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32.クレイドル寺院防衛戦

サリアの報告に僕は言葉を失う。


「え? どういうこと、シオン」


「ま、魔法自体は成功したよ!? ただ、敵がこの誘い精霊に引っかからなかっただけで!」


「馬鹿な、誘い精霊を無視できるのは人間並みの知能を有する魔物だけだぞ!? あのゾンビたちは全員人間並みの知能を有していることなのか?」


「どう考えたってそんなわけ無いでしょ、見てみなさいよあの間抜け面を!」


「いやーわかんないよ? もしかしたらあれで色々と思い悩むことがあるのかも」


「言ってる場合ですか!? なんかすごい冒険者だなって感心した私の気持ちを返してください!」


神父さんはなにやら半分泣きっ面で僕達に追いすがってくるが、おじさんの鼻水を拭かれるのはたまったものではないので、回避しておく。


「……やっぱりサリアの作戦は」


「ちょっ!? マスター! 待ってください……何か、何かからくりがあるはずなんです!」


先程までの冷静沈着振りはどこへやら、サリアは慌てた様子で僕達を教会に連れ戻し。


「早く扉を!?」


「ああっ!」


次に声を上げたのは神父だった……。


「どうしたんです!?」


振り返ると、ゾンビたちが一斉に走り寄ってきている。


足はやっ!? さっきまで足元おぼつかないおじいちゃんみたいだったのに今すごいぴんぴん元気だ!


いやだが、問題はそこではない。

僕はゾンビから視界を外し、扉を見てみると。


扉が壊れていた。正確にはサリアのスキルによりボロボロになってしまい、しまらなくなってしまったのだ。


サリアのほうに向き直ると、サリアは目線をそらした……。


「さーりーあーーー!」


「すみません! すみませんマスター! 成功すると思ったんです、このまま脱出できると思ったんです!?」


必死に頭をたれるサリアは、既に先程までの有能冒険者としての影も形も残っていない。


「あーもう! こうなったら爆発女! ゾンビがこっちに来る前にアンタの魔法で焼き払っちゃいなさい!」


なりふり構ってられないとティズもシオンに命令をするが。


「ごめーん、誘い精霊10発分の魔力反動があるから、あと10分ぐらい魔法使えないの」


シオンは呑気に舌をちょろっと出してそんなことを言っている。


「こんの役立たずどもおおおおおお!」


ティズが叫ぶと同時に、ゾンビたちが教会にまでたどり着き、僕達は間抜けにも自分達でゾンビを教会に招き入れるという愚を冒してしまったのであった。


                    

「サリア! とりあえず人命最優先! 僕と二人でシオンの魔力反動が終わるまで耐え切るよ!」


「分かりました! マスター」


サリアは僕の命令にうなずき、玄関を越えてきたゾンビたちに切りかかる。


一閃一閃は流れるように、しかし触れたゾンビは皆例外なく丸太のように胴体から両断をされていく。 


あれだけの数の敵に触れることもさせずに攻撃を続けられるサリアの技量は神がかっており、彼女がゾンビの前に倒れるイメージは一切湧かない。


しかしあれだけのゾンビを全て食い止めることは出来ず、サリアの剣戟を抜けて僕達へと向かってくるゾンビたちも現れ始める。


「ウイル!」


「分かってる!」


もれたゾンビに向かい、ホークウインドで切りかかる。


「ああああああああああ!」


一閃。


ゾンビの伸ばした腕を切り落とし、返す刃で胴体を切りつけるが。


「あぁあ!?」


その攻撃をものともせず、ゾンビはもう一つの手で僕の顔につかみかかる。


「っだあ!」


その腕を剣の柄で弾き飛ばし、がら空きとなった胴体にもういちど逆袈裟の一撃を見舞う。


「う……あぁ」


ようやく動かなくなったのか、ゾンビはそのまま倒れ伏す。


一体だけならば楽勝であるが、サリアに比べてゾンビの処理スピードが遅すぎる。


「サリア! どれくらいもちそう?」


一体ずつのペースであれば僕だけでも対処は出来るが……。


「くっ申し訳ありませんマスター。 あまりにも数が多すぎます……シオンの魔法が回復するまで侵入を食い止めることは不可能かと!」


こういうときに冷静な判断を取れるサリアはやはり頼もしい。


僕はそう心の中でサリアを賞賛し、同時に命令を送る。


「一旦下がってサリア! ゾンビは一直線に僕達を襲ってくるはずだから、後退しながら戦うよ! そうすれば僕も前に出れる!」


「っ分かりました! が、十二分に気をつけてくださいマスター!」


「分かってる!」


サリアはそういうと大きくバックステップをし、ゾンビの侵入を許す。


死体を踏み越えながらゾンビは一直線に向かい、僕とサリアで防衛ラインを下げながらシオンの魔力反動が終わるのを待つ。


ゾンビが直線的な行動しか取れないことを利用した作戦ではあるが……あそこで無理をしてサリアが倒れるなんて事態になればそれこそ最悪の事態に陥ってしまう。


「ティズとシオンは神父をお願い!」


「分かってるわよ! 言われなくたって!!」


「頼むぞ! 絶対に助かるんだよな! なぁ!?」


「ああ神よ、お助けくださいいいい!」


「うっさい馬鹿神父とその愉快な僧侶共! わめく暇があったら後ろに下がれってのよ!」


「大変だぁねぇティズちん。 がーんばれー」

「アンタは何他人事でくつろいでんのよ馬鹿!?」


ティズはそうキーキーと騒ぎながら、魂の抜けた神父を連れて僕達から少し後ろへ引き摺っていき、それをシオンは呑気に眺めている。 よかった、彼らもまだ余裕がありそうだ。


「ラインを下げますマスター!」


「わかった! 先に下がるよ」


取り漏らしたゾンビを追いかけ、僕は背後からゾンビを斬りつける。


それにあわせてサリアはゾンビの大群を切り払い、防衛ラインを少し下げてくる。


「このペースであれば!」


そう、サリアが口を開いた瞬間。


「ああああああ!」


ゾンビの様子が変わる。


僕達につかみかかってきていたゾンビたちが、一斉に停止をしたのだ。


「とまった……」


しかし、呪いが解かれ、停止したわけではない。 


そこにあるのは明確な意図。 ゾンビたちは何かを考えているかのように左右を首を見回して確認をしている。


「何を考えているかは知らないが! 今の内にラインを上げます! マスター!」



それを好機と、サリアは前方へと進撃を開始するが、その瞬間に僕は嫌な予感を感じ。


「シオン! ティズ! こっちに戻って!」


叫ぶと同時に、ゾンビたちは行動を開始する。


「があああああああああ!」


一体のゾンビの怒号により、ゾンビたちは隊列を組み、そして両端に散開。


そして同時に背後の窓ガラス、裏口が示し合わせたかのように同時に破壊され、一斉にあたりを包囲される。


彼らは群れであることを装い、僕達がこの教会の中央に集まるのを待っていたのだ。


そして、背後からの強襲により、後退させていた人間達を一気に落とす作戦だったのだろう。


「ティズ!」


「無事よ無事! 神父がビビッてすっ転んだおかげで捕まりはしなかったけど!」


「ピンチなのにはかわりないよぉー!? 助けてー!」


背後からの強襲は何とか回避することが出来たが、ゾンビたちの目標は変わらず僧侶や神父たちに向けられていた。


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