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51.新たなる力で

「よっと」


幻影の扉を抜けると、そこは見慣れた何もない部屋であった。


「ここに繋がっていたのか」


また暗闇の道に飛ばされてしまったらどうしようかなんて思ってもいたが、どうやらその心配はなかったようだ。


僕は一つ胸をなでおろし、あたりを見回す。


都合よくサリアやティズがいるわけがないが、ある程度回復をしたとはいえ、敵に囲まれれば苦戦を強いられてしまうだろう。


できれば迷宮を無駄にうろつくことなくサリアたちと合流したいのだが……この広い迷宮の中で、目印もない状態でどうやって仲間を探せばよいだろうか。


「せめて、何か仲間がいる場所がある程度分かれば……」


瞬間、迷宮内に爆音が響き渡る。


「絶対あそこだ……」


一体全体何が起こっているのかはわからないが、あんな爆発音を迷宮第一階層で響かせるような人間はシオン以外考えられない。


「人様の迷惑になってなければいいけど」


そう僕は言葉を漏らしてみるが、きっと口元は緩んでいる。


スロウリーオールスターズ……。数々の伝説と現在を作り上げてきた英雄達。


みんなの憧れで強さの象徴のような彼らだが、今はもう不思議と遠い存在には感じない。


サリアやシオン……そしてティズたちがいれば、僕達もいつかきっと――それも遠くない未来に――スロウリーオールスターズをも越えるパーティーになれる。


そんな確信が僕の中には芽生えつつある。


「本当に頼もしい仲間達だ」


僕は愛しい仲間の元へと歩き出す。 


今日ここであったことを胸にしまっておくことにした僕だったが、それをごまかすための言い訳と、新しい力を披露したときのみんなの驚く顔を想像しながら。


                     ◇

「ウイルウウウウウウゥ!!」


爆発音の近くに行くと、そこにはいつもより光り輝きながら大粒の涙を流すティズと


魔力欠乏により床にうつぶせに倒れているシオンと、現在進行形でアンデッドコボルトの群れと交戦しいるサリアがいた。


どうやら僕のいない間中、自家製モンスターハウスの罠が作動し続けていたらしい。


「馬鹿馬鹿馬鹿! どこほっつき歩いてたのよ馬鹿ウイル! 心配したんだから! もうあえないんじゃないかって思ったら涙止まらなくて死んじゃうかと思ったんだから」


「現在進行形で私は死にかけてるよー」


大声で敵を引き寄せ続けるティズに、うつ伏せで動けなくなった状態で親指を立てる。


ティズよ、一階層の魔物全部引き寄せたんじゃあるまいな。


僕の確信が一瞬揺らいだ瞬間である。


「ごめんよ心配かけて、もう大丈夫だから心配……」


「あ、アンタ!? こんなに怪我して!  うぅ……こんなにけがしてえええええええぇ、やっぱりピンチだったんじゃないいいいぃ!」


涙腺もろくなりすぎだろティズ!? 


「大丈夫だって! 大丈夫だから!?」


「マスター! 申し訳ありませんがティズを何とかしてください!」


アンデッドコボルトを処理しながら、サリアは僕のほうに振り返ってそう叫ぶ。


その額には汗と疲労の色が見て取れ、僕は心の中でサリアとシオンに謝罪の言葉を送る。


この騒動、サリアとシオンが原因とは言えここまで窮地に立たされるほどでもなかったはずだ。

「ティズ! ティズ」


「ええええぇ……え?」


ティズを黙らせる最後の手段。


「心配かけてごめんね」


泣いているティズをそっと引き寄せて、僕は人差し指でティズの頭を優しく撫でる。


「!!」


何かが爆発したような音が響き、ティズは全身を真っ赤にした後。


「ふえ! はらららら!?????」

 

意味不明な呪文を唱えたまま眼を回してフラフラと落ちていく。


ティズは頭を撫でられるとこうしてすぐに眠ってしまう可愛らしい特徴があるのだ。


僕だけが知っているティズの弱点でもあり、どうしてもうるさいのが止まらないときはこうして強制的に黙らせている。


「おー……さっすがウイル君……」


シオンは顔だけをこちらに向けてそんな感心するような言葉を述べるが。


「ボオオオオオオオン!」


まだ危機が去ったわけではない。


目前にはアンデッドコボルトの大群が押し寄せており、後ろのほうを見てみると順番待ちをするようにアンデッドコボルトやコボルト、スライム、オークの長蛇の列ができている。


サリア……シオン……ごめんね、ティズの所為で。

反省も成長もしない我がパートナーに僕は少しばかり落胆をして――あれだけ心配してくれたのは嬉しいけど――仕方がないので新しい力のお披露目と同時に心配かけたお詫びとして魔物の殲滅を図る。


サリアが一本道で戦いをしてくれて助かった。


これなら一気に殲滅ができる。


「お疲れ様サリア……こっからは僕に任せて……」


僕はそういうと、近くにあった壁を一直線に崩壊させてストックをためる。

大体六ブロックあれば足りるだろう。


「え? マスター……何を」


急に壁を壊し始めた僕に疑問を抱いたのか、サリアはキョトンとした表情で僕のほうを見るが。


「一旦下がってサリア……僕に任せて」


僕はそういって、サリアを下がらせる。 サリアはまだ不思議そうな顔をしていたが、それでも僕を信じてバックステップで僕の後ろへと後退してくれる。


……頼もしい所を見てもらおうじゃないか。


「メイズイーター!! メイク!」


前方六ブロック分の前方の道に、壁を出現させて敵をいしのなかへと消失させる。

一直線の道に大量にアンデッドコボルトは押し寄せて来ていたために、逃げることも回避することもなく、一体も余すことなくいしのなかだろう。


「んなっ!」


「うっそ!?」


驚愕の声を背後で響かせる二人の声に僕は高揚感を覚えながらも、できるだけ平静を装って壁を破壊する。


「リメイク」


壊した壁が元に戻り、迷宮の石の中に消えた魔物たちの装備だけがからからと音を立てて

道に転がる。


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