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カルラ参上

「……ホイッパーを防ぐ、シオンの最大火力も耐えきる。 ほんとうに生き物なの? イエティ」


その頑丈さに僕はもはや驚きではなく呆れの方が勝り、そう問いかけると、イエティはニコリと笑ってうなずき返す。


「当然私以上に野性味溢れる生物はおりませんとも。 だからこそわかりやすいでしょう? 小手先の技も、魔法も……スキルすら使用していない私に、あなたたちの全力はたやすく防がれる。 それはつまり、私とあなたたちとでは生物としての格が違うのですよ」


指先をふるい、シオンが焦土へと変えた大地がまたも雪原へと姿を変える。

寒暖差に大地は悲鳴をあげるようにひび割れ、あたりに積もった灰が雪に混じり舞い上がる。

 視界が悪くなり、ぼんやりと輪郭の崩れたように見えるイエティの姿は、ただでさえ巨大なイエティの姿を更に巨大に映し出し。

 僕は思わず一歩足を下がらせる。


 だが。


「そんな脅し通じないよー! どんなに強大な相手だって、私たちが力をあわせたら、誰にもぜーったい負けないんだから!」


 そんな僕を励ますように、シオンは杖を構えてイエティへと啖呵を切る。

 

 おじけづくつもりも、最大火力を防がれたことに対する失意もない。

 まぶしい程の信頼と、憧れてしまいそうになるほどの自信。

 

 根拠がないのはシオンにとってはいつものことだが。間違いなく僕はその言葉に励まされ剣を握りなおす。


 僕が諦めてどうするんだ……そう自分を一度叱責して。


「ふむ、ここまで見せつけても心は折れませんか。 よほど、伝説の騎士は愛されているようだ……戦意喪失によるイージーウインを狙ってみましたが、うほほ……少々貴方達をなめすぎていたようだ」


「ふっふーん、こんなもんじゃないんだからー」

 

 イエティの言葉に、シオンは杖を振るいあたりに火花を散らす。

 しかし……。


「ええ、だからこそ後悔する前にここで倒してしまいましょう」


 イエティはそういって指を鳴らす。


 同時に、シオンと僕の足元から一本の蔦が伸び、その体を拘束する。


「なっこれは!?」


「バインド!? しかも遅延魔法でだなんて、いつの間に」


「あなたほどではありませんが、私だってこれぐらいはできるのですよ」


「くっ、なんのこれぐらいすぐに……」


「いいえ、この一瞬があればあなたは終わりです」


 炎を巻き上げ、シオンは自らを拘束する蔦を焼き切ろうとするが。

 其れよりも早くイエティはシオンの元まで踏み込み、その腕を振り上げる。




「シオンッ!」 


魔王の鎧を持ってしてもダメージを殺しきれない拳。

 生命力5のシオンが耐えきれるわけもなく。僕はなすすべもなく体を拘束されたままシオンの名前を叫ぶしかない。 


「っ!?」


 当然、その程度でイエティの拳は止まることはなく、砲弾のように巨大な拳はシオンの体を捉えるが。


「私の友達に! なにするんですかー!」

 

 その巨大な腕は、シオンに届くよりも前に僕の影から現れたか細く白い腕に絡めとられ受け止められる。


「むっ……私の一撃を……貴方は」


「私は影……至高なる伝説の騎士に仕えるナイトストーカー。そして、シオンちゃんのお友達!」


「うほっ!?」


 怒号と共に振るわれた手刀。

 その鋭さにイエティは最高高度を保っていながらも攻撃を回避し、とんで距離をとる。

 それは、鍛え上げられた肉体が、ダイアモンドの如きイエティの肉体にも通用することを教えてくれる。


「カルラン!!」


「し、シオンちゃんお待たせ! 助けに来たよ!」


 サラシ姿のシオンは目立った外傷はなく……細身ながらも美しい肉体に、僕は思わず見とれてしまう。


「無事だったんだねーよかったー」


「ええ、テレポーターのせいで拠点まで戻されちゃって。 アルフさんとの戦いにてこずって、遅くなってごめんなさい……ウイル君?」


 思わずその姿に見とれてしまっていた僕にカルラは不安げに声をかけ。

 その声で思わず正気に戻る。


「あ、ご、ごめん。綺麗で思わず見とれちゃってた……バッチリなタイミングだよ。ありがとうカルラ」


「み、みとっ!? 綺麗!?」


「……わーお流石ウイル君、こんな状況でも奥さんの前で女の子口説き落とすなんて。 焼く? 焼いちゃう?」

 

「く、口説いてなんかないよ!? ただ正直な感想をいっただけで」


「お嫁さんの前でそういう事言うかなーふつー!? いや、確かにカルランの体はすごい綺麗だけどその分私も褒めてほしいよー!」


「はわわっ……シオンちゃんまで綺麗だなんて……」


 ポカポカと僕の鎧をふくれっ面でたたくシオン。

 

「なーにいちゃついてんですか戦闘中に!! 青春ですか? ゴリラ的に考えてゴリラには青春は来ませんから、どす黒いものを心のうちに芽生えさせますよ! うっほーー!」


私怨が篭ったような怒号をあげながら、イエティは拳を振り上げるが。


「影縛り!」


その足元に影による綱を生み出し、シオンは体を縛る。


「うっとうしい!」


当然それはイエティの動きを阻害する程度のものであり、イエティは体をひねって影を引きちぎるが。


引きちぎられた影の中から、カルラはするりと現れる。


「うほっ⁉︎ あなたいつの間に」


「影はどこにでも」


にこりと笑顔を見せるとイエティの眼前にて手刀の一撃を放つカルラ。


「ぐっ⁉︎」


その一撃を回避するように体をのけぞらせるイエティであったが、体勢が崩れた瞬間を狙い、カルラは足払いにてすぐさまイエティを転倒させる。


「足元がお留守ですよ‼︎」


「うっほぉ⁉︎」


綺麗に大地に弧を描くように放たれた足払い。

忍の鍛え上げられた足はするりとイエティの足を捉えると、足の腱を切り裂きながらすくい上げ転倒をさせる。


「ぐううぅっ!! 鍛え上げられた最高硬度の私の体がいとも容易く……一体なぜ」


疑問をうかべるように、立ち上がろうとするイエティであるが、カルラはすかさずにイエティの胸の上に飛び乗ると、機械のように正確無比な動作でイエティの心臓をえぐり出そうとする。


「殺った……」


イエティの言葉にカルラは答えず、手刀をイエティへと放つ。


しかし。


「アイスブロック!」


詠唱破棄により放たれた魔法により、心臓手前でカルラの腕は氷により阻まれ凍りつく。


「! その肉体で、これだけの魔力ですか」


「うほお‼︎」


動きのとまったカルラに対し、イエティはすぐさま上に乗るカルラに対し頭突きを飛ばすが。

カルラは迷わずに凍りついた腕を手刀で切り落とし、飛んで離脱をした。


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