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マンデースレイヤーvsシオン&リリム

「ホワッツ!!? 今度はなんだ!? 爆撃か!?」


背後で巨大なキノコの様な雲を上げながら炎上をする交易路を振り返りながら、アヴドゥルは驚愕の声を漏らす。


「ご安心を! 安心安全クリハバタイ商店製の爆弾を投擲しただけですから! まだ爆発するので! お耳をやられない様に気をつけてくださいね!」


「投げる前にいいやがレ!? ってかなんつーもん俺のタクシーに乗せてんだヨ!? 危険物持ち込み禁止ダって看板に書いてあんだろうガ!!」


「?? でも、クリハバタイ商店製ですよ?」


「話が通じねエ!!?」


「そんなことより! ハンドル操作はお願いしますアヴドゥルさん!! まだ、終わってませんから!!」


そう叫ぶと同時に、爆炎の中から黒いモヤが這い出す様に姿を現す。


「【自主規制】!!? あんだけの爆発でなんでピンピンしてんだよあいつハ!?」


「それだけ強敵と言うことです!! ですが、足止めはできてます!!」


僅かに速度が落ちた怪物目掛け、リリムはさらにパイナップル爆弾を投擲する。


【ぎやあああああああああ!!?】


悲鳴と共に、黒いモヤは炎の中でのたうち、やがて炎の勢いが治まると体を翻して何事もなかったかの様にこちらにまた向かってくる。


「っ、ダメージは入ってるみたいだけどすぐに回復してる。だったら!!」


リリムは今度はパイナップル爆弾を一気に三つ取り出すと、ピンを抜いて一気に怪物へと投擲する。


【!!!!!】


凝縮された、メルトウェイブ二十一発分の火力が、黒いモヤを覆い尽くし、爆風によりアヴドゥルのタクシーは1メートルほど宙に浮く。


「おわわわわわわわわーーー!!!?」


悲鳴を上げながらも、アヴドゥルは手綱を手放すことなく握り続け、そのためか、宙に放り投げられた馬たちも、パニックを起こすことなく、人を運ぶと言う使命をまっとうするため、地面に着地をした後も変わらず走り続ける。


「流石にこれだけの火力なら……うそでしょ!?」


しかし、それだけの火力を用いても、月曜日への恨みは焼き尽くすことはできなかった。


【オノレ月曜日!!!いたいけな少女に、労働はここまでさせるのか、これほどの兵器を生み出してしまうのか!!!!? やはり労働は全ての悪の始まり!!! 許せん!!許せんぞ労働!! 許せんぞ月曜日!!!】

 

訳のわからないことを叫びながら、黒いモヤはボロボロに崩れた体を再生させながら、タクシーに向かい猛進をする。


「っ! だったら! 今度は四つで……あれ?」


バックの中に突っ込んだ手が空を切る。


どうやら先ほどの爆発で、全てのパイナップル爆弾を使い果たしてしまった様であり、リリムは額から汗が垂れる。


「やば、弾切れ!?」


慌てて他に何か役に立つものはないかリリムはカバンの中を探すも、そうそう破壊力のある武器など入ってるわけもなく。


【死ね!! 労働者よ!!】


「っ!!!!」


襲いかかる黒いモヤに、リリムは思わず目を瞑って衝撃に備えるが。


「お待たせー!」


リリムにモヤの爪が食い込む刹那。


杖の先端が黒いモヤを貫くと。


「纏い稲妻!!!」


杖から放出された赤い稲妻が、リリムから黒いモヤを引き剥がす。


「シオンさん!! 良かった、間に合った!!?」


「うんうんー! リリムっち時間を作ってくれてありがとー!! こっからは私のターン! 渾身の大魔導炎武、見せてあげる!!」


赤い髪を揺らしながら、シオンは黒いモヤへと杖を構えると。


無詠唱にて黒いモヤの周りに無数の稲妻を召喚する。


その数は優に100を超え。


シオンの合図と共に、一斉に黒いモヤへと降り注ぐ。


【火炎舞踏会、稲妻の調!!】


【ぐああああああああああああああ!!】


打ち据えられる稲妻は、次々と生み出されては黒いモヤを貫き。


完全に黒いモヤの足が止まる。


「やった!!? これならリルガルムまで逃げられます!」


リルガルムにはロバート王の結界があり、魔物は入ってこれない。


リリムは安堵した様にそう呟くが。


「いいや、ここで仕留めるよ! 多分こいつ、リルガルムの結界は通用しない!!」


直感と魔術師としての知識、そして呪い好きと言う個性が、この黒いモヤは根本的に魔物とは違うことを気づかせる。


そして、その直感に従い、シオンは最大の火力を持って黒いモヤを迎撃することを決める。


『それは空に輝く日輪の現し身。悪魔の王よ契約により我に捧げよ、全てを想像し、全てを壊す始まりの業火よ、今ここに現れ我が敵を焼き尽くせ!!!』


詠唱破棄ではない、詠唱を伴う文字通り全霊の一撃。


悪魔との契約により、擬似的に太陽を敵に落とすと言う。


世界最硬を誇る冒険者ダイアモンドイエティですら焼き払ったそれは始まりにして最大の炎。


『サンライズ!!!!』


【っ太陽の模倣だとおお!!!? ぬおおおおおおおおお!!!】


絶叫と共に、黒いモヤは生み出された太陽に飲み込まれ、シオンが誕生ケーキの蝋燭の火を消す様に、杖に息を吹きかけると、燃え盛る太陽は飲み込んだ黒いモヤと一緒に消滅する。


「いえい! 大勝利―!」


高らかなるシオンの勝利宣言に意を唱えるものはなく、リリムとアヴドゥルは戦いが終わったことを悟る。


太陽が落ちた交易路は、ぽっかりと巨大なクレーターが出来上がっており、リリムは匂いで黒いモヤの消滅を確認し、アヴドゥルにもう安全であると静かに伝えると、馬車は休憩を取るかの様にゆっくりと停車をした。


「はぁはぁはぁ、なんだったんだヨ、あれは一体」


「わかりません。労働者がなんたらとは言ってましたが」


「あんなに執拗に追いかけられるほど悪いことした覚えはないよねー、私が魔族だからかな?」


「いや、あれ魔族よりやばい奴でしたからそれはないでしょう。どちらかと言うと、私の方を狙ってた気がしますし」


「それこそ訳わかんないよー。リリムっちの命を狙う理由なんてそれこそ」


「お、お、お、おいおい!!? お前ラ、どうやらそんなこと言ってる場合じゃなさそうだゾ!?」


シオンの言葉を遮る様にアヴドゥルはリルガルムを指差し、リリムとシオンはその先を見て。


「「なんじゃありゃ!!?」」


そう言葉を漏らす。


だが、そう叫ぶのも無理はない。


なぜなら視線の先、王都リルガルムの王城の隣に並び立つ様に。


黒色の巨人が立っていたからである。



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