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次の戦場へ



 無限に近い体力も、再生力も、回復力も……死を遠ざけるための予防ではあり。

 いかに成長をしようとも、いかに進化を経ようとも。


 何物も「死」そのものから逃げることなどできない。


 生と死をつかさどる存在でさえ、その節理からは逃れることは出来ないのだ。


「ははぁ、まさかここまで一方的とは……さすがはカルラ様、成仏しないで済みましたよ」


 胸をなでおろすローハン。

落ち着き払っているが、膝がいまだに振るえているところを見ると、予想外の出来事にはこの軍師は弱いらしい。


「ふぅ……とりあえず強敵撃破って奴だな! マキナなんもしてないけど! いいのかな? いいよね! 幼女だから、褐色ロリだから許されるよね? 許されないならもうちょっと頑張るけど!」


「誰に聞いてるんですか? マキナさん?」


「わかんない!」


 マキナの言葉に私はあきれながらも空を見ると、天高く飛び上がるアルフレッドの首から、白い魂魄のようなものが空へと昇り迷宮の外へとはじき出される。


「お、終わりました! ローハンさん!」


 カルラは嬉しそうにこちらに振り替えると、手を振って私たちのもとに戻ってくる。

 

「素晴らしい戦いでしたカルラ様……まさに魔王様のストーカーにふさわしき戦いぶりでした」


「誉めてるのかそれ?」

「へへへー! もぅ、ろ、ローハンさんったらお上手なんですから!」


「誉めてたかー」


「体の調子はいかがでしょうか? 随分と激しい打ち合いになっていましたが」


「見た目ほど酷い怪我はないですよ? すべて受け身をとったので」


「刃物に受け身ってどういうことなのか神父よく理解ができませんが、本当に全て軽傷で済んでるんですよね。カルラさん、あなた毎日ご飯にオリハルコン混ぜ込んで食べてるんですか?」


「え? 今は違いますけど、なんで知ってるんですか?」


「食ってたんかい」


 私はそう突っ込みを入れつつ、カルラの背中に手を置く。


「ひゃっ!?」


「おや、傷みましたか?」


「あ、いえ、びっくりしちゃって……」


「セクハラだ! セクハラ神父だ!」


「違います―! 治療ですー! ほらヒール!」


 私はそのまま奇跡魔法を発動し、うるさいマキナに威嚇をしつつカルラの怪我を完治させる。


「あ、ありがとうございます」


 出血が止まったカルラは、肩の調子を確認するように動かしながらお礼を言い。緩んださらしを巻き直す。 

 

「ふぅ……これでスロウリーオールスターズはロバートのみですね。少々取り乱しはしましたが……何、計画通りです。 カルラ様はこれからどうなさいますか?」


 そんな最中、ローハンは膝の震えが止まったのかそんなことを呟いた。


「そうですね、少し離れてしまいましたが王城へと向かうつもりです。きっと今残されているのはウイル君とシオンちゃんだけですから……苦戦しているはず」


「そうですね、一定距離まで近づけばワープができるカルラ様ならば、今から行っても十分に間に合うはず……そうすることをお勧めします」


「ありがとうございます」


「お礼などいいのですよ、私はあなた方に仕えるのが使命なのですから……そうだ、シンプソン様はどうなされます?」


 カルラの行動方針が決まった後、思わぬタイミングで私に質問が投げかけられた。


「おや? オベロンとの戦いのために残ってほしいって話ではなかったのですか? ローハンさん」


「ええ、そのつもりでしたがリューキさまはオベロンにあれを使わせたご様子。 ならばもはや決着は早いでしょう。万が一があってもあとは我々で何とか致します……もともとご用事があったようですのに、お引止めをしてしまいまして申し訳ございませんでした、シンプソン様……ご自分の使命にお戻りください」


 そういい、髑髏の中の目の光を片方だけ消して、ウインクのまねごとをするローハン。

 

「ふふふ、私はただお金もうけをしようとしているだけですよ。使命だなんて大それたものではありません」


「ええ、そういってあなたは世界を変えた。 今回もそのおつもりなのでしょう?」


「さぁ……どうでしょうね? とりあえず私はカルラさんと一緒に行くつもりですよ?」


 昔の話、過去のつらくも楽しかった思い出を少しだけ胸に走らせながら私はそう呟く。


「わ、私と一緒にですか?」


「セクハラだ! セクハラされるぞカルラおねーちゃん! エロいからな」


「だーれがセクハラですか誰が!?」


「え、えとその時は【自主規制】を【自主規制】して【自主規制】をしますので大丈夫ですけど」


「わお、なんだかおねーちゃんの心配よりもシンプソンの方が心配にマキナなってきたぞ? 大丈夫? 生きて帰れる?」


 心配そうにこちらを見るマキナに私はため息を漏らす。

 子供のように人をからかって遊ぶ彼女の姿はそのまんま昔のデウスエクスマキナそっくりだ。


「……セクハラなんてお金にならないことなんてしませんから安心してください。あとさりげなく素振りをするのやめてください怖いから」


「あ、ごめんなさい。つい」


「まったく……ただ王城まで護衛をしてもらうだけですよ」


「それはその……か、かまわないですが。シンプソンさん、お、王城に何か用事でもあるんですか?」


「火事場ドロボーはいけないことなんだぞ? 知ってたか?」


「そうです、せめて死体のお財布ぐらいにしておかないと」


「私一応神父なんですけどみなさん忘れてますよね……まったく……ただ少し、旧友に挨拶をしに行くだけですよ。こういう時じゃないと顔も合わせられないのでね」


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