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私が部活後すぐに家に帰って着替えたあと小久保駅前に行くと、もう皆揃っていた。
私以外は皆制服だったのでなんだか私だけ私服で浮いてしまった。
「おまたせっ!てか皆なんで制服なの!?」
今日は6月頭とはいえ暑かったので、ショートパンツにスニーカー。上はTシャツの上にパーカーを肩からかけた格好だ。
「私たち、今日図書室でさっきまで勉強してたからだよ。」
「俺は君島からそういう連絡もらったからよ。シャワー浴びたけどよ。そのまま制服で来たよ。ていうか椎名。ナマ足さいこーだなっ!」
工藤くんがこっちをジロジロ見てきた。
「あははっ!ストレートだねー!年頃の男の子って感じ!」
「めぐみちゃんごめん。私が気を聞かせてそういうこともメールすればよかったね。」
美奈が申し訳なさそうに言ってきた。というか。
「そんなこと、別に気にしないよ!というよりさ、君島くんと美奈は一緒に勉強してたの?」
「あ、うん。ちょっと教わったりしてたんだ。」
「へー。仲いいんだね!」
なんて言ってみた。
「てゆーかお前ら抜け駆けかよ!ひでーな!」
工藤くんもぶーぶー言っている。
「まあそう言うな。たまたまだ。」
「うん。私が頼んだから君島くんは悪くないんだ。」
「ま、まあ高野がそう言うならしょーがねーか。」
やけに素直に工藤くんは引き下がるなーと思いつつ、私はいーことを思いついてしまった。
「えー。美奈だけ教わってズルいなー!じゃあさ。今度の期末試験前は4人で勉強会してよ!君島くん!」
「お。いーねー!それならまたノート見せてもらえるしな!」
工藤くんも便乗してくれた。
「お前はそればっかりだな。」
君島くんが呆れ顔でつぶやく。
「よしっじゃあ決まりね!期末テストの前に君島先生に教わるということで!」
半ば強引に決めちゃおうとする。
「おいおい。私に拒否権はなしなのか?」
やっぱりそう来るよねー。
「えー。美奈はいいのにダメなんですかー!?」
むくれっ面で答える。
「・・・わかったのだ。1日だけだぞ。」
君島くんは観念したとばかりに頷いてくれた。よしっ、やったー!
「いいの?君島くん?」
「ああ。構わないぞ。前も言ったが教えることによってこちらも勉強にはなるからな。」
美奈が心配そうにしたけど君島くんも案外乗り気そうだ。
「んじゃま、立ち話もなんだし軽く飯でも食いにいこーぜ!」
工藤くんが待ちきれないと言わんばかりに急かしてきた。
「そうね!私もお腹空いちゃった!」
そこからようやく皆で移動を開始した。
小久保駅は西口と東口があって、西口には学校があり、比較的周りも住宅街だ。
東口はというと、ビルが4棟程連なったショッピングモールがあって、私たちはまずそこのフードコートで軽く食事をすることになった。よしっ!食べるぞっ!
皆で席を取ったところで工藤くんが君島くんを連れてトイレに行った。男の子はなんでトイレに一緒に行きたがるんだろ。不思議。
「美奈。2人のお勉強会はどうだったの?」
男子2人がいない間に聞いちゃおう。
「え?ど、どうって聞かれても・・・普通だよ?」
「普通って?」
というか顔は赤くなってて何かしら普通じゃないことがあったっぽいな。
「いやっ、ちょっと勉強を教えてもらって、その後は別々に勉強してただけなんだからっ!」
全くわかりやすいんだから、と思いつつ、あんまりいつもからかうのはやめようと思った。
「まあいっか。ね、先に頼んじゃおうよ。」
「あ、うん。そうだね。じゃあ私荷物見ながら席取ってるから、めぐみちゃん先に行ってきていいよ?」
「あ、そう?わかった!行ってくるね!」
そう行って私は席をたった。
ファーストフードのお店でハンバーガーのセットと更に単品でもう1つハンバーガーを買ってきた私は席に戻ってきた。
男連中はもう戻って来ていて、今から食べ物を買いに行くところだ。
「あっ!椎名だけ先にずりーなっ!てかハンバーガー2個とかけっこう食うな!?」
「育ち盛りなんだからしょうがないでしょっ!早く買ってきなよ!」
全く。工藤くんてホントデリカシーがないんだから!でもこういう時は控え目に食べるべき?もう時すでに遅しなんだけど。
「てか俺も見てたらそれ食いたくなってきた!買ってこよっ!」
と言ってさっさと行ってしまった。
「じゃあ私も行ってこようかな。君島くんも行くよね?」
美奈も行こうとして君島くんに声をかける。
「ああ。そうだな。」
「じゃあ行こっか。」
「あ、ああ・・・そうだな。」
と言って一緒に行ってしまった。仲いーなーあの2人!羨ましい!
でも、なんだか今君島くんの返事、歯切れが悪かった気もするけど、気のせいだよね。てか食べよっ。お腹空いた!
それから5分程して、皆戻ってきた。工藤くんはハンバーガー。美奈はざるうどんで君島くんはざるそばと小天丼のセットだ。私はハンバーガーの2個目も残り半分となった。
「あ。天丼いーなー。」
「む。やらんぞ。」
君島くんの天丼を物欲しそうに見ると彼は私からすすっと天丼を遠ざけた。
「けち。」
「いや、というか椎名は食べすぎだ。そんなことでは太るのではないか。」
「むー。別に部活で毎日運動してるから大丈夫だもん。なによー。美奈には優しいくせにー。」
そう言うと、君島くんはちょっと焦ったようになった。
「な、何を言うのだ。しかも本人の前で。」
あ、ちょっと美奈も赤くなってる。
「・・・わかった。では少しだけだぞ。」
そう言って天丼を差し出してくる。えっ!?ちょっと意外かも。
「え!?いいの?じゃあいただきます!」
そう言ってぱくっと天丼を頬張った。せっかくだからこの食べかけのえびも私が頂いちゃおうとそれも一緒に。
「あっ。めぐみちゃん・・・。」
美奈がちょっと驚いたような残念なような顔でこっちを見ていた。
・・・あ。間接キスか。
「君島くんありがとー!あ、わたし、飲み物買ってくるねー!」
そそくさと財布を持って席をたつ。
いやー。迂闊だったのかなー。私ってほんとそういうの気にしないからなー。美奈なら気にするよね。
その後食事を済ませて映画館の方に移動する。
ポップコーンと飲み物を買ったらみんなにびっくりされちゃったから、映画館と言えばポップコーンでしょ!?食べなかったら負けたことになるじゃない!と言ったらもはや白い目で見られた。
いーもんね!
席順だけど、なんか工藤くんが美奈を連れて先に行ってしまって、君島くんはまたトイレに行っていて、私と君島くんが後から座る形になってしまい、結局奥から美奈→工藤くん→わたし→君島くんという変な席になってしまった。
まあ映画を見ている間は画面に集中するので席順なんか気にしなくていーかって思ったんだけど、映画が始まってからも工藤くんは度々美奈に話しかけて、映画の解説みたいなことをしたりしていて、正直ちょっとうるさかった。
さすがに周りの迷惑もあるので途中で控えさせたけど、工藤くんてやっぱりそーなのかなーいう疑いは強くなった。
ちょっと困ったなと思ったけど、せっかくなので大部分は映画を楽しんだ。




