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6月25日
球技大会も終わり、そこから2週間が過ぎた月曜日の放課後。
私は図書委員の仕事を終えて、今日も高野と一緒に帰っていた。
結局椎名のことで悩み相談を受けてからというもの、何度か月曜日は終わってから一緒に帰ることが続き、今さら方向が同じなのに別々に帰るというのも、なんだかお互いよそよそしすぎるような気がして、暗黙のうちにこうなったというわけだ。
工藤はもちろん知っていたが、「くそーっ!幼なじみ萌えとか羨ましすぎんだよっ!」と訳のわからない一言だけ私に放ち、それ以外は何も言わなかった。
「それでね、昨日工藤くんから私にメールがあって。」
それまで2人で他愛もない会話をしながら歩いていたが、高野は、昨日あった工藤からのメールの話を切り出してきた。
私と工藤、高野と椎名の4人で遊びに行って以来、工藤はちょくちょく高野にメールをしたりしているらしい。この時間に工藤からこんなメールがあったということや、工藤くんて変な人だね、などの話を高野から聞いていた。
「この前言ってた期末テストのお勉強会やろうって言うことなんだけど・・・。」
高野が私の様子を探り探りするようにゆっくりと話していく。
「その話は私より君島くん次第なとこもあるから君島くんに言うべきじゃない?って言ったら。」
私は黙ったまま前を向いて高野の話を聞いていた。
「じゃあ、俺と椎名はもうオッケーだから後頼むなっ!て言われちゃって・・・。」
・・・。
「・・・だめ・・・かな?」
高野はちょっとうつむき加減になった。このくらいにしておこう。
「高野。」
私は急に立ち止まって高野の方を振り向く。
「えっ!?は、はいっ!」
高野は急な私の行動にびくっとなって直立不動になる。
「全くもって構わないぞ。」
「あっ、あのっ!な、なんか私ったら!君島くんのっ!その!ごめっ・・・。・・・え?。」
「いや、だから、全くもって構わないと言ったのだ。」
しばらくぽかーんと口を開けた高野。そのまま私は再び歩き始める。
「・・・え?」
後ろを振り返ると高野は体の向きだけこっちを向いて表情はそのままだった。
「ふふっ。」
私はそんな高野を見て思わず吹き出してしまった。
「・・・っ!ちょっと!君島くん!」
高野が真っ赤な顔をして追いかけてくる。
なんだか最近笑ってしまうことが増えた気がする。
以前に比べて1人の時間が減ったせいだろうか。
しかし、私は自分が楽しいと感じたり、心が安らぐ時間を味わえば味わうほど心のどこかでそれを否定してしまうことも常なのだ。不安な気持ちが溢れ出てきてしまう、と言った方が正しいかもしれない。
どちらにせよ、今という時間は1秒毎に過ぎていってしまうのだが。
空はまだ明るかったが、遠くの空に雨雲が広がっていた。