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エピローグ

「まったく、一週間も続く日曜日とはオベロンの破天荒には驚かされるな」


「ふふふ、でも良いじゃない。みんな嬉しそうよ? 日曜日に浮かれてみんな財布の紐がゆるゆるだし経済も回って良いことづくめよ!」


呆れながらため息をつくロバートを宥める様にクレイドルはそう笑うと、手に持ったグラスの酒を一気に飲み干す」


「うほほ、相変わらず金の亡者ですねぇクレイドル。あぁ、ロバート、おかわりは如何です?」


「もらおうか」


オベロンの力により王城玉座の間に再現されたイエティの酒場。


玉座の間に不自然と屋台が立つという奇天烈な光景ではあるものの、もともと奇天烈奇怪な集団であるスロウリーオールスターズ。


誰しもそこに疑問や違和感を持つことはなく、ロバート自身も呆れる様な言葉を吐きながら、昔を懐かしむ様に心穏やかな飲み会を楽しんでいた。


「しっかし、完敗も完敗だったなぁ。サリアならまだしもよぉ、俺の最終形態がカルラに、しかも素手で破られるとはなぁちっとショックだったぜ…….」


「ウッホホホ。しかもその後立て続けにわたしとの真正面からの殴り合いです。あの細腕でよくもまぁあそこまで武芸を磨き上げたものです。流石はアンドリューの孫と言った所でしょうか」


「戦闘スタイルも性格も正反対だけどな」


「ははは、良いではありませんか。少なくとも,魔法の失敗に巻き込まれて寺院送りになる心配がないのですから」


「違ぇねえ!」


アルフとイエティはそう笑い合い、アンドリューの孫であるカルラへの賛辞をならべる。


紡がれる言葉は、どれもウィル達への賛美であり、完全敗北というスロウリーオールスターズ結成以来初めての珍事に、アルフもイエティもロバートでさえも悔しさよりも新鮮さが勝ったようで、負けたにも関わらず楽しげにその時の様子を語り合っている。


「中でもルーシーの戦いは凄ぇの一言だった!やられた後みんなで観戦してたんだがよ! いやぁ、久しぶりに全力のルーシーなんて見たわ。思わず昔すっ飛ばされた首がヒュンってなったぜ!」



「打ち合いで迷宮の壁に一瞬だけどヒビ入ってましたからね、我々スロウリーオールスターズの中でも彼の方だけは本当異次元の強さですよ」


「それと互角に切り結んでたんだからよ、サリアももう怪物の仲間入りだな……正直、真っ向からやり合っても5秒ともたねーぞ俺はもう」


「メイズマスター化したアンドリューでさえも、変化前のルーシーに手も足も出てませんでしたからね」


「正直、本人から話を聞いてもいまだに信じられないな。あの化け物、どうやったら倒せるんだ?」


話に入る様にロバートはアルフとイエティにとう。


「うほほ、映像水晶をクリハバタイ商店から仕入れましたので後で一緒に見ましょうロバート。記念すべき今日は我々の敗北の日なのですから。なに、今日は日曜日なのです。王様だってフライドポテトを片手に、酒を飲んだって、一日ぐらいは許されるでしょうし」


「ふむ、とイエティは言っているがどうなんだ?クレイドル」


「えー? 良いんじゃない? ちなみに私はフライドポテトじゃなくてチョコレートでよろしくー」


「うほほ、かしこまりました」


他愛のない会話に盛り上がるロバート達。


昔は当たり前であったこのやり取りに誰もが懐かしさを覚えつつ、噛み締める様にくだらない話に花を咲かす。


と。


「あ、そーだ!!」


不意にクレイドルはそう叫ぶと、ロバートへと向き直る。


「なんだ? 駄女神」


「うっさい根暗王。それよりも、アンタから報酬を貰うのを忘れてたわ!!」


「報酬? 再誕の青はわたしただろ?」


「そっちじゃないわよ! クレイドル特性若返り弾!!全盛期の力で暴れさせてあげたんだから! 当然報酬は貰うんだから!」


「報酬て……お前が勝手にぶっ放したんだろうに」


押し売りにも程がある。


「でもでも! そうしなかったら、アンタは無様に敗北してウィル達は過去へ飛んじゃってたのよ!? ループを女神の力で断ち切ったんだから! それ相応の報酬はよこしなさいよ、正当な報酬よ!!」


ループを断ち切った、と言われれば聞こえはいいものの、その話が真実かどうかを確かめる術はない。


なので本来なら、ロバートはそんな不当要求を突っぱねることも出来たのであるが。


「そうか。なら仕方ないな、こいつをやるよ」


ロバートは頭につけた黄金の王冠を脱ぐと、何でもなさそうにクレイドルへと渡す。


「え!!? 良いの!!? これめっちゃ高いやつじゃない!!」


目を輝かせて喜ぶクレイドル!


顔に「言ってみるものね!」なんて書いてあるのが丸見えであったが、ロバートは気にする様子もなく肩の荷が降りた様に微笑んで蒸留酒のイエティをちびちびと飲む。


「良いのですかロバート?」


「良いよ別に。玉座に座るのも飽きてきたし、やっぱり俺は王様なんて柄じゃない」


垢抜けた様に笑うロバートに、イエティは微笑む。


「記録で見ることはできませんでしたが、その反応からしてあなたもよほど良い戦いであったのでしょうね」


「まぁな。あれだけ強いならもう大丈夫だろう。アンドリューを取り戻して、王様なんてさっさと辞めてやるつもりだよ」


楽しげに、ロバートは久しぶりに明るい未来を語った。


その姿にアルフもイエティも、クレイドルも安心する様に微笑む。


「それで? 王様やめた後はどうするの?」


優しい女神の問いかけに、ロバートは少年の様に瞳を輝かせる。


「また冒険者をやろうと思ってる。南の島に全身黄金でできたドラゴンが出たって話が届いててな」


「黄金!!」


「落ち着け駄女神。んで、その根城がレブラスカの迷宮って呼ばれてる難所の洞窟みたいでよ」


「ほほう?」


「うほほう?」


ロバートの語る冒険の予定に、当然の様にイエティとアルフは興味深げに耳を傾ける。


自然で他愛のない。


しかしそれは間違いなく、ロバートが望んだ仲間達との復縁であり。


子供の様に語り合う英雄達の姿を、女神は嬉しそうに見守るのであった。



これからしばらく後、復活したスロウリーオールスターは魔王と肩を並べる伝説を積み上げ始めるのだが。


それはまた別のお話である。


フェアリーゲーム fin

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