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241.リューキとの繋がり


「ドリー……」


少しばかりドリーと呼ばれた魔法使いは考える様な素振りを見せる。


「何か思い出したか?」


「いいえ……ですが、なんだか懐かしいような」


「ようなって何よ……」


「やれやれ……忘却の罠ってのは随分と強力みたいだな……」


「そうだねー……名前聞いたら思い出すかもって少しは期待したんだけどねぇ」


シオンは少し残念そうな表情をするが、リューキたちはその様子に肩を少しすくめると。


「まぁですが、何かの縁です……これから私はドリーと名乗らせていただきますよ」


微笑みながらドリーはそう微笑む。


「おう、そうしろそうしろ……一応聞くが嬢ちゃん、こいつを自分のパーティーで世話するつもりはあるかい?」


一瞬、僕はシオンへと視線を移す……一人ぼっちと自分で言っていたシオンの数少ないつながりであり、別人かもしれないが似ている人間だ……記憶が戻るまでお世話をしてあげたいと言い出すのではないだろうか……そうであれば、僕は快く迎えてあげよう。


そう思ったが。


「ううん! いらない!」


シオンは満面の笑みでその申し出を拒否した。


「本当に私あなたの師匠だったんですか?」


ドリーは少し困惑した顔でそう言い、僕たちもそのシオンの発言に苦笑いを浮かべることしかできない。


「ほ、本当にいいのシオンちゃん……お、お師匠様なんじゃ?」


「だってお師匠、魔法はたくさん使えるけど基本的に弱かったし……忘却の呪文でその数少ない取り柄の魔法も失ってるんじゃ……いらないよ~」


酷い言い草である。


「……なんだかあんたがかわいそうになってきたわね……」


黒い帽子をかぶったエルフの少女は気の毒そうな表情で、なんとも言えない顔をしているドリーの肩を叩き。


「大丈夫だ……記憶が戻ればきっと」


ノームの盗賊も身長が足りないのでそっと腰のあたりに手を当てる。


「急に優しくするの辞めてくれませんかね……余計惨めになりますよ」


「まぁ、じゃあ決まりだな。 足手まといだろうがなんだろうが、拾っちまったからには責任は取らなきゃいけねえからな……お前さんらがいいっていうなら、ドリーの記憶が戻るまでは俺たちがドリーと一緒に行動をすることにする」


「うんうん! よろしくお願いするよー!」


「シオン……貴方って人は、マスター、あまりにも無責任な気もするのですが……」


サリアは少しばかり申し訳なさそうに僕にそう声をかけるが……。


「まぁ、口ではああ憎まれ口をたたいているけれども、リューキはお人よしだから気にしないで……それにほら」


サリアの声はエルフの少女に届いていたらしく、微笑みながら僕たちにそういうと、僕たちにドリーとリューキを見るように促してくる。


「……ちょっと、足手まといって直接言われるのも傷つくんですけどぉ」


「優しくされるとむなしくなるっつったのはお前だろうがドリー! いいか? うちのパーティーは働かざる者食うべからずだ! 記憶が戻るまできっちり働いてもらうからそのつもりでな!」


「ひいいぃ!? ま、また溶岩魔人の魔導コアの荷物持ちさせられるんですかぁ!? あ、あれ本当に重くて!」


「何言ってんだ! あれより重いもん運んでもらうし! いざというときは盾になってもらうからな!」


「盾ぇ!? あっ、ちょっシオンさん! 気が変わりました! そっちに、そっちのパーティーで面倒を見てください!」


「ことわる♪ がんばってねードリー!」


「ということだ……よろしくな、ドリー」


「ひいいいぃ!」



がっちりと細身ながらたくましいその腕に肩を組まれ、青い顔をしてもがくドリー……。


「……ね? リューキったら、すっかりドリーの事気に入っちゃったみたいなのよ……だから、こっちであいつのことは責任をもって面倒を見るわ」


「……あなた方がそういうのでしたら……」


サリアはそう得心が言ったというような表情をした後、そう笑い、一つ頭を下げる。


「何か困ったことがあれば、僕たちも協力します……」


「ええ、私たちも、伝説の騎士とのつながりにもなる……」


「……利害は一致している……よしなに」


ひょっこりといつの間にか現れたノームの男性も、口元をほんの少し緩めて僕たちにそうお辞儀を一つし、カルラに向かい手をだす。


握手を求めているのだろう。


「は、わっ!? こ、こちらこそ! ノームさん!」


それに対し、カルラは丁寧にしゃがんで両手でその手を取り、はにかみながら手を振る。


カルラのこういう、人と触れ合った時のはにかむ笑顔は本当に癒される。


「……可憐……」


どうやらノームもカルラの魅力に気づいたらしく、手を取られたままそんな言葉を漏らしているが……カルラの主としてはその反応はいかんともしがたい。


「か、かれ? えと……カルラです」


「あぁ、いや……すまない……私はフット……カルラさん……もし……」


まだカルラにはそういうのは早い……もし手を出そうとするならばこの右手からメイズイーターの行使も辞さない所存である。


「ふえ?」


というわけで。


「僕からも、よろしくお願いします」


「う、ウイル君……」


僕はカルラを抱き寄せることで手を離させ、片手でカルラを抱きながら、もう片方の手でノームと握手をする。


「……むっ!」


「……あげないからね……」


カルラに惚れるのは勝手だが、まだどこの馬の骨とも知らない人に、うちのカルラはやれない。


なので、呆けて今にも口説き始めそうであったノームにくぎを刺す。


「むむむ……」


「は、はわわ!?」


「ちょっと馬鹿ウイル!? あんた何やってるのよ! こら! おいこら! 私にもしろエロウイル!」


頭の上で何かマスコット的なサムシングがキーキー言っているが、僕は髪を引っ張られても無視をして、肩を抱いたままカルラをノームから引き離し、サリアのもとに戻る……。


「あ、カルラ、もう離れるかい?」


「あ、少しーさむいよーな気がするので―、もう少しこのままで―」


「寒いの? 大丈夫?」


「すいません、ひえしょーなので」


【カルラは、甘え上手の称号を手に入れた】


「こらウイル! 私も寒い! 寒いからなんかあっためて!」


「ドラゴンブレス(小)」


「ちくしょおおぉ!」


「……むぅ」


「あらあら、罪な男の子ね……見た目に反して肉食系じゃない……うちのリューキとは反対ね……でもまぁ、貴方も気が気じゃないんじゃない? サリアさん」


「私は……マスターが選んだお方ならば祝福をするのみです……そういう点では、カルラはお゛に゛あ゛い゛だと思いますが?」


「まずは濁点を取るところから始めないとね……まぁ、お互い男には苦労させられるということで……私はアリシア、アークメイジのアリシアよ」


「サリア……聖騎士のサリアです……」


「なになにー? 何の話―?」


「ちょっとシオンさん!? リュート! リュート返して!」


「なーに呆けてんだよフット……」


リュートをかき鳴らすシオンに、それを半泣き状態で追い回すドリー……。


「なんだか、私たちのパーティーに似てますね、ウイル君……みんな楽しそう」


「そうだね……」

 

集まってきたシオンとドリーを混ぜながら、リューキたちは楽しそうに他愛のない話をして盛り上がる。


「僕たちも混ざろうか」


「はい……」


そんな中に、僕とカルラは笑いあいながら混ざっていき、しばらくの間、僕たちはリューキと楽しい時間を過ごす。


これが、僕と転生勇者リューキとの出会いであり。


この時はまだ僕たちは、彼らと長い付き合いになるとなど……露も思っていなかったのであった。



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