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第1話 冒険者登録

「こんちには。お忙しいところ、申し訳ありません。


私の名前はアマンと言います。冒険者の登録に来ました」



イボスの町にある冒険者ギルドの窓口に2人の若者が訪れていた。


一見すると、冒険者に憧れた若者が最初の一歩を踏み出す場面のようにも見えるが…



窓口で対応に当たった受付嬢アーリンは、この2人に大きな違和感を感じていた。


悪い印象ではない。寧ろアーリンは好印象を抱いている。



アマンと名乗ったのは、黒髪に少し尖った耳に特徴がある美少年である。


耳の特徴から、もしかしたら妖精族の血が入っているかもしれない…


そんなことをアーリンは心の中で呟いた。



「俺の名前はサロス。俺も登録に来た」


アマンと一緒に訪れた青年も声をかける。


燦燦と輝く陽光にも劣らない輝く金髪に、黒く日焼けし鍛え上げられた肉体をもった獣人族。


こちらも負けずと美少年である。



では、なにが違和感を感じるかというと、冒険者になろうというには2人とも品が良すぎるのだ。


しかし、冒険者になる者たちの事情はそれぞれある。


本人が話さない以上、そこに触れるのはタブーであった。



「では、お2人とも冒険者のご登録ということですね。


では、まず初めに受付とギルドカードの交付を行います。


ギルドカードが出来上がるまで、2階にある会議室で初心者講習を受けていただきます。


よろしいでしょうか?」




シルフ領…かつて風の国と呼ばれていたこの地方には、ある古代魔法王国の遺跡があった。


他の古代遺跡とは異質な遺跡…それは炎の精霊王である不死鳥フェニックスを封印するための神殿であった。



古代魔法王国では、炎の精霊王でもある不死鳥フェニックスの力を使い、オリハルコン等の通常の火では加工できない金属を扱っていた。


古代魔法王国が滅んだ後も、精霊王の神殿は放置されたままであったため、精霊王の力がかつて風の国と呼ばれたエルフの森を侵食していた。



炎の精霊との親和性に欠けるエルフには精霊王に力を貸すこともできず、封印を解くことができずにいた。


エルフの女王であったアウローラは、流浪の賢者アルケニーと大陸の賢者ハルファスに助力を乞うた。



神殿には、不死鳥フェニックスの周りに4本の柱が立てられていた。


その4本の柱それぞれに術式が刻み込まれた巨大な魔石が埋め込まれていた。


この4つの魔石同士が作用し合い、四角錘ピラミッド型の結界が張っていたのだ。



ハルファスとアルケニーが魔力を過度に注ぎ込むことにより、魔石の1つを暴走させ破壊することに成功した。


これにより不死鳥フェニックスの封印を解くことができたのだが…



しばらく経つと、残り3つの魔石から流れ出る魔力によって、魔物が生み出されるようになっていった。


そこでハルファスは、神殿の地下に迷宮を建造し、魔石と魔物を封じることを試みる。



迷宮の最下層に魔石を分散して設置し、最下層の入り口に大陸の三賢者と多くの魔法士による強力な結界を敷いた。


ただし、この結界は強力な魔物を押さえ込むため、ある程度以下の魔物は通過できてしまう。


そこで迷宮を5層に分け、上の階層に行くにつれ徐々に結界の強さを弱めていき、迷宮の入り口からは魔物が一切出れないように設計された。



迷宮建築は大量の人員を投入し、1年半もかけて行われた。


そのため、建築のための野営地は町と化しており、商人たちが店を構えるなどしていた。



迷宮の完成により作業員たちがいなくなったが、それでも商人たちを中心に町に残る者が多数いた。


残った者たち、特に商人たちには、そのうち魔物討伐の拠点として、この町を使うだろうという計算があった。


その商人たちの読み通り、現在では迷宮都市イボスと呼ばれ、町は大きく発展していたのであった。




初心者講習も終わり、ギルドカードの交付を受けるアマンとサロス。


間違いがないかと、それぞれのギルドカードに目を落としたアーリンは、その美貌に似つかわしくもない声を上げる。


「ぶぇっ!?」



会話に夢中になっていたアマンとサロスだったが、変な音がしたため、アーリンの方を見つめる。


アーリンはプロ意識を総動員し、その視線に対して引き攣った笑顔で応える。



「で…では、お間違いないか、ご確認ください…よく見てください?間違いがありませんか?ありますよね?」


引き攣った笑みで、畳み掛けるように話しかけてくるアーリンを不思議そうに見つめる2人だったが、言葉に従いギルドカードを確認する。



「おお、『聖剣士』か。やっぱり『侍』は無理だったかぁ。


『聖剣士』っていうことは、目指すは『聖騎士』だな。お前はどうだった、アマン」


特に感慨もなく、隣の青年に声をかけるサロス。



「そうですねぇ、残念ですが『聖騎士』を目指されるのが妥当かと。私は2つ属性があるようですよ。


『魔術師』と『暗殺者』でした。まあ、これは予想通りですね」


アマンの言葉に、2人で笑いながらうなづく。



そんな2人に、アーリンが声を上げる。


「お…お2人とも…状況を理解されてますか!?」


「ああ、特に問題はないが?」


サロスの返答に、笑顔が崩壊するアーリン。



「問題大有りですよ!!!!


その歳で?冒険者ランクGで?なんでいきなり属性持ってるんすか!?


しかもいきなり上位職って、なんなんすか!?


それでもって、そのレベルの高さはなんなんすかーーーー!!!」


もはや言葉遣いも崩壊したアーリン。



相対する2人は、ただただアーリンの様子に驚いていた。


「アマン。お前、レベルいくつだった?」


「私は57です。サロスは?」


「くそー!俺は55だ」



そんな会話を聞いていたアーリンが、さらに突っ込む。


「いや、くそー!とか言ってる場合じゃないすから!?


いいですか?冒険者ランクはGから始まりますよ?初心者と呼ばれる人はランクFとGの人たちですよ?


あなたたち、ランクGの初心者ですよね?」


きょとんとした顔でうなづく2人。



「初心者卒業間際、ランクE直前の冒険者でも、レベル10あるかないかっすよ?


熟練と呼ばれるランクCやDの人だって、最高でもいいとこレベル40っすよ?


それを…レベル50オーバーとか…


上級冒険者であるランクBの中堅どころと同じ戦闘力じゃないっすか!!」



「まあ…そう言われてもなあ?」


「ええ、そういう結果ですから…」


早く帰りたいオーラ全開の2人。



「…しかも上位職なんて、冒険者がいくらたくさんいるっていっても数人っすよ…」


力なく呟くアーリン。


2人がそっと帰ろうとすると、飛び掛るように窓口から出てくる。


「握手してください!!!」


アーリンの奇天烈な行動に固まるアマンとサロス。



冒険者たちの憧れであり、高嶺の花である受付嬢の乱心ぶりに、ギルドに併設されている酒場がざわつき始めた。


その様子に気づいた2人は、逃げるようにギルドを去るのであった。

次回の更新は10/23を予定しています

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