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私のわがままな自己主張(プロット)  作者: とみQ
第2章 私はこんな関係にはなりたくないのである
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5月28日


週が明けて、月曜日になった。私にとってはとても特別で、楽しみにしている1日。この後、放課後に、密かに想いを寄せている君島くんとの図書室での業務があるから。


私は君島くんが好き。小学生の頃から、あることがきっかけで、気になるようになって、その後も中学、高校と同じ学校になって、きっとチャンスなんていくらでもあっただろうに、自分がほんの少しの勇気が持てないせいで気がつけば高校2年生になってしまった。


幸い今まで君島くんが誰かと付き合ったり、誰かが君島くんのことを好きだという話は聞いたことがないので、自分が何もしなくても、彼の回りの環境が大きく変わってしまうことはなく、それはそれで助かるけれど、流石にこのままだといつか後悔してしまいそうで、変に焦ってしまっている自分もいた。


とにかく少しでも彼に近づきたくて、高校生になって、同じ図書委員になった。

だけれど一年生の頃は図書室の仕事もほとんどが先輩と一緒で君島くんとの接点も思うようには作れなかった。

でも今年は小学生以来で同じクラスになれて、毎週月曜日が君島くんと二人きりの委員会の日ができて、彼との接点は格段に増えた。

少しずつだけれど、彼と近づく勇気も持ててきた。


今日も少しだけ勇気を出してみようと思う。


放課後。私はホームルームが終わってすぐ、席を立ち、君島くんの所へ向かった。


「あの。君島くん。」


「ああ。高野。どうしたのだ?」


「今日この後図書室行くよね?一緒に行かない?」


いつもは別々に同じ教室から図書室まで行ってそこで合流していたけれど、今日は思いきって誘ってみた。


「・・・ああ。わかった。ちょっとトイレにだけ行ってきてもいいだろうか?」


あ、そう言えば以前そんなことを言ってたんだっけ。


「あ、ごめんねっ!じ、じゃあやっぱり先に行ってるねっ!」


私ったら間が悪いんだから!そう言って先に行こうとした。


「あ、高野!ちょっと待ってくれ。」


そう言ってぱしっと右手を掴まれた。


「ひゃわっ!?」


いきなりのことでなんだか変な声が出てしまった。恥ずかしい・・・。


「あ。すまない。」


そう言ってすぐに手は離された。


「だ、大丈夫だよ。・・・何かな?」


内心すごくドキドキしっぱなしだったけれど、目線だけを君島くんの方に向けて答える。


「あー。今日なんだが。・・・終わってからまた一緒に帰れないだろうか?」


・・・え!?君島くんから言ってもらえるなんて!?

あ、もしかして以前相談したことの話だろうか?

とにかく変に期待しすぎちゃだめだよね?


「えっ・・・と。うん。大丈夫・・・です。」


わーっ!なんか敬語になってしまった!落ち着いてー!


「そ、そうか。じゃあまた後でな。私もすぐ行く。」


「う、うん。じゃあ行くね。」


顔が真っ赤になってないか心配で走って行ってしまった。



月曜日はやっぱり図書室のカウンターは忙しくて、あっという間に時間になった。


私と君島くんは職員室に鍵を返しに行くと、そのまま並んで下駄箱まで歩いた。


靴を履き替えると、君島くんはもう履き替えていたみたいで、入り口のところで待ってくれていた。


「お待たせしました。」


「あ、ああ。じゃあ行こうか。」


「う、うん。」


前回は私が相談したいっていうことだったからほとんどその話をしながら帰ったけれど、今回はただ一緒に帰ってるだけだから、すごく照れくさい。でも君島くんから誘ってきたのだから、何か話したいことがあったのかな?


「君島くん。」


「ん?」


「なんか話したいことでもあった?」


なんだかいつもより下向きがちな気がする君島くんに、思いきって私の方から聞いてみた。


「その・・・だな。駄目なら断ってくれてかまわないのだが・・・。」


断る?何かお願い事っていうこと?


「うん。」


「今度近いうちにどこかへ出かけないかと思ってな。」


「え!?お出かけ?・・・。」


え!?それってどういうこと?つまりデートってことなの!?


「あ、いや!駄目ならいいのだ。そういうことになるとは思っていたからな!」


目を泳がせながら早口で話す君島くんは、明らかにいつもと違ってテンパっていた。何これ?すごく嬉しい!


「・・・はい。行きます・・・。」


私が君島くんの頼みを断ったりするわけないじゃない。


「そっ、そうだよな!変なことを言ってすまなかったな!忘れてくれ!・・・え?今なんと言ったか?高野?」


「えと・・・。行くよ?お出かけ。いつがいいかな。今度の土日かな?」


君島くんはぽかんと口を空けて固まっていた。私もきっと顔が赤いので回りから見たらきっとおかしな二人だと思う。


「い・・・いいのか?高野に気を遣わせるだけだから、断ってくれていいのだぞ?」


「え?そんなことないよ?君島くんてすごく喋りやすいし、なんだか断ってほしいみたいだよ?」


「あ、いやそう言うわけでは。そ、そうか。わかった。それではあとは椎名が何と言うかだな!」


急にめぐみちゃんの名前が出てきて何を言ってるのかと思った。


「え?めぐみちゃんも行くの?」


「あ?今言わなかったか?私と高野と椎名と工藤の四人で出かける話なのだが。」


「え!?」


え!?そんなこと言ってなかったよ!?君島くんテンパりすぎだよ!工藤くん!?あ、先週トイレの前でぶつかっちゃった人だよね!?君島くんよく話してるよね?めぐみちゃんは私が仲良しで。

ということは友達同士でお出かけしようってこと?

なんだか私デートに行きますって返事したことになるよね!?


「あっ!さっきそう言ってたよね!そうだったそうだった!あっ!この話は工藤くんやめぐみちゃんも知ってるの?」


私は恥ずかしくてとっさに最初からそういう話だったことにした。君島くん明らかにテンパってるし、気づかないよね!?


「工藤は知っているが椎名はこれからになるな。出来れば高野から聞いてみてほしいのだが。」


そっか。じゃあこの話は工藤くんと二人で相談して始まったかとなのかな。でもせっかく君島くんとお出かけできるチャンスでもあるし、工藤くんもこの前の感じだと悪い人じゃなさそうだったよね。私とめぐみちゃん次第なのかな。


私はせっかくのお話を受けることにした。


「君島くん。じゃあめぐみちゃんには私から聞いてみるね?」


「なっ!?本当にいいのか?」


自分から誘っておいてどうしてそんな意外な顔をするのかよくわからなかったけれど、私はもう一つこの機会にと思っていることがあった。


「うん。構わないよ。今日連絡してみるね?君島くん。連絡先聞いてもいいかな?出来れば今日連絡してしまいたいし。」


「携帯か?」


「うん。ダメ・・・かな?」


「いや、私は構わないぞ。しかしそんなに急がなくても大丈夫だが?」


「なんだかこういうことは早く連絡しておいた方がいい気がするし。予定とか合わなくてずるずるいっちゃいそうだし。」


「そうか。まああの二人は部活もあるしな。了解した。」


そうして私と君島くんは断られるかとも思ったけれど、携帯の番号を交換することができた。


うわー。色々わたわたしちゃったけど、なんだか最近すごく順調に仲良くなっていけてる気がする。

正直最近は胸が高鳴りっぱなしだ。私は幸せで胸がいっぱいだった。

そうこうしているうちに、間もなく魚ヶ崎駅に到着し、君島くんとはそこで別れた。



なんだか最近今までの自分では考えられないくらい変わってる気がする。


君島くんにめぐみちゃんのことで相談にのってもらって、勇気をもらって、それがきっかけで一歩が踏み出せるようになったのかな。

めぐみちゃんとも仲良くなれて、君島くんとも接点が増えた。


本当に私は君島くんが力になってるんだなあと感じていた。

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