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18.始めてのクエストとオークの巣

次の日。


「あーーー……頭がいだい」


「酔いは醒ませても体内のアルコールは完全に排除できませんからね。仕方ないです」


見事に二日酔いに悩まされながらフラフラと飛ぶティズをつれて、僕とサリアは冒険者の道を歩いていく。 目的地は昨日話していた昼のエルキドゥの酒場だ。


今までギルドというものを知らなかった僕達であったが、エルキドゥの酒場は昼間は冒険者ギルド、夜はギルド兼居酒屋として機能している国公認の機関であるらしく、登録をすれば誰でもクエストを受注することが出来るらしい。


そんなに時間も掛からないというので、早速早朝にエルキドゥの酒場へとギルド登録をすることにした。


「今まで朝にエルキドゥの酒場に入っていく人たちを見てきたけど、ただ朝から飲んだくれてるわけじゃなかったんだね」


エルキドゥの酒場は昼は大仰な明かりも豪勢なお品書きの看板もなく、特に目立つこともないただの建物と姿を変えており、僕はそんな恥ずかしい勘違いを苦笑交じりに漏らすと。


「ういぃ~~~」


「あっ! おいまたウィーヒックの奴が倒れたぞ!? どうするマスター」


「水でもぶっ掛けて迷宮にでも放り込んどけ!」


「はいよ」


ばたばたとあわただしく運ばれていく男の人は、ワインでもぶちまけたのかローブが真っ赤になっていた……酒臭かった。


「まぁ、中にはそういう人もいますけどね」


苦笑を漏らしながらサリアはそういって、何事もなかったかのように酒場の奥、いつもならば酒場のカウンターである場所まで歩いていく。


「久しぶりだな、ガドック」


「おう、なんだ生きてたのかサリア……今まで何してやがったんだ?」


「あれ?」



てっきり酒場のマスターがギルドの運営をしていると思ったら、見たことのない人がカウンターに立っている。


「あぁ、長い昼寝から覚めたところだ。今度ゆっくり教えてあげたい所だが、それよりも、彼等のギルド登録をお願いしたい。紹介しますマスター。このギルドエルキドゥのギルドマスター、ガドックだ」


「おう……昼には見ねえ顔だな……駆け出しか」


「ええ、始めましてガドックさん。ウイルといいます」


「ティズよ」


「冒険者にしちゃちょいと行儀が良すぎるな……まぁいいか。ようこそお二人さん、地獄の沙汰もつながり次第。 ギルド・エルキドゥはお前らみたいな命知らずを歓迎するぜ」


ガドックは、わざわざ腕組みをしてポーズを決めた後、大声でそう歓迎の言葉を述べてくれる。


にっかりと笑った口元、手入れのされていない髭から覗く白い歯がとても素敵だった。


「登録はどうやってすればいいんですか?」


「そんな難しいことは考える必要はねぇさ! ただここに名前を書いて、俺に渡してくれりゃいい……あぁ、それとついでに冒険者であることが分かるものをしっかり提示してくれ」


「国から貰った冒険証で大丈夫ですか?」


「かまわねえ」


そういうとガドックは二枚の羊皮紙と羽ペンを手渡してくれ、僕はそのまま誓約書と書かれたギルド登録用紙に名前を記入し、冒険証を手渡す。


ガドックは二秒ほどその冒険証と登録用紙を見つめると、またもやにっかりと笑って冒険証を返してくれた後、登録用紙を丁寧に新規と書かれた木箱の中に保管する。


豪快そうに見えて意外とそういうところは細かいらしい。


「歓迎するぜ! 新米冒険者よ! あの偏屈サリアに選ばれたくらいだ、お前がアンドリューをぶちのめしてくれるのを心から期待してるぜ!」


どうにもこのノリについていけない僕がいる。


「まっかしときなさいよ! あたし達に掛かればちょちょいのちょいなんだから!」


そしてノリノリなパートナーもいた。


「ふふ、実はなガドック、今日は早速クエストを受注したいと考えているのだが、何かよいクエストは出ていないか? できれば一階層のクエストが受けたいのだが」


「おお! それなら丁度昨日難儀なクエストができちまってな! 誰もやりたがらねえ仕事なもんで頭抱えてたんだ!」


「難儀な仕事?」


「あぁ、最近オークが繁殖期ってこともあって早速迷宮に巣をこさえやがったんだ」


「それなら知ってるわ、近くを通ったから」


「そうか、それなら話が早い……実は昨日そのオークの巣に女冒険者が連れ去られるのを見たって報告があってなぁ……放っておくわけにもいかないからギルドからそのオークの巣の討伐と少女の救出をクエストで出したんだが……いかんせんオークの巣は低レベルの冒険者は難易度が高いと断るし、下層の冒険者は割に合わないと突っぱねちまう……話だけ聞いて依頼まで出して放っておくってのも後味が悪くて困ってたんだが、良ければうけてくれねーか? 報酬はもちろん弾ませてもらうからよ」


「オークの巣に女性が?」


「あぁ、見たって奴が報告に来てな。仲間は殺されたんだろう、誰もいなかったそうだ」


助けを求める女性……助けられるのは僕達しかいないとガドックは言う。


ならば、迷う必要はない。


「このクエスト、受けよう」


僕は深い内容も聞くことなく、二つ返事で答えを出すが、ティズとサリアは呆れるかと思いきや笑みを浮かべて首を縦に振ってくれる。


「アンタならそういうと思ってたわよ。 本当、女が絡むとすぐ首突っ込むんだから」


「マスターのお心のままに……迷宮の果てまで、貴方の剣となり盾となりましょう」


「がーーっはっはっは! 随分ほれ込まれてるな兄ちゃん! うし! ではお前達にオークの巣討伐クエストを一任する! 成功条件はオークの巣の壊滅と目撃情報にあった少女の救出だ! 死体であった場合復活代金はこちらでもとう!」


「さすが、太っ腹だな」


「みすみす金の卵を消失なんざさせねえさ、もちろん、お前達もな!」


そういうと、ガドックは力強くクエスト用紙に赤い受注済みという印鑑を押し、僕達の肩を叩く。


「頼んだぞ!」


                    ◇

クエストを受注しました。


クエスト/オークの巣の殲滅

    

達成条件/オークの巣の殲滅及び囚われた少女の救出(生死問わず)


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