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転生勇者はフリーダム

【なめんじゃないわよ‼︎ ジャイアントグラップ!!】


再度放たれる巨人の一握。


膨大な魔力により放たれたエリシアの魔法は、術式も完璧に発動をする。


だが。


「きゃっ‼︎?」


暴発するような音と同時に、エリシアの近くの地面が弾け火花が髪を焦がす。


「エリシア‼︎? 無事か?」


「大丈夫。 だけどこの世界むちゃくちゃよ、何もかも世界の常識やルールが書き換わってる……世界の流れやマナを頼りに発動をする魔法は全部封じられちゃってるわ」


燃え盛る大地、オベロンが作り上げた世界に閉じ込められたリューキたちの戦い。


書き換えられた世界のルールに、エリシアはがっくりと肩を落すが。


「ならばこれならどうだ‼︎ リューキ考案‼︎ おじいちゃんのパイナップル爆弾‼︎」


叫びながら放たれるパイナップルのような形をした小型の爆弾を、投げつけるフット。


【爆風はそよ風に】


しかしオベロンの言葉と同時にその爆弾はそよ風に運ばれるようにチリへと消える。


「ばかな……アイテムでさえも無かったことにするのか、あいつは」


「くっははははははは‼︎ 当然よ。 この世界に置いてなにが重要でなにが不要なのかは余が決める。 余こそ真理、余こそ全て、この世界において全ては余に首を垂れる。クレイドルが作り上げた世界での常識に縛られる貴様には、余の世界を壊すことはかなわん‼︎」


「くっ……」


忌々しげにオベロンを見上げるエリシアとフット。


互いに相手に有効打を与えられる方法を必死に模索するが。


ゲームマスターに駒が逆らえないのと同じように、どの攻撃も有効打たり得ないことを無慈悲にも伝えられてしまう。


その様子に、オベロンは期待はずれだと言うようにため息を漏らすと。


「……万策尽きたと言ったところか。 ならばここで終われ」



指が振るわれ、同時にオベロンはエリシア、フット、リューキ三人の存在を否定する。


それは明確な死刑宣告であり、存在を否定された三人はオベロンのゴッズスキルの示すまま、三人の背筋に凍りそうなほどの悪寒が走る。


「まずい‼︎?」


死……すらも生ぬるい、存在の否定に思わずリューキは思わず声が漏れる。


世界から、全ての記憶からはじき出されてしまうというその正真正銘の【消去デリート


それがどんなものかはわからないが、間違いなく悍ましい脅威であることは確実であり、そのどうしようもない攻撃を、三人は何をすることもできずにただそれを見ている事しか出来ない。


【お気の毒だが、貴様らの冒険の記録は消えてしまいました‼︎】


そんな呪文とともに、巨大な光が三人を包む。


「うわああぁ‼︎」

「きゃあああぁ‼︎」


響き渡る三人の悲鳴は、降りしきる炎の雨に掻き消される。


【これで終わりか。転生勇者というからどれほどのものかと思ったが……ん?】


ふと、オベロンは収束する消滅の光のなかを凝視する。


光の中で影が動いたのだ。


この世全ての事象を自在に書き換えることができるオベロン。

そのオベロンが存在を否定した人間が生きている。

ありえないことだが、それは彼の前で現実となった。


「……あれ? なんともねえぞ?」


「本当だ」


「むしろ少し体が軽くなった……ような?」


しかも、誰一人欠けていないというおまけ付きで。


「なっ‼︎? バカな‼︎ 余の【消去】を受けてこの世に平然と立っていられるなどありえん‼︎ 貴様ら一体なにをしたと言うのだ‼︎」


「え、その……なにをしたっていうか。 それはよくわからないんだけど」


怒り狂うようにまくし立てるオベロンに、リューキ達は困ったような表情を見せる。


「惚けるな‼︎ 余の認めぬものがこの世に立っていて言い訳がないだろう‼︎ 許さん、許さんぞ‼︎ びっくりするほど不敬であるぞ‼︎」


「ちょっとあのオッさんなに一人で怒ってんのかしら。 自分が魔法失敗したからって人のせいにするなんて超恥ずかしいんですけど。怒るくらいなら魔法の練習もっとしろって話よね」


「そういう問題ではないわ小娘ぇ‼︎ 今、貴様らは余の改変に抗ったのだぞ‼︎ゴッズスキルにはゴッズスキルでしか対抗はできない‼︎ しかも、余の力は世界を作るクレイドルのゴッズスキルに次ぐ現実を改編する力の所有者だ‼︎ それを超えるゴッズスキルは、何事にも干渉されない特権を持つ【自由フリーダム】か、時空ごと断裂ができる【剣聖】ぐらいしか対抗策は存在しない‼︎」


「へぇ、ちなみに【自由】のスキルってどうしてあんたの力が効かねえんだ?」


「決まっておろう、【自由】のスキルホルダーは作り上げられたこの世界が正しいか否かの裁定者の特権を与えられる。 故に、そのものが【ありえない】と断じた世界の【改編】は全て白紙……クレイドルが最初に作った最初の状態にリセットされるのだ。故に、【自由】のスキルホルダーには空間操作や、認識操作、世界の形を変えて相手を攻撃する魔法やスキルの一切が通用しない。クレイドルが作り上げた世界の下地に我が改変と改良を重ね、【自由】のスキルホルダーがその可否を決定する。大昔にそうやって世界をつくったことがあったが【自由】のスキルホルダーが死んだと同時に消えたシステムだ。私のゴッズスキルによる改変がこの世界に定着しないのは【自由】のスキルホルダーによる【承認】が行われていないからさ……しかし、なぜそんなことを?」


「いやぁ、役に立たねえスキルかと思ったけど【自由フリーダム】ってそういう効果持ってたのか」


「え?」


「干渉されない特権ということは、なるほど先日のアンデッドシンプソンとの戦いで時空の狭間に落ちた時も、お前のその力のお陰でなんとかなったというわけだな」


「日がな一日ぷらぷら遊んでても許されるってスキルじゃなかったのね」


「え?ゑ? なにその反応……もしかして貴様」


「あぁ、なんか俺【自由】のスキルは持ってるんだよな」


「なっ‼︎? なにいいいいいいいいいいぃ‼︎」


「わざわざと使いかたまで教えてくれてありがとうなオベロン……そんじゃま早速」


「ちょっ‼︎? 待、待て‼︎?」



「待てと言われて誰が待つかよ‼︎『承認不可(お前の世界はうそっぱち)だ』」


「ぬっ‼︎? ぬおおおおぉぉぉ‼︎?」


リューキの言葉と同時に、オベロンが作り上げた世界は崩壊し、元のリルガルムの迷宮第四階層……偽りの草原へと姿を戻す。


「ぐぐぐ……貴様、貴様がなぜゴッズスキルを」


「大切な相棒からの預かりもんだ。 俺はそいつを取り戻すために旅を続けてる」


「預かりもの? まさかそれは……」


「おっと話はここまでだ、決着と行こうぜオベロン。上を見な‼︎」


そう叫び、オベロンの上空を指差すリューキ。


しかしオベロンはそれをあざ笑うと。


「何度も同じ手が通用するか不敬者‼︎ 我がフェアリーテイルを破ったからといって調子にのるなよ‼︎ まだまだ貴様の息の根を止める方法などいくらでも……」


「本日は晴れ時々拳骨よ‼︎『ゴッドハンド‼︎』」


腰にさした剣を引き抜き叫ぶオベロン。


その頭に上空から容赦のない巨大な拳の一撃が落ちる。


「もっぷほおぉ‼︎?」


悲痛な悲鳴と同時にオベロンは地面に叩きつけられる。


「あーあ、だから言ったのに……当然、回復は【承認不可】な」


悪辣な笑みをこぼしてリューキはそう呟くと、その言葉と同時にオベロンの体は動かなくなり、空にまた一つ魂が登っていくのであった。



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