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270.ここに罠を張るのはいいですが、いったいこの箱は何につかうのです?

「では、お世話になりました……ジャンヌさん」


「いえ、またいつでも遊びに来てくださいね……それにシオンも、もう音信不通だなんてやめてね」


「うん! わかったよージャンヌ! また来るね!」


にこやかな笑顔を見せながら、シオンはジャンヌに手を振り、僕たちは目的地である襲撃跡地へと向かうことにする。


「何だったら、残っててもいいんだよシオン……トラップイーターがあるから、罠には事欠かないだろうし」


「ううん……またいつでも会えるもの……それに、万が一にもジャンヌに危険が及ぶことが無いように、私がしっかりと頑張らないと!」


「いつになく張り切ってるのはいいんだけれども……張り切りすぎて街を火の海にしないよにねシオン」


「おー! マキナ知ってるぞ! それ、せいきまつっていうんだ! いかれた時代に用こそって、ミユキおねーちゃんが言ってた!」


「聞けば聞く程、僕たちの世界の神様って変わってるよね……」


いかれた時代なんて言葉を子供に教える神様は本当に神様と敬って良い物だろうか……今この僕の考えを神様が覗き見ているのであればぜひともレスポンスをお願いしたいところだが……まぁ、こんなちっぽけな僕の考えなどを覗き込むほど神様も暇ではないのだろう。


特に弁明もレスポンスも来るわけなく、僕たちは他愛のない会話を繰り広げながら、聖王都西側、城門前へと到着する。


城門前は大きな看板や土嚢が置かれており、バリケードの様なものが構築され、その周りには多くの聖騎士団の騎士たちが見張りを行っている。


もし城門が突破された際は、ここを最終防衛ラインとする腹積もりなのだろう、炎熱魔法の魔鉱石や、神聖魔法の込められたタリスマンを射出する大層な投石機の様なものが、バリケードの内側には設置されており、僕たちはそんな異様な臨戦態勢を敷く聖王都の光景に愕然としながらも、近くにいた少し立派な鎧をまとった兵士に声をかけてみる。


「えと……門を抜けて、魔物迎撃用の罠を仕掛けるように依頼をされたものなのですが」


もはやこれだけの戦闘準備を備えているのならば、僕たちは必要ないような気もするが……。


「……お話は聞いております……ピエール様のお客人様ですね……こちらは現在封鎖とされていますが……あなた方は通すようにジョフロア様より仰せつかっております……ウイル様、どうぞお通りください」


「あら、随分と手際のいいことね」


どうやら、僕たちのことはあらかじめジョフロアさんが伝言を頼んでくれていたようで、僕たちは特に警戒をされることもなく、見張りを行っていた騎士団の人に連れられ、僕たちは正門から聖王都の外へと出る……。


と。


そこには大漁のアンデッドの死体と、人の死体が転がっていた。


「なによこれ……ひどいありさまじゃないの」


「うーん……これじゃあアンデッドがまた増えちゃうよー」


シオンとティズは渋い表情をしてその惨状に苦言を呈するが。


その言葉に騎士団員も眉をしかめ。


「……申し訳ございません……何分、連日連夜の襲撃ゆえ……もはや死体安置所もいっぱいいっぱいの状況でございまして……戦場跡地の処理が後手後手に回る結果になってしまっているのです」


「だからって……」


「アンデッドにやられた死体は、蘇りませんので」


僕はそのセリフに苦虫をかみつぶしてしまったかのような不快感が走る。


アンデッドに殺されたものは、呪いにより魔物と化しアンデッドとなるため……クレイドルの力ではもはや蘇生が出来なくなる。


そのため、この戦場で死した者たちは……埋葬をしなければならないわけであるが……。


だからといっても、聖王都と呼ばれる場所にはあまりにも不釣り合いすぎる光景が目前に広がっており、僕たちはやりきれない思いに顔を見合わせる。


「……思ってたよりも深刻……みたいだね」


街はそんな大被害など感じさせないほどにぎわっており、皆が皆不安も恐怖もないように思えたが……。


それもこれも、ピエールさんの采配のおかげなのだろうか……。


何としてでも民の平和を守っている……といえば聞こえがいいが、僕には少しばかり町の人たちの危機感が欠如しすぎのようにも感じる。


「マキナ……ごめん、君はやっぱりシンプソンと……ってあれ?」


マキナを連れてきたのは失敗だったと、僕は気分を悪くしながらそうマキナの方を見やるが。


「……ふーん……こっちは人狼族……こっちは……子供の骨……じゃなくてドワーフか……こっちは……」


マキナは何でもないというふうに頭蓋骨を拾い上げてすでに何かを調べ始めている。


思えば、迷宮の罠を操ってメイズイーターを殺しにかかっていたのだ……今更死体などでも動じるわけもないか……。


「……まぁ、ぐずぐず言っていても仕方ないわ……騎士の人が言う通り、この死体をかたずけてたら次の襲撃が始まっちゃうんだから」


ティズはそう気を取り直し、そんな光景に少し気を落としていた僕たちの周りをひらひらと飛んで鼓舞してくれる。


「そ、そうだよね~! あとでちゃんと、埋葬してあげるから……もうちょっとだけ待っててねー!」


そうシオンは優しく倒れている死体に語りかけると、一つ手を合わせて何か祈りの様な言葉を小さくつぶやいたのち。


「よーし、やるぞー!」


杖で地面に線を描き、なにやら設計図の様なものを作り始める。


「マキナもやーる! マキナもやーる!」


「おーいいよいいよー! 私と一緒にスーパーシオンちゃんバリア―を築こー!」


「やったー! マキナね! マキナね! 飛び出すアームストロング砲やりたい!」


「なんだかわからないけどいいよー!!」


「やったーーー! あ、じゃあじゃあ! 降り注ぐガトリングは!? 百八式仕込みショットガンは!?」


「わーお、もう何が何だかわからないけどとりあえずバッチコーイ!」


「きゃーーー!! やった! やった! クレイドルお姉ちゃんに危険だから人に使っちゃいけませんって言われてたけど! アンデッド相手なら大丈夫だよねー!」


「いいよいいよー!」


……何やら物騒というかとんでもないことが行われるような予感を僕は感じながらも、僕だけがさぼっているわけにもいかないので慌てて僕もシオンとマキナの元へと向かうことにするが。


「…………貴方の無念、必ず晴らします」


その前に僕は、倒れた遺体の前に手を合わせ……そう言葉を添える。


シオンが何を伝えたかはわからないし、司祭じゃないので彼らの魂を鎮める言葉なんてつかえはしないけれども……。


なぜだか僕はその死体たちが、何かを訴えてくるような気がして……。


だから不意に、そんな言葉を死体に投げかけたのだった。


「ウーイールーくーーん! とりあえずメイズイーターでどでかい箱作って――――!」


「……なんか、ろくでもないことが起こりそうな予感がするんだけれど……」


「はやくはやくー! ウイルがいないと始まらないぞー!」


「はいはい……」

ジャンヌの為に張り切っているのか、シオンの表情はいつもよりも真剣そのものであり、僕は嫌な予感を覚えつつも、巨大な箱作りを容認する。


……今回は、この前の反省を活かし、迷宮三階層の、登り階段から下り階段までのルート以外の壁をすべて拝借してきた……。


恐らく、今の保有量であれば恐らくだがこの聖王都の半分を覆いつくすこともできるはずだし、いざとなればここに城を建てることだってできるだろう。


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