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255.リリムの護衛 リューキとスキルグラップ


「いやーまさか……お前らとまた一緒になるなんてな」


「本当……これも運命なのかもしれないねぇ、運命とは数奇なものだねぇ」


揺れるモハメドのタクシーの中で、ドリーとリューキはそう言い、笑みを零す。


「まさか、リリムの護衛っていうのがあんた達だったなんてね」


その言葉にティズは苦笑を漏らしながらひらひらと僕の頭の上でそうつぶやくと、暇そうにひらりとシオンの頭の上に移動をする。


「おししょー、役立たずだけどついて来て大丈夫なのー?」


「これまた随分と手厳しい……でもねぇシオンさん、私だってそれなりに活躍できるからこそこうして……」


「あぁ、本当はお留守番させようと思ったんだけど、どうしてもついていきたいって泣いて懇願するから仕方なくよ仕方なく」


「あっ!? エリシアさんそれ言わないってお約束したよねぇ!」


「そうだったかしら?」


楽し気に、コントの様なやり取りを続けるドリーとエリシア達に、僕たちは少し笑みを零しながら、リューキのパーティーと向かい合うようにしてお互いに馬車の中で揺られる。


旅行当日、僕たちがリリムに指定された待ち合わせ場所に向かうと、そこにはリューキたちのパーティーとドリーがおり、その後、リリムの護衛を任されたのが彼らであったことを知らされたときは少し驚いたが。


「まぁ、みんなが知り合いで良かったよ。 一緒に来るようにお願いしといてなんだけど、気まずくなっちゃったらどうしようって少し心配してたんだ」


「おー! みんな仲良しか!みんな仲良しはマキナ大好きだぞ!」


リリムは、そんな僕たちの様子にほっとしたような様子を見せてそう笑い、その様子にマキナは嬉しそうにはしゃぐ。


「まぁしかし、彼らがリリムの護衛になるのは、少し考えたら必然的なのかもしれませんね……」


「そうなの?」


「ええ、リリムにヴェリウス高原を超えさせるなんて事態に、トチノキが二流三流の護衛をつけるとも思いません。 クリハバタイ商店ほどの大きさなら、リリムの身の安全の為にS級冒険者を雇うぐらいのことは平然と行うでしょうし……今王都リルガルムにてS級冒険者として名前を挙げているもので、こと旅のスキルを磨き上げているパーティーといえば、世界を転々と旅している転生勇者リューキのパーティーくらいしか私は思いつきませんし、恐らくトチノキも同じ考えだったのでしょう」


「ほへー」


サリアの考察に、僕は素直に関心の声を上げる。


「俺たちってそんなすごい冒険者だったのか?」


「さぁ?」


しかし、そのサリアの評価にリューキたちはいまいちぴんと来ていないらしく。


どこか困った様子でサリアに聞き返す。


「……え、えと。 少なくともリルガルムの冒険者の中では、五本の指に入るパーティーかと」


「あんまり実感わかねえな……S級冒険者って言っても……特にすごい功績を上げたわけじゃねえし……他のパーティーと違って、迷宮攻略に成功したこともないし」


「あれ? そうなんだ」


リューキの言葉に、驚いたような表情をリリムは作り。


「あれー? 確かS級冒険者って、迷宮を最低三つは攻略してないとなれないんじゃなかったっけ」


シオンもその言葉に疑問符を浮かべてリューキたちに問いかける。


「……あー、多分こいつの場合は、アルテルモの戦いの時のが評価されてるのね」


「アルテルモ?」


「え、えと……数年前になんですが……ここよりはるか西の国で、侵略戦争未遂が行われたんです」


「侵略戦争未遂って何よ……」


「文字通り、テルモという国がアルモートという国を占領下に置こうと……武装した兵士魔術師3万人を率いて侵攻をしたのですが……その侵攻はたった一人の人間に阻止されてしまったと言います」


「それがリューキ?」


「は、はい……一応、アルモートの国でもテルモの国でも同じように語り継がれています。

アルモートでは救国の英雄として、テルモでは災厄の象徴として……」


「一人で三万人もの兵士を無力化するなんて……」


「でも、フランクには負けてたけどねー」


「ぐっふ!?」


カルラの説明に無言であったが少しだけ鼻を高くしていたリューキであったが、シオンの悪気など一切もないぶった切りにあい、見事にがっくりと肩を落とす。


「本当にそんなことできるのかしら? ここの脳筋サリアをもってしてだって、三万もの兵士は抑え込んでおけないわよ?」


「さらっと私を脳筋扱いして紹介しないでくださいティズ」


「まぁ、正確には一人じゃなくて三人だけどな……戦ってたのは俺だけだけど……戦場に罠を張ったのはフットだし……エリシアは敵の将軍みたいなのやっつけてたし」


「いやいや……三人でもすごいと思うんだけど」


リリムは謙遜するようにそういうリューキにそっと突っ込みを入れる。


「まぁ、全部が全部こいつのスキルのおかげよね」


「ああ……こと一体多数の局面では圧倒的な力を発揮するからな……この男のスキルは」


「僕はよくわからないんだけど、それでもすごいというのは確かだよぉ」


「スキル?」


「そ、俺のスキル……まぁ百聞は一見に如かずということで……失礼」


そう言うと、リューキは僕の手を取り。


「え?」


「ふむふむふむ、随分とおかしなスキルを持ってんだなウイル」


そんなことを言うと、リューキは一度手を離す。


「お? 握手か? マキナもするか?」


「じゃあお嬢さんは次ということで」


「なるほどー順番こかー」


無邪気にマキナははしゃいでいるが、どうやら今の一瞬で僕は何かをされたらしく、いぶかしげな表情をしながらサリアは何が起こったのかを考察する。


「……今、一体何かしたのでしょうか?」


「魔術的な要素は何もなかったよー? 勿論呪いも」


「ど、毒物の付着……投与、検知できませんでした」


「いや、さすがに毒とかは盛らないとおもうよ……カルラちゃん」


「秘孔をつくスキルによる身体強化とかかしら? ウイル、何か体に変化は?」


「さぁ? 体には特に何も」


結局目立った変化は僕には見られず、サリアは珍しく困ったような可愛らしい表情をして首をかしげる。


「なぁに、とくと見てけ」


そう、困惑する僕たちに対し、リューキは悪戯っぽく微笑むと、そっと手をだして。


「ドラゴンブレス」


そう呟き、手のひらから拳一つ分くらいの炎をはじけさせる。


「あっちゃちゃああ!? ちょっとリューキ! この馬鹿! 私に火の粉が飛んだじゃないの!?」


「あ、わりい……やっぱりスキルだけ手に入れても、練習しないと操作は難しいな」


「髪の毛焦げたんですけど! アークメイジの髪の毛ってすごい大事なものなんですけど!」


「安心しろエリシア、フットのフードの方が致命的なダメージ受けてるから」


「……ならば謝罪の一つでもしたらどうだ……リューキ」


ぎゃーぎゃーと騒ぐリューキのパーティー。


「えと……今のは」


ドラゴンブレスというのは、古代魔法の一種であり、普通の人間が、しかも詠唱を無視して唱えるは恐らくできない……。


つまり、今リューキが放ったドラゴンブレスは……スキルにより放たれたものであるということだ。


僕の持つドラゴンブレスと同じように。


「え、もしかして……今のって僕の」


ありえないことだが、僕はそれしか考えられずに思わずそうつぶやくと、リューキはにやりと口元を釣り上げて笑い。


「ご明察……これこそ、俺が転生するときに、神様、ミユキ・サトナカからもらった

相手のスキルを奪うことができるユニークスキル……スキルグラップだ」


リューキは不敵な笑みを浮かべたのち、アイスエイジを発動し、掌の上に氷で作られた馬の彫刻を作り……僕たちの前に自慢げに披露するのであった。


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