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261.聖職者 ピエール


「シンプソン……旧交を温めるのも良いですが、肝心のアンデッドの状況の方はどうなっているのですか?」


シンプソンたちの談笑が収まりそうにないことを察してか、サリアは会話の中に割って入り状況を聞き出す。


「おぉ、そうでしたそうでした……私としたことが……面目ない……ジョフロア」


「かしこまりました、では皆さま……こちらへ」


ピエールはそう申し訳なさそうに頭を掻き、ジョフロアに合図をすると、ジョフロアはこちらにといって僕たちをピエールの部屋の隣にある部屋へと案内する。


そこは簡易な会議室のようで、イスと長机が置いてあり、ガラス張りの机の下には光の魔鉱石が置いてある。


「どうぞおかけください……今わかる情報をお伝えしますので」


僕たちは案内をされるまま、隣の部屋に映ると、ピエールは専用の席に腰を掛け、僕たちもそれぞれ椅子に座っていき、イスに腰かけたのを見計らいジョフロアが何か紙の様なものを広げていく。


それは、このあたりの地図の様であり、中心に描かれた聖都クークラックスの西側の地図には、赤い✖マークが数個記されている。


「……これは?」


「このマークは、アンデッドの襲撃があった場所を指し示しています。 この数日間毎晩のようにアンデッドが壁の西側を中心に襲撃をするのです……その位置はみなばらばらなのですが、しかしこのように必ず西側を襲撃してくるのです」

「ご自慢の聖騎士団で何とかならないのですか? それにここは神の都でしょう……アンデッドにどうして遅れをとることに?」


「……それが、数があまりにも多いのです」


「数が多い?」


僕はその言葉に首をかしげる。


「ええ、聖騎士団も僧侶もまるで意味をなさないほど……数が多く……何とか今までは水際の防衛ができていますが、けが人も犠牲も多く……このままでは外壁が破られるのも時間の問題なのです……昼間の襲撃がないのが、唯一の救いといったところでしょうか」


「リッチーを見た人はいるのですか?」


「はい……物見のものが軍団の奥に確認しています」


「……潜伏先は?」


「つかめていません……リッチーは夜明け前に大軍を引き揚げさせるのですが……その帰る方向は毎回定まっていないのです」


「……なるほど、マスターはどう思われます?」


「なんとも言えないけれども……そんな大量のアンデッドの出どころを知りたいな……カルラは何か分かることは?」


「こ、これだけの情報ではなんとも……」


「だよねぇ……ピエールさん、詳しいお話を聞ける人はいますか? できればアンデッドの残骸もあるといいのだけど」


「……それでしたら、聖騎士団との面会時間を儲けましょう……今夜も襲撃があるでしょうし、連携を図ることも重要になるでしょうしね……残骸の方も、聖騎士団がある程度は保有しているはずです」


「助かります」


「まーたマリオネッターが絡んでたりするかもしれないからねぇ」


「もうあんなレアケースお目にかかることはないとは思うけれども……」


「死体は語ります……保有してる魔力や、かけられていた魔法の痕跡……スケルトン系であればその骨の種類種族年代から、死体の出どころが割り出せます……」


「では、それは私が……かつては食費を稼ぐために、遺跡のトレジャーハントや考古学研究の護衛等もやっていましたからね……しっかりと考古学のスキルも鑑識のスキルに今回は使用することはないでしょうが解剖のスキルも習得しています」


「……あんた、本当に何でもありね」


「それほどでも」


「なんですかー、アンデッドなんて夜にしかわいてこないんですし! いーじゃないですかー! 今から動いたってどうにもならない事ですよ? マスターウイル」


そうして僕たちが、アンデッドとの戦いに向けての話し合いをしている最中、不意にシンプソンが退屈そうな声を上げる。


「まったく、リッチーが活動するのは基本夜だけど、一番活発に動くのは昼間なんだよシンプソン」


「なぬ? そうなのですか? マスターウイル」


「うん、アンデッドを操って夜中に人を襲うという姿が強すぎるせいでみんな知らないことが多いんだけど、そのアンデッドを作るのにだって時間がかかるんだ」


「? リッチーって、死霊術を操り人の死体を操るんじゃないのー?」


シオンは首を傾げ、僕に相問うてくるが、僕は一度首を振る。。


「アンデッドの作り方だって、呪文を唱えればできるものじゃないしね……確かに死霊術で冒険者の死体をアンデッドにするときがあるけど、それはあくまで死んだ人間を一時的に魔力で動かすだけであって、正確にはアンデッドを操ってるわけじゃない。 いくらリッチーが強力な魔力を持っているからといって、魔力だけで魔物を使役しながら魔法でも戦うなんてしていたら、すぐに魔力が足りなくなっちゃうよ」


「……確かに、となるとリッチーが操るアンデッドは全て……」


「そう、じつは僕たちが迷宮とかで見かけるアンデッドなんだ」


「……どこで手に入れてきてるの? 迷宮で現地調達?」


「いや、リッチーは潜伏先を決めるとそこに工房を作る……そこでアンデッドを増やして自分だけの軍隊を作るんだ」


「アンデッドを作る?」


「作り方は後で説明するとして、とりあえずはアンデッドは昼間はアンデッドを作り、夜には外で人を襲う……そういう魔物なんだ、だからこそ、アンデッドが少なくて、アンデッドづくりに専念している昼間にリッチーを倒すのが常套手段でもある」


「……しかし、もう昼は過ぎていますマスター……今日中にかたをつけるのはいささか難しいかと」


「そうだね……とりあえず方針として、今日の襲撃は正面から迎撃して、その後明日にリッチーを叩くっていうのが一番いいかもしれないね」


「おー! つまり私も魔法をぶっ放す機会があるってことだねー!」


「暗殺でしたらお任せください! ウイル君!」


シオンとカルラはまぶしいまでの笑顔でそう物騒なことをいう……。


「それにしても……なんだか、昼間にせっせこ死体やら何やらを集めてる姿を想像すると愛着がわくわね」


そんな二人をよそにティズは何となしにリッチーに対しての感想を漏らす。


と。


「ええ、労働は人間に与えられた尊きものだというのに……その真似事をするなんて本当に小賢しくて笑いがもれますよね、ティズ様。 足先からすりつぶした時の断末魔はさぞ心躍り自然と笑いがこぼれ落ちることになるでしょう」


「「「「!!?」」」」


にこやかな笑顔、天使のような微笑みを浮かべるピエールであったが、その口から悪魔も震えあがるほどのえげつない言葉が漏れる。


シンプソンとジョフロアを除くすべての人間が一斉にピエールへと視線を移す。


「何か?」


「え、いや」


しかし、ピエールは何か問題でもと言いたげに小首をかしげており、僕たちは訳が分からず困惑していると……。


「こういう奴なんです」


そっとシンプソンが呆れたように僕の耳元でそうつぶやく。


「……クレイドル教って、アンタを含めてまともな奴はいないのかしら?」


ティズはため息をつきながらそう漏らし、僕たちはとりあえず聞かなかったことにして話の続きをすることにした。

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