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魔王の頭はすっからかん

「ふっはははははははは‼︎ 魔王軍万歳‼︎」


「まおーぐんばんざい‼︎」


「万歳、万歳‼︎ 大喝采‼︎」


「うおーーー‼︎ マキナスペシャルどっかーん‼︎」


これ、どうやって勝てばいいの?


それが敵陣の様子を偵察に来た儂、ハリマオの率直な感想だ。


叛逆の狼煙とか言ってかっこつけてレオンハルトと偵察に来たが、なにあれ、凄いでかい音立てて遠距離の敵なぎ倒してる筒みたいな兵器の時点で心が折れそうだし、土塊人形を操っている魔物がかつての魔王軍の大軍師ローハンだなんて聞いてない。



制御を失いあぶれた魔物を、見るからにやばい見た目の男が魔物を駆逐している。

土塊の人形は予想通り、いかに噛みつかれようが、いかに破壊をされようが。

土に溶け込むと同時にまたその姿を再生させている。


まったく今日はなんて日だ。

ここ数十年まともな戦争などなく、兵士もだらけきり、修羅場を経験したことのない若造が大半となった今になって、なぜこのハリマオが神と魔王を一度に相手取るなんてアホみたいな戦場で指揮をとらなければならないのか。


「……ハリマオ殿、あのアンデッドはですね」


「見ればわかることを一々説明するな。どう見たって最悪の敵だよ、負けイベントだよ‼︎? クソゲーだよ‼︎ まったく機械や魔導兵器によってあの土人形を作っているならばまだ何かしら手立てがあったが、エルダーリッチーとデウスエクスマキナみたいなガキが二人であの土塊を使役しているとなると状況は最悪だ」


「……というと?」


「大軍師ローハンだぞ? 貴様とておとぎ話とかで聞いたことがあるだろう? 魔王の軍勢を一人で操った最悪の化け物だ、魔王に殺された存在はクレイドルの庇護を離れ、あのローハンの体の中に魂を永遠に封じ込められる。そんな化け物が、土塊に魂を吹き込んでるんだぞ? レベル制限ルールの抜け穴もいいところよ……たしかに生まれたばかりの土塊はレベル1だろうが、その体に入っているのは紛れも無い、エルダーリッチーに挑み殺された熟練の冒険者の魂だ」


「……となると」


「あぁ、土塊か否か関係なく、はなっからうちの軍勢やそこらの魔物程度じゃ正面からやりあってあの土塊兵とは勝負にすらならないということだ」


レオンハルトはその言葉にピンと髭を立てて感心したような表情をする。


「なるほど、ゲーム開催の告知からわずかな時間でこれほどの策を練るとは……さすがは伝説の騎士」


「おまえ、それ部下の前ではやるなよ? 素直なのはいいけど感心してどうする……兵法で敵の軍師に遅れをとったと認めるようなものだ、指揮が下がるぞ」


「さ、さすがに部下の前ではやっていませんよ‼︎」


慌てふためくように否定をするレオンハルトであるが、どうだかと呟いてそのまま成り行きを見る。


「意趣返しとうまく魔物を誘導しローハンたちと戦わせたのはいいが、そもそも実力差が違いすぎるわ」


「むしろ、この隙に潜入を仕掛けるという作戦もすっかりお見通しのようですね、辺り一面に隙間なく土塊人形が見張りを立てています」


「おそらく、姿こそ見られてはいないがここでこうして偵察をしているのもローハンは織り込み済みなのだろう。ああやって馬鹿騒ぎしているようだが、あれだけ派手に魔法や未知の兵器ブンブン振り回されりゃ、作戦だってわかってても戦意がそがれるわ」


「お気をたしかに。ここを突破できれば我らの勝利……王の悲願のたっせいが近くのです」


「ふん、狂王の試練なんて知ったこっちゃ無いが儂も軍人だ。ただ戦えと言われれば戦うだけだ。もちろん死なない程度にな」


「……大軍師ハリマオ」


「もちろんレオンハルト、お前にも最大の犠牲は払ってもらう。 この国の守護の要なんだからな」


「わかっております。幸いここで起こった出来事は全て泡沫の夢となることをオベロンは約束しました、私のこの封印を解くことも視野には入れています。しかし、相手は魔術師ローハン……果たしてこの封印を解いてなお牙がとどくかどうか」


「当然、アルフレッドのバカが突っ込んで突破できなかったんだ、馬鹿正直なお前が突っ込んでいったところで、出し抜かれて終わりだろうよ」


「ですよね」


先程まんまとしてやられたことをレオンハルトは思い出し、苦笑を漏らす。


「だが安心しろ、バカとハサミは使いようだ。 その牙を届かせるのが儂の仕事だ、黙って儂のいう通りに動きゃいいんだよ」


「疑うわけではないですが、本当に勝てるのでしょうか? 我らの後ろに控えさせた騎馬兵は四人。 本体は指示通りオベロンの城に向かわせており、ヒューイたちが包囲から抜け出してこちらに合流するにはまだ時間がかかります」


「バカめ、その状況だからなんとか勝てるんだろうが。自慢じゃないが儂は勝てない戦いは勝てないとはっきり言うわ。 だがな、勝てると見えた戦いで負けたことはない。 だからこの儂が勝てると行ったら敗北はない。 空から神が降ってくるぐらいのイレギュラーさえなければな……わかったら合図をまて。儂が出せる指示はここで終わりだ、あとはお前次第だ」


そう言って立ち上がりレオンハルトに短い別れを告げる。


本来、軍師が最前線に立つなどもってのほかだが、死なないゲームであるなら話は別だ。


将軍が死のうが、王将がチェックメイトになろうが敗北にならないならば。


王でさえも捨て駒にするべき、それが儂、ハリマオのやり方だ。


正直怖いし、生き残れる自信もないし、レオンハルトがうまくやるかはわからない。


だが、儂のような凡人がこんな化け物の前でできることは常に一つ。

最善を尽くすことだけ。


故に、儂は今できる最善を尽くす。


出来るだけ目立つ場所、小高い丘の上にたち大声を出すために息を吸う。


叫ぶ内容はもちろん。


「魔王の頭は、すっからかあああぁん‼︎‼︎」


相手をブチギレさせる罵倒の言葉だ。


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