なように思えたのだ。いつもお茶らけた工藤だからこそ、この絞り出す想いは本物で、真実味があって。


「君島、いいよな?」


最後に工藤は私に対して確認を取るように問いかけてきた。


私は工藤に対して黙って頷くことしかできなかった。


ただただ、こくりと、首を縦に振ることしか。

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