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4000PT突破記念! コールオブチョコレート 恋するリリムとサリア・暗黒の儀式

「ふぅん……ふんふん~」


鼻歌交じりに私は湯煎したチョコレートをかき混ぜ、その後、私ことリリムは一つ一つをお玉にすくい、型にチョコを流し込んでいく。


用意したのは板チョコレート2000個分を溶かしたものと、ハート形の小さなチョコの型。


おたまで丁寧に肩にチョコレートを流し込んだら。


「サヤカちゃん、お願い」


「はいなぁ~」


妖狐のサヤカちゃんに「氷」の魔法を出力を落としてかけてもらい、湯煎したチョコレートを固めてもらう。


そして。


「ココアパウダーを少しまぶして、ホワイトチョコレートで……」


【LOVE】


の文字を書き込んでいく……正直ウイル君以外の人間には書きたくない言葉だけど、店の職場会議で決定したことなので、私は仕方なく次々にチョコレートを仕上げていく。


現在私が行っているのはクリハバタイ商店バレンタインデー企画の商品づくり。


今回のクリハバタイ商店の商戦はバレンタイン戦略であり、金貨一枚分の商品を購入していただいたお客様に対して、私の手作りチョコレートをお渡しするというもの。


果たして私のチョコレートにそれほどの価値があるのかは不明だけど。


まぁそれはそれ、店長の方針なので従うことにする。


「これで最後っと……」


私はそう一つつぶやきながら、最後のチョコレートにホワイトチョコでメッセージを入れ。


「さて、次は梱包梱包!」


次の作業に取り掛かろうと片づけを始める……と。


「リリちゃん、あとはうちらがやっておくから、もう今日は上がってええよー」


そうサヤカはいい、私が手に持っていた梱包用の小さな箱を取り上げる。


「え? 大丈夫だよサヤカ、気を遣わなくても」


「ええのええの、これだけのチョコレート作ったんやし! 箱に詰めるくらいうちらでもできるよ~」


「そうかもしれないけれども」


「やることもあるって言っとったやないの?」


「うぅ……まぁ、確かに、代わってもらえるとすごい助かるんだけど」


「そうやろ? せやから後はうちらに任しておいてな……なに、ちゃあんと店長から残業代もらうから安心してやー……ちょうど新しいベッド欲しいと思ってたところやし」


カラカラと笑いながら、


「ごめんね、お仕事押し付ける形になっちゃって」


「何を仰いますのやら。 人の三倍は働いてるリリちゃんに謝られたら、うちら全員皆総出でリリちゃんに土下座せなあかんよー……」


「それは大げさだよサヤカ……私は、私がやりたいからやってるだけなんだから」 


「仕事が好きなのもええけど、今日と明日は特にだーいじな日なんやろ? 大事な大事な最後の大仕事。なら早く帰らな……ウイル君への……本命ちょこれぃと」


「えっ!? ちょっサヤカ? 知ってたの?」


「狐は鼻が利きますからなぁ……チョコよりも甘い匂いがプンプンするわー」


「もう……か、からかわないでよぉ」


「狐は化かしてなんぼ……ほれ、そういう事や、恋は女の一大事。はよいかんと、他の女豹にウイル君はんなり食べられてまうよー」


にやにやと楽しそうに笑いながら、サヤカはそういい、私は顔を赤くしてお言葉に甘えさせてもらうことにする。


「もー……そういう意地悪いうんだったら、お仕事全部押し付けて帰っちゃうんだからね」


「えぇえぇ、そうしてや……」


梱包用の袋をすでに手に取り、器用に梱包作業を始めているサヤカに私は照れ隠しに悪態をついて見せ。


急いで自宅に戻る準備を開始する。


「ありがとうね、サヤカ……」


「頑張ってなー……リリちゃん」

にこにこと笑うサヤカ。


「ありがとう……頑張るね」


私は聞こえてるかはわからなかったが、準備を終えて部屋を出るときに、そんな友人に一つ感謝の気持ちを述べるのであった。


                    ◇


「さて、マスターが帰ってくるのは明日。 それまでに私たちは、マスターに送るチョコレートを作らなければならないのですが」


「問題は……チョコレートの材料であるこれをどうするかよね」


「そうだねー……」


ティズとシオンの言葉に私は一つうなずきため息を一つ漏らす。


私達が現在いる場所は自宅にあるキッチン。


そして、目の前に座す黄色い実三つを前にして、私たちは首をかしげる。


王都襲撃から復興し、リニューアルオープンを果たした繁栄者の道。


その中でも異国の高級食材を取り扱う名店 ~胡椒と絹~で手に入れた南国から輸入されてきたチョコレートの原料カカオの実。


なぜ、私たちがこうしてカカオの実を前に苦戦を強いられているかというと。


「やっぱり……素材から作るのが、大事だからね、頑張らないといけないわ」


それは、ティズのこの一言から始まった。


初め、湯煎したチョコレートを加工し、マスターへの感謝の想いとしようとした私達だが。


よく考えれば、それはただ出来合いの物を変形させただけであり。


厳密にいえばそれではチョコレートを作って渡したことにはならないという現実である。


そのため、ティズも私もシオンもみな考えを改め、こうしてチョコレートの原料といわれているカカオの実を購入しに来たわけなのだが。


「状況を整理しましょう……カカオは問題なく手に入った……だけど、問題は……これが、チョコレートじゃないということだわ」


「そうだねー……こんな実が……どうやったらチョコレートになるのか、想像もつかないよ~」


「ただ、焼く……とか、煮るとかじゃ……こうはなりません……一体どのような過程を踏むのでしょうか」


「そもそも……色が緑色だわ……」


「こういう時頼りになりそうなガドックは、今日は腰痛でお休みだし」


「リリムっちも~、お仕事お休みだっていうからね~」


「いたとしてもあのケダモノの手は借りないけれどもね……今頃あいつもすんごいチョコレートを作っているはずよ……」


「なんと、私たちも負けてはいられませんよティズ」


「あたりまえよ! 私達はちゃんとウイルの為に、金貨一枚もしたカカオの実を手に入れたんだから、負けるわけないわ!」


「そうだよー! 私もウイル君のお嫁さんとして、まけてられないよー……で、ティズちんこれをどうするんだろう」


振り出しに戻る。


「ふっふっふ、まさに孤軍奮闘という奴ね、でも大丈夫よ、私だって馬鹿じゃないわ」


「おぉ、ティズ、何か名案があるのですか?」


「ええそうよ、このカカオの実、まず色からしてチョコレートの色ではないわ」


「ええ、そうですね」


「そうなら話は簡単よ! この色になるように、調味料を混ぜ込むのよ!」


「おおおぉ!? なるほど!」


「チョコレートは甘い! そして、茶色くなる調味料といえば!」


「こ、コンソメ?」


「そうね、確かに甘いものとしょっぱいものを一緒に食べると甘さが引き立つというわ!チョコレートの原料というぐらいだわ!  すごい甘いはずよ!」


「なるほど! しかしティズ、コンソメは確かに茶色いですが、少し色が足りないかと思われます」


「確かにそうね……深みが、なんか足りないわね」


「あー!? そういえばチョコレートってほのかに香ばしい香りがするよね!」


「確かにそうね……でも、そんな調味料あったかしら」


「コーヒー豆を砕いて混ぜるんじゃないかなー!?」


「なるほど! さすがシオン! アークメイジの閃きはだてじゃないですね!」


「えへへー!」


とりあえず、私はシオンの名案とチョコレートの生成方法をメモに記す。


「じゃあ、材料はコーヒーとコンソメで……でも、果物よね……果物があんなにとろけるとは思えないんだけど

細かく刻んで……何かとろけるものと混ぜ合わせるのでは?


「口の中でとろけるもの……」


「バター?」


「それです! それですシオン! ああいう油分の塊と混ぜることによって、口の中でとろけるようになるのです!」


「さすがアークメイジの閃きね! でもどうする? 家にあるバターはただのバターよ?」


「そうですね、最高の一品を作り上げるのに、バターでは少し物足りないような気もします」


「むぅ……となると」


「同じ油分でも、高級なものの方がいいでしょう」


「男の子だしね、せっかくなら男の子が喜ぶものを入れましょう! ああ見えてウイル、味覚は子供だしね」


「となると~……バターはなんか、弱そうだから」


「弱そう? 確かに、バターじゃ弱そうね、強そうなものがいいわ」


「あ、ラードなんてどうだろー! バターなんかよりもよっぽど口にとろけるし! 強そうだよー! この前ウイル君が高級ラードをたくさん貰ってたから……たぶんまだ残ってるはず―! 高級だから、きっと強いよ!」


「いい案ねシオン! 今日は貴方極限にさえてるわ!?」


「ええ、恐らくスキルに【料理人】が追加されているはずです! さすがですねシオン!」


【シオンのスキルに、毒薬精製が追加された】


シオンの数々の閃きにより、チョコレートの材料を書き終えた私は、一息をおいてその材料を見返してみる。


「材料はこんなものでいいでしょう……とりあえず次は実際に加工作業に移りたいと思うのですが」


「そうね、とりあえずはカカオの実とラード、コンソメとコーヒーパウダーを混ぜ合わせなきゃいけないから……実を切らないと」


「それは私にお任せを」


調理の目途が着いた私は、さっそくカカオの実の一つに包丁を入れて真っ二つに切ってみる。


と。


「何よこれ、種ばっかりで実がほとんどないじゃない……」


「まぁ、高級食材ですし、それも仕方ないでしょう」


「これで金貨一枚なんてぼったくりな気もするけれども……まぁ仕方ないのかもね……」


「まぁ、種が大きいものほど実は美味しいものだよー!」


「それもそうですね、実が少ないと言っても、一人分には十分な量です……とりあえず種は捨ててと」


私はゴミ入れにカカオの種を捨て、調理を再開する。


大切な、マスターへの想いを込めて……。


マスターの幸せそうに微笑む姿を夢想しながら……。


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