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39.英雄王ロバートと伝説の騎士

おはようございます。


いつも応援ありがとうございます。


唐突なんですが今日は重大発表ができるやも知れません!


活動報告をお楽しみに!

王城― 謁見の間 その空間には二人の人間がいた。


一人は王冠をかぶり、無駄に奥行きのある縦長の部屋の最奥であり最高の位置に座す、王と呼ばれる存在。


そしてもう一人は、その足元―といっても10メートルほどは距離があるが―に膝を突き、頭をたれている臣下と呼ばれる存在だ。


異常なのは、本来ならば兵や従者、大臣等が同席して初めてかなうはずの王との謁見が、この男一人で行われているという点だ。


赤い鬣の龍の絨毯が敷き詰められた長い空間と、獅子の紋様が描かれた旗がいくつも天井にかけられた王と国を象徴するこの空間に存在するのはその二人のみ……。


しかしその異常は、この二人にとっては通常であった。


「……以上が、事の顛末であり教会襲撃事件の全容でございます」


男は金色の鬣を震わせ、報告を終える。


国王親衛隊隊長であり、王国騎士団を束ねるこの国の武力の長はクレイドル寺院がアンデットに襲撃され占拠されるという奇想天外な事態の顛末と種明かしを伝えると、王は笑うでも驚くでもなく。


「……由々しき事態だ」


ただそう憂いた。


「ええ、近づいてきているかと」


レオンハルトもその王の意見に賛同するように跪いたままそう答え、同時に。


「しかし……思わぬところで戦力を得ました」 そう、言葉を続ける。


「戦力?」


「巷で噂となっている伝説の騎士の話は耳に届いておりますでしょうか?」


「あぁ。 螺旋剣ホイッパーを所持した魔王の鎧の男の話だろう……それがどうした? 聖騎士サリアは二年前ナイトオブラウンドテーブルを身に着けてアンドリューを追い詰めた……もはや驚きはせんよ……しかしなぜそれが戦力になる?」


「此度の事件、解決をしたのはその伝説の騎士です」


「なに?」


「それだけではありません。 一階層に現れたコボルトキングとその軍隊に、オーガを飼育したオークたちの殲滅も、我等が討伐に赴くよりも早く全て撃退しております」


「……どういうことだ?」


「恐らく、あのものはアンドリューと確実に敵対をしている。 唯の冒険者ではなく、アンドリューの目論見を阻止するために戦っているのだと思われます」


レオンハルトの言葉に、ロバートは一人絶句をする。


「偶然ではないのか?」


「偶然であれば、あれだけの冒険者が一階層をうろついているわけがありません。 そして何より、彼は私と出会ったときにこういった」


そう言うとレオンハルトは言葉を一度きり、自らの内の興奮を抑えて。


「何か大きな襲撃の予感を感じている……と」


そう報告をする。


「……気付いているというのか? アンドリューが迷宮内で軍隊を作る実験を行っているということに」


「ええ、そして我々よりも早くその全てを殲滅している」


王は絶句をする。 


なぜならこのことは、この国の騎士団にのみ知らされていることだからである。


スケープゴート率いるメリーシープの群れ、コボルトキングがコボルトの軍隊、オークとオーガの巣……。


この一週間で既に三つの魔物の群れが観測され、更には今日マリオネッターの襲撃である。


唯の偶然、テレポーターの罠の誤作動を理由にすればそれまでの話であるが。


しかし、それが必ず魔物たちの長となるような、もしくは友好関係が築かれるような下層の魔物が、決まって上層階―それも極めて階段から離れた奥深く―に都合よく現れ、連続で群れを形成した……となれば話は別である。


ここまで重なれば、もはやそれは偶然ではなく誰かが意図的に下層の魔物を送り込んだと考えるのが自然であり、その主はもはや迷宮内には一人しか存在しない。


奴が動き出したのだ。


そして、アンデットのクレイドル寺院襲撃の一報とその報告は、王の予想を確信へと変えた。


当初は新種のアンデットがクレイドル寺院で誕生したのかとも王は予想をしていたが、報告ではマリオネッターが死体を操作していたとレオンハルトはいった。


しかし、マリオネッターは死体を操らない。 


傀儡師である彼らは自らが作り上げた傀儡人形を用いて戦闘を行う魔物であり、そして知恵の深い彼らは通常であれば国に対して一人で戦争を仕掛けるようなことはしない……もしそのような事態が引き起こされた場合は、誰かがそうなるように命令したものがいるということだ。 


作成に手間のかかる人形などではなく、いくらでも増やすことの出来るしたいという新しい武器を与えるために。


そんなことが出来るのは、迷宮の主しかおらず、マリオネッターが奴の部下で迷宮の魔物であれば、それはすなわち結界を魔物が通り抜ける術を有したということにもなる。


「彼には協力者がいるらしく、アンドリューの動向を探らせているようです、コボルトキングの件も、そのものに聞いたと申しておりました」


「あったのか?」


「ええ、見事な凱旋でした……その威圧感に堂々たる立ち居振る舞い……噂に寸分の間違いはありませんでした。まさにその姿は昔の貴方様を見ているようでしたが……その奥にある重く深いものは、どこかあの方を思い出させました」


レオンハルトは懐かしむような表情をした後、鎧の下に感じた深く暗いものに対し身震いをする。


「ふむ……我が軍門には下りそうか?」


「いいえ、彼は誰の助けも必要としていない。 彼がクレイドル寺院の襲撃をアンドリューの襲撃の予感と言ったとき、私は彼にコボルトキングを倒したときからアンドリューの仕業だと気付いていたのかと聞いたところ、協力者に教えてもらって初めて知ったといっていました……。 恐らく、コボルトキングを倒したのは偶然だったのでしょう、しかしそこにアンドリューの動向を探る何物かが接触した……恐らく隣に控えていたアークメイジか聖騎士のどちらかでしょう。 そして、それ以降はそのものたちの情報を元にアンドリューが作り上げた軍隊を情報が入り次第つぶしていっている……そう冗談交じりに言っておりました……。 話しぶりから、我々をどこか拒絶しているようにも感じ、軍門に下ることは難しいかと」


「むぅ、しかし、協力者がいるとはいえなぜアンドリューと敵対をするのか」


「噂では、女性が一人アンドリューに連れ去られており、それを取り戻したという噂があり目撃情報もあります。 恐らくそれがアンドリューと敵対する原因かと」


「復讐か」


「ええ。 そのために我々を拒絶している可能性が高いと思われます」


「……ふむ。 深淵を抱きし伝説の騎士、そしてアンドリューと敵対するもの……」


王は何か心当たりがあるように顎に指を当て、考え込むような仕草をする。 「もしや」


その姿にレオンハルトは感づいたかのように顔を上げ。


「彼が……メイズイーターなのやも知れません」 そう呟く。 「……メイズイーター、長らく待ち望んだ迷宮喰らいのスキルホルダー……か。 しかし、ティターニアはいたのか?」


「いえ、見受けられませんでした」


「選定者のあいつは目立つ……いれば直ぐにそれと分かるほどにな……今の話を聞く限りでは望みは薄いだろう。 今はまだ……な」


「……アンドリューが動き出した今、一刻も早くメイズイーターを探し出さねばならん……伝説の騎士の力もお前が言うのだから確かなのだろうが、しかし、あの聖騎士サリア……円卓の騎士の力をもってしても倒せなかったのだ……」


「迷宮の主は、メイズイーターにしか倒せない」


昔から伝わる言い伝えを反芻するようにレオンハルトは呟き、王は玉座のひざ掛けを握る拳の力を緩める。


「だがその騎士の登場は僥倖だ……これからは伝説の騎士のサポートにまわり、魔物討伐に裂いていた人員をメイズイーターの捜索に当てる」


「しかし……もし仮にメイズイーターがあらわれていなければ」


「間に合わなければ、時間切れだ」


王の瞳は諦めたわけでも達観したわけでもなくただただ冷静に真実のみを伝えており、その言葉にレオンハルトは王の覚悟をその身に受け止め、息を呑む。 その一言が、この国の現状と自らが行わなければならないことを十分すぎるほどにレオンハルトへと伝えており。


「はっ! このレオンハルト命に代えても!」


頭を垂れ、至高の存在であり崇拝の対象である者の命令をただただレオンハルトはその者に仕える誇りと共にその胸に刻み込む。


この国を、この王を……消すわけには行かない。


「急げよレオンハルト……飲み込まれる前に」


王の重く嘆くような呟きに対し、レオンハルトは頭を一度深く下げ了承の意を告げた。

その場の空気に流されやすいレオンハルトさん。



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