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ゲームをしよう

封印から現れたその怪物は、人間の見た目すらもしていない悍ましい悪魔であった。


ヤギのような顔に、背中には翼の生えた体。

体は人間の姿をしコートを着ているものの、到底人間とは思えない見た目であり。


放つ禍々しい瘴気に、洞窟内の岩が黒く染まり始める。


「貴方は魔族じゃなさそうだねー?」


そんな邪悪な何かに、シオンはいつもと変わらない様子で

問いかける。


『おーぅ! お前が封印を解いてくれた人間か!! ははは、まさにカモがネギしょってとはこのこと!! 今日はご馳走だ! 女の肉は久しぶりだ!! いただきまーす!!』


そういうと、怪物のヤギのような顎がぱっくりと四つに裂け、頭からすっぽりと入ってしまいそうな牙だらけの大口を開けて、怪物はぽけっとしているシオンへは牙を向く。


しかし。


「食べられるのはやだな〜? 私新婚さんだしー」


ぼぅ、とシオンの体から火柱が上がり、暑さと勢いに驚いたのか、怪物はもんどりうって洞窟の中に倒れる。


『あっちゃーーー!!!? なな、なん!!? 何じゃこりゃ!!?』


驚くように体を起こして口元を抑える怪物。


しかし同じように驚いたようにシオンは目を丸くして首を傾げる。


「消し炭にするつもりだったんだけど……貴方魔法の耐性すごいねぇ」


褒められたのが嬉しかったのか、口を押さえながら怪物は自慢げに胸を張る。


『げっげっげっ!! それはそう! それはそうとも!! 俺は悪魔!! すごい悪魔!! 人間程度の魔法じゃ死なない! 強い存在!! だからみんな俺を封印した! 俺を殺せないから、だから俺は強い!! 抵抗は無駄!!大人しく俺に食われろ人間!!』


「そう言うけど、あれだけ熱々の私を食べられるのー? 言っとくけど、私もっと熱々になれるんだよー?」


シオンの言葉に、一瞬悪魔は訝しげな表情をして、困ったように頭を捻る。


『うん?それはそう、それは困る。 俺は最強の悪魔だが、ちょっぴり猫舌。熱々の人間は食べられない。うーん、どうする? どうする??』


困ったように首を捻る悪魔をシオンは物珍しそうに眺める。


息を殺して岩陰で様子を見ていたリリムであったが、悪魔から漏れ出す瘴気と、洞窟内を一瞬で魔力で満たした魔力量から、悪魔の言っている事が嘘でも誇張でもないと言うことを理解する。


(あ、明らかにさっきのシオンさんの火柱は、十二階位魔法に相当する威力!? それを直撃して無傷だなんて!!? それにふざけてるように見えるけど、あの怪物、本当に動きに隙がない。シオンちゃんだけじゃ…...)


倒しきれない。


そうリリムは考え、その事実をどうシオンに伝えるか思案していると。


『そうだ!!』


怪物はパチンと指を鳴らし、何かを閃いたように笑う。


「どしたのー?」


『戦ってもお腹が減るだけだ! ここは知恵比べと行こう人間! 俺が勝ったら、お前は大人しく食べられる!お前が勝ったら、俺お前の言うことなんでも聞く! これでどうだ!!』


(いけない!!?)


悪魔の発言から魔力が漏れ出し、リリムは慌てて身を乗り出そうとする。


何となし、思いつきで放たれたような発言であったが。悪魔が言葉に織り込んだ魔法はクラミスの羊皮紙と同じ、契約履行の魔法。


この提案は間違いなく罠であり、魔物の笑みが先ほどまでの愛嬌のある笑みから、本物の邪悪な怪物の笑みへと変わる。


それだけ、あの悪魔は勝利に自信があると言うこと。


「いいよー」


だが。


シオンはあっさりとその罠にハマってしまう。


「シオンさん!!! いけない! これは罠で……むぐぅ!!?」


無警戒にも悪魔の罠に乗ってしまうシオンにリリムは思わず隠れていた岩陰から飛び出して叫ぶが。


何かの力により,口が縫い合わされたかのように開かなくなる。


『おぉ、いけないいけない!! ゲームは絶対、決闘を邪魔するものはいては行けない! ゲームは公平に、そして誰にも邪魔されないようにしなくては!! お前は次だ犬娘! そこで大人しく待っていろ! げっげっげっ!!』


「こらー! リリムっちに乱暴したら、私もそうだけど,もっと怖い筋肉エルフと私の旦那様達が襲ってくるよー! 怖いよー!」


『げっげっげっ! 安心しろ、ゲームが終わるまで手出しはしない! ゲームは神聖なもの、血でゲームを汚すなんて俺はしない』


「そう、じゃあ私が勝ったらちゃんと約束は守ってくれるんだね?」


『勿論だ! ゲームで賭けたものを払わないなんて間抜けをしたら,俺は首を切って死んでやる! だから誓え!だから賭けろ!! お前の全てを、命を!! さぁさぁ』


「いいよー! 私も私の命をかけよー!」


「んーーー!!?」


悪魔に唆されるように、契約を承諾するシオン。


すると、シオンの腕に紋章が浮かび上がる。


『げっげっげっげっ!!! 言ったな? 承諾したな!!!!?お前は今、謎かけを、ゲームを受けると宣言した!! この約束からは逃げられない!! 負けたらお前は俺に食われる!! 抵抗できないぞ? 魔法も使えないぞ? ゲームに負けたら契約は絶対だ!! ははははは!! 間抜けな魔法使いめ!! 今日の晩飯はお前と犬の刺身だあ!!』


高らかにゲーム開始の宣言をする悪魔に。


「わーい! たーのしそー!」



緊張感のかけらもなく、シオンは楽しげに笑うのであった。


◾️



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