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アルフとの再開2 目的

「おおおぉ! ウイル!? 帰ってきてたのか! ご苦労さん、ずいぶんと大変だったみたいだが助かったぜ! 本当にすまなかっ……」


「悪いガドッグ挨拶と報告は後回しにさせてもらうよ……まずは、はちみつ酒を二つお願い」


「な、なんだ? 物々しい雰囲気だな……まぁすぐに行く。 食い物は?」


「メロメロ羊のクリーム煮でよろしく~! あと、バジリスクの手羽先、蛇生ハム巻きでしょ? あとはー、クラーケンとブレードフィッシュのカルパッチョに……あ!!シーサーペントの生け作りで!」


「おなか減ってるのね、シオン」


「そうでもないけど、お話し、ちょっと長くなりそうだからねー」


シオンは気遣うようにそういうと、ガドッグから渡された人数分のはちみつ種をテーブルを用意してくれているカルラとサリアの元まで走って持っていき、席に置く。


ガドッグとティズはというと、お互いそれぞれの理由でばつが悪そうな表情のままであり、特にティズに至ってはふさぎ込むようにうつむき気味だ。


さすがに、いつも騒がしいティズがこんな様子であればガドッグも何かがあったと察したらしく。


「なんだか立て込んでる見てえだな……」


なんてのんきだが心配そうに声をかけてくれる。


「なに、シンプソンのお守りに比べたらなんてことないよ」


僕はいつも通り、そんな気遣いの言葉に軽口を返してみせると、ガドッグはぺちんと自分の

頭をはたくと。


「こいつは手厳しい……わーったよ、今回の支払いはただでいい」


なんてひらひらと手を振って僕たちを席へと向かわせる。


「……ずいぶんとガドッグを手なずけたみたいだなウイル」


「気が付けばもうレベル10だからね」


アルフは苦笑気味にそういい、僕たちは互いにはちみつ酒をもってお互いのジョッキを打ち鳴らす。


「再会を祝して」


ちんとなったジョッキ。 しかし、どこか表情は重いまま、僕たちは向かい合いながら蜂蜜酒を飲みほした。


「……さて、何から話したものですかね」 


ことりとジョッキを置いたサリアはそうつぶやくも、それに続くものはいない。


いつもならばティズがサリアに対して何か突っかかるか、アルフが冗談めかして迷宮での出来事を語ったりするのであるが、この日ばかりは誰もが率先して口を開こうとは思わなかった。


まぁ、いろいろとありすぎたから無理もないのだが。


「アルフは何をしていたんだい? この一か月」


こちらは話の整理がつかないため、僕はアルフに話を聞いてみることにした。


と、アルフのほうは話すことが思いついたのか、顎髭の泡を綺麗に拭いたのちに語り始める。


「少し北のほうに用事があってな、それを片付けてた。 何、大したことじゃねえんだがな」


「北っていうと、僕のいたノスポール村の方面?」


「あぁそうだな、あー……まぁあの付近にアンデッドハントが現れた……って聞いただけだ」


「……またアンデッドハントが?」


僕は一瞬胸騒ぎを覚える。


今は亡き父親の手掛かりとなるアンデッドハント……それがまた自分故郷に現れたなんて……。


「あぁ、気にすんな。 情報は結局デマだった……アンデッドハントもいなかったし、肩透かしで終わっちまったよ」


不安げな僕に対し、アルフは苦笑を漏らしてそう自分の目的の失敗を笑う。


いつもと変わらないアルフの表情に僕は少し安堵を覚える。


「こっちに戻ってきたのはなんで?」


「一カ月後に答えを聞くってのはあったが……本当の目的は別だ……ついこの前、急にロバートのやつに緊急で呼ばれて、慌てて戻ってきたってわけだ」


「緊急の招集……」


その言葉に、僕たちは視線を交差させる。


おそらく、迷宮が消滅したことに対して助力を求めたのだろうが……。


「……何かあったのかわかるか?」


「理由も何も聞かされてないの?」


「ロバートのやつは、人を頼るときに絶対に理由を語らない……そうやって振り回されてきた」


「なるほど……た、確かに説明とか苦手そうな方でした」


カルラの言葉に、一瞬アルフは浮かない顔をし。


「で、どういう経緯でメイズエンドシステムについて聞いたんだ?」


そう本題を切り出してくれた。


「実は……」


そこからしばらく、クークラックスでの出来事を含めて僕たちはアルフに説明をする。


思ったよりも時間がかかってしまい、出された料理をすべて平らげるころにようやく僕たちは説明を終えたのであった。


「なるほどねぇ……オベロンのやつが」


「この際、アルフが僕たちにメイズイーターのことを隠していたことについて理由は問わないよ……新しいメイズイーターに、メイズエンドシステムのことは語らないっていうのが、スロウリーオールスターズの間で決められたことなんだろう?」


「まぁ……な」


ぼそりとアルフはばつが悪そうにそう語ると、サリアはいらいらとしながら、追加で注文したドラゴンの骨の唐揚げをばきりとかみ砕く。


「……そのことに関しては、僕たちもかなり助力をしてもらった……だけど腑に落ちないのは、どうしてかつて世界を救った英雄、スロウリーオールスターズがこうしてアンドリューを支援しているのかだ」


「むう」


真昼間から話すことではないため、当然シオンには認識疎外の魔法をかけてもらっている。


表情は硬いが、周りの人間たちには僕たちが他愛のない世間話をしているようにきこえているはずだ。


「さすがにその部分は答えてもらよー」


「ロバートはなんて言っていた」


「何にも、サリアに首をはねられそうになったのに、貴様たちに話すことは何もない……だそうだ」


「あのバカはいつもそうだ……カッコつけやがって。 説教垂れとくよ」


「説教はいいですから、それで、どうしてなんです?」


サリアの言葉の端々にとげがある。


「……あぁ、わかったよ、わかったからそんな今にも首をはねそうな目でこっちを見ないでくれ」


「あなたの返答次第では、その首をもらい受けることになるでしょう」


「だー、もう。 わかった、わかった話すっての……正直、ロバートのやつには義理で手伝っちゃいるが……ルーシーのことに、イエティのことを俺は許したわけじゃねえからな……何を話そうがロバートのやつがとやかく言うことはできねえはずだ……当然、あいつのことだから俺にも内緒で何か企んでるって可能性もあるが……」


「そこは承知しています……足りない情報は、わ、私が集めてきますので……ただ、この謎が解決されないと……情報も集めるに集められないんです」


「なるほどね……わかったよ。 となれば話してやるよ……まずは目的だが」


ごくりと息をのみ、僕たちは身を乗り出してアルフの言葉を聞く。


「俺たちの目的は……アンドリューを取り戻すことだ」



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