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悪魔との契約

「っぷは! し、シオンさん!!」


勝負がつき、リリムにかけられた沈黙の魔法が解けると、リリムは驚いたように目を丸くしながらシオンに駆け寄る。


「おー、リリムっち! どうどう? 私の華麗な謎解き対決―!! ふふふー、私実は頭脳戦もいけるできる新妻なのです!」


自慢げにVサインを出して喜ぶシオンに、リリムは嬉しそうに尻尾を振りながらシオンの手を取る。


「すごいですシオンさん! まさかこんな高度な心理戦が出来るなんて! てっきり爆発する以外何もできない人だとおもってたのに、頭も良かったなんて意外です!」


「あははー、あれー? 全然褒められてる気がしないし何だか顔が怖いよーリリムっち……リリムっち、もしかして怒ってる?」


「全然? 話を聞かずに突っ走ったことなんて全然気にしてないですよー?」


「ごめんなさいもうしません許してください!!」


ギリギリと手を握る力を強めるリリムに、シオンは全力で謝罪をする。


『なぜ!? 何故俺の名前が分かった!!』


そんな二人の様子に、我を失っていた悪魔はようやく冷静さを取り戻したのか、狼狽しながらシオンに疑問をぶつける。


「だって貴方有名だもん。悪戯好きで誰にも契約してもらえない遊び好きの悪魔。なぞなぞが大好きで、謎の全てを一目で見抜く

特別なスキルを持っている悪魔。すごい昔に居なくなったって聞いてたけど、私と同じでこっちに連れてこられてたんだねー」


『私と同じって』


「うん、私も貴方と同じ世界から連れてこられたの」


そういうとシオンは、自らにかけられた封印を解き、髪の色を赤く染める。


『あぁ、そうだったのか。まんまと騙された。人間はやはりずる賢い』


「答えがわかるスキル持ちなのに謎かけを持ちかけてくるそっちの方がずるいと思うけどねー。でも、ちょっとスキルに頼りすぎかな?だからこうやって足元を掬われるんだよー」


ぺろりと舌を出して笑うシオンに、ロキは一瞬呆けた顔をした後、憑き物が落ちたような表情で大笑いを始める。


『げっげっげっ、そこまで分かってて顔色ひとつ変えず謎かけを続けるなんて。げっげっげっ、完敗だ! ロキの完敗!! 悔しいが、言い訳のしようもない大敗北! 穴があったら入りたいほどしてやられてしまった! げっげっげっ! やはり人間は面白い! 肉は食いそびれたが、楽しさで腹一杯だ!』


「笑うだけでお腹いっぱいなんて羨ましい能力だね?」


「シオンさん、物の例えだと思いますよ」


「なんだ例えかー」


シオンの天然にリリムはそう突っ込むと、ロキは満足そうにどっかと地面にあぐらをかいて座ると。


『さぁゲームは終わりだ、勝者には報酬だ! 覚悟はできてる!なんでも言うことを聞くと言ったんだ! 悪戯好きの嫌われ者だが、悪魔には悪魔の矜持がある! 安心して願いを言うといい!』


「本当―?じゃあじゃあ遠慮なくお願い事をさせてもらおうかなー? 海の水全部飲むとかかなー? 溶岩の中でアーティスティックスイミングっていうのも見てみたいかもー」


『人の心とかないんか?』


「うそうそー! 冗談だよ! えっとねー、お願いはもう決まってるの」


そういうとシオンはそっと悪魔に手を差し伸べる。


『?』


「私と契約して、悪魔さん」


満面の笑みで悪魔に手を差し伸べるシオンに、ロキは一瞬何が起こったのかがわからなかった。


『契約?』


「そ、契約! 私の中にはもう一人いるけどー、まぁ二人三人と契約しちゃいけないってルールはないし、悪くない提案だと思うよー?」


『い、いいのか? 俺は嫌われ者で、嘘つきで、悪戯ばかりの悪魔だぞ?』


「大丈夫大丈夫―! 私もおんなじだったからー! でもね、そんな私でも幸せになっていいんだよって言ってくれる人がいたから。だから私も、同じな貴方に同じことをしてあげるのです!」


ニコニコと笑いながら悪魔の手を取るシオン。


その姿に、悪魔はほろりと涙を流し、走馬灯のように過去の映像が思い起こされる。


謎を解く、ただそれだけのスキルしか持たず、役立たずの悪魔として契約をしてもらえなかった日々。


名前すら忘れられ、悪戯で人を困らせたらみんなが自分の名前を覚えてくれた。

だから、自分という存在が消えないように悪魔は悪戯の悪魔になり、人間を困らせて気を引いた。


だけど、それでもやっぱり友達はできず、契約者は現れない。


そんな矢先に呼び出された異世界。

自分を必要としてくれる人間がようやく現れたのだと心を弾ませたが、待っていたのは自分の容姿に怯える少し前の世界と形の違う人間達。


悪魔は初め、歩み寄ろうと頑張った。


だけど愚かな人間は「失敗だ」とか「成敗だ」とか自分に都合のいい言葉をひとしきり並べ立てたあと。


自分たちで呼び出したくせに、話も聞かずに封印をした。


見た目も、スキルも、存在も、全てを否定されてきた。

そんな自分を、同じだと言ってめの前の少女は手を伸ばしてくれている。


悪魔ロキは考える。


本当に同じなのか? 本当に同じだったら、こいつと一緒に

行けば、自分もこうやって笑えるのか?


そんな期待が、そんな希望が、ロキの心を解きほぐす。


『俺も、お前みたいに笑えるか?』


「もちろん! お友達って、一緒にいるだけでサイコーに幸せになれるんだよー?」


その言葉に、悪魔は笑う。


自分を誤魔化すための作り笑いではなく、心の底からの本当の笑み。


すっかり忘れていた幸せをようやく思い出して、悪魔はシオンの中へと取り込まれていく。


ここに契約は完了し、魔族であるシオンにとっての、二回目の契約が終了した。


──シオンの中──


「げっげっげっ、友達、友達!」


ご機嫌に鼻歌を歌いながら、悪魔ロキはシオンの中を歩く。 初めての契約、初めての友達に浮かれながら居心地の良いシオンの魔力に体を馴染ませる。


そんな中。


「そう言えば、もう一人いるって言ってたけど、どんなやつだ?」


二回目の契約と言っていたシオンに、ロキはそんな素朴な疑問を抱く。


「ちょっと挨拶をしてやろう!」


もし自分よりも序列が下の悪魔なら少し悪戯をしてシオンの一番の契約者になってやろう。


そんな邪な考えを浮かべながら、ロキはフヨフヨとシオンの中を漂うと。


『殊勝な心がけだな、新入り』


ふとずしんとのしかかる様な威圧のこもった声が、ロキの頭上から降り注ぐ。


「ゑ?」


聞き覚えのある様な声に思わず天を仰ぐと。


そこには悪魔の王がいた。


『シオンちゃんとの契約、おめでとうと言っておこう新入り。業腹だが我が契約者にして最推しの魔法使いの決定、受け入れざるを得まい。お前をシオンちゃんファンクラブ会員のNo.2の座を与えよう』


「あ、あ、悪魔王ルシフェル????」


『今後とも、よろしく』


とんでもない人と、友達になってしまった。


不敵な笑みを浮かべる悪魔王を見上げながら、ロキはポカンと口を開けてそう思案した。


◾️


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 謎かけでロキっていうとウトガルドロキを思い出すんだよなぁ 酒杯に海繋げて飲ませるとかやるやべーやつ [一言] ファンクラブ強制加入とか強火過ぎる 強い
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