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第8話 可能性

「アーリンから事情は聞いている。


別に、お前たちの情報を疑っているわけではないぞ?


事が事だけに、直接状況を聞かせて欲しくて来てもらったんだ。


気を悪くしないでくれ」


コンガスは、獰猛ともいえる顔立ちに似合わず、笑顔でそう言った。



「ご事情はお察しします。ギルド長としては確認せざるをえない案件でしょう」


アマンの丁寧な物腰に、コンガスの鋭い視線が向けられる。


「理解してくれて助かる。


さっそくだが、話を聞かせてもらえるか?」



「俺とアマンは冒険者ランクFだったんだ。


だから、第1階層でランクアップのための討伐課題に挑んでいた。


2人で迷宮を進んでいると、アマンが巨大な戦闘音がするというので現場に向かったわけだ」


サロスの言葉を継いで、アマンが説明する。



「現場に到着すると、エイミーが1人でコカトリスと戦っていました。


周りにはエイミーのパーティーメンバーが5人、既に倒されており、


このままでは危ないと判断したので、我々も加勢したというわけです」



サロスとアマンの端的な説明に、コンガスはうなづく。


「エイミー。そうするとお前が一番事情を知っているようだが、話を聞かせてくれるか?」


コンガスの問いかけに、エイミーは首を横に振る。



アマンが慌てて、コンガスに伝える。


「すみません。コカトリスとの戦闘以来、エイミーは一言も口を利いていません。


よほどショックだったのでしょう。しゃべりたくても、しゃべれないのかもしれません。


ただ、問いには反応してくれます」



「そうか、それは悪かった。


辛い話だろうが、少し質問をさせてくれ」


冒険者としての心情を察したのか、コンガスの目線が少し優しくなった。



「コカトリスが、どの方向から来たのか確認できたか?」


エイミーは首を横に振る。


「誰もコカトリスの接近に気づかなかったのか?」


エイミーが頷いた。



「どういうことだ?第1階層とはいえ、迷宮で魔物の接近どころか来た方向もわからないなんてことあるか?」


サロスが疑問の声を挟む。



しばし、部屋に沈黙が訪れる。


アマンは、眉を寄せて考えていた。


この不可思議な状況をどう分析するべきか…


父だったら、この状況も解決してみせるのではないか…



そんな思いを抱きながら、アマンは数少ない情報を元に様々な可能性を思い描く。


あらゆるパターンがアマンの脳裏で浮かんではそれを否定し、浮かんでは否定する。


さらに深い集中に入ったアマンに、突然1つのひらめきが降りる。



アマンは逡巡の後、つぶやく。


「…転移魔法」


アマンの声に、サロスとコンガスが目を向ける。


「故意か偶然かは、わかりません。しかし、転移魔法で移動したとしたら?


エイミー。コカトリスは、何もなかった空間から突然現れたのではないですか?」


その問いに、エイミーが頷く。



「となると、これは人為的に起こされたものかもしれないな」


サロスが眉をひそめながら、つぶやく。


コンガスも同感なのだろう。サロスのつぶやきに頷く。



「その可能性を前提として、迷宮内の探索を高ランクの冒険者に依頼することにする。


転移魔法の痕跡が何か残っているかもしれないからな。


だが、まだ可能性の段階だ。このことは他言無用で頼む」


コンガスの言葉に、3人は頷いた。




ギルド長の部屋から開放された3人は、冒険者ギルドの依頼ボードの前にいた。


「ようやくまともな依頼を受けられそうですね。


依頼内容を見て回りながら、アマンがそう声をかける。


「そうだな。こういう内容なら課題が3件であっても気が楽だな」



冒険者ランクがEになる頃、通常の冒険者でもレベルが最低でも10以上はあり属性も現れている。


ここから、ようやく一人前の冒険者として認められるのだ。



「まずは、これでどうだ?」


サロスが手に取ったのは、イボス近くの町からの依頼であった。


最近、町の近くに盗賊が拠点を作り、街道を通る商隊を襲っているので討伐してほしいというものだ。





イボス近郊では、迷宮の恩恵により特殊な商品を特産物としている。


冒険者からもたらされる薬草や魔物の素材をイボスで手に入れ、魔法薬・武器・防具・装飾品などに加工しているのだ。


もちろん、これらの商品をイボスでも売ってはいるが、イボスで直に商売をしている相手には敵わない。



そこで考えたのが、顧客の差別化である。


イボスの商人たちは、冒険者を主な顧客としている。


これに対して、近郊の町の商人は大陸にある他所の土地を顧客としたのだ。


商隊を組み、商品を大陸全土へと売りに渡るのである。



しかし、貴重な商品もしくはそれを売って得た多額の金を運ぶ商隊は、盗賊たちの格好の獲物でもあった。


そこで近郊の商人たちは、冒険者を護衛として雇う依頼を出す。


それでも対処できないような盗賊団が発生した場合は、盗賊団討伐の依頼を出すのであった。



盗賊団討伐の依頼は、護衛の冒険者数人では防げない規模であるがゆえ、難易度が高いものである。


しかし、冒険者もそれが分かっているので、複数のパーティーを組んで依頼を受けるのが普通である。


そのため、多くの冒険者を集めやすいように設定を冒険者ランクE以上としているのであった。





「私は構いません。エイミーは、どうですか?」


アマンの問いにエイミーが頷く。


「よし、決まりだ」


そう言うと、サロスは依頼書をもってカウンターへ向かうのであった。

次回の更新は11/12を予定しています。

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