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202. 200話突破記念お風呂回 中編 お風呂に入ろう!

マスターと別れ、私はオフロハイレールをカルラに渡すために一人クレイドル寺院の無駄に長い廊下を歩いていき。


「何を言ってるんでしょう私は……」


自分の先ほどの発言を思い出して後悔し、寺院の壁に頭を打ち付ける。


一度だけではなく、恥ずかしさのあまり何度も何度も打ち付ける。


恥ずかしい……すっごい恥ずかしい……なんですかサリアちゃんポイントって……なんですかおでこでいいのですかって……おでこにもキスしたことのない私が一体何を言ってるのですかバカなのですか私は……というか、口と口でキスなんてしたら……赤ちゃんができてしまうし……。




もしかして私本当にふしだらなことをマスターに言ってしまったのでは!?


あああぁどうしましょう! ふしだらな女だとかマスターに思われたら……。


「サリアちゃんなにしてんの……?」


「しっシオン!?」


気が付くと私の背後にはシオンが立っており、困ったような表情で私を見つめている。


「いつの間に私の背後を取ったのですか?」


「サリアちゃんが頭を押さえながらこの寺院の壁にあちこちクレーターを作っている最中にだよ……なにしてるの?」


私はその言葉に我に返る。


「ええと、そうだ。 マスターから預かったものをカルラに渡そうと思っていたところです」


「そんな単純な目的の為にどうして寺院の壁にクレーターを作っていたのかは甚だ疑問だけど聞かないで置いた方がいいのかな?」


「できればその方向でお願いします」


「それで、その渡すものって?」


「カルラが入浴できるようにするものらしいです」


「へ~! シンプソン気が利くね! カルランも確かにお風呂入りたいって言ってたし」


「おぉ、では気が付いたのですか?」


「サリアちゃんが浴衣の着付けに出てった直後にね~。 今はティズちんのお守りしてるよー」


「普通逆なのでは? 傷が開いてないといいのですが……それであなたは?」


「え、あぁえと……えへへ、ウイル君に少し用事があってー」


「マスターに? あいにくマスターは先に入浴に向かわれてしまいましたよ?」


「えー! ほんとー?」


「ええ……走れば間に合うかもしれませんが」


そう私はシオンに言うと、シオンは少し悩んだような素振りを見せて。


「うーん、まぁ急ぎじゃないしいっかー。 サリアちゃんと一緒にお部屋に戻るよー。

私もお風呂入りたいし―」


「では、一緒にまいりましょうか」


「うん!」


シオンは元気よくうなずくと、私と共に歩き出す。


と。


「……そーだ、サリアちゃん」


「はい?」


「ブリューゲルにつかまった時だけど……どんな感じだった? その、呪いとか」


呪い好きのシオンの知的好奇心なのか、シオンはそう恐る恐る感想を聞いてくる。


「呪われた感想ですか? うーむ」


しかし私はこまってしまう……なぜなら。


「シオンの知的好奇心を満たしてあげたいのはやまやまなのですが、困ったことに感想を述べようにも……私はあの時呪われなかったのですよ」


そう、ブリューゲルの呪いに飲まれた際……私は呪われなかったのだ。


短時間でシオンのナーガラージャに救出されたのが原因なのか、それとも他に理由があるのかは不明だが、私は呪われることなく意識をはっきりとさせたまま、解放された後すぐに剣を握ることができた。


はて、思えばどうしてあの時私は呪われなかったのだろう……。


「そっか……さすがサリアちゃんだね、呪い無効のスキルまで保有してるなんて!」


「呪い無効……いかんせんスキルの数が多すぎて把握しきれていないのですが……まぁきっとそうなんでしょうね」


「そっかー、感想は残念だけどーとりあえずは無事でよかったよー」


シオンはそう安堵したように笑うと、足早に一人カルラのいる客室へと向かう。


「?」


私はそんなシオンに少し疑問を感じながらも、歩く速度を少し上げてついていくのであった。

                       ◇


「あーもう動くんじゃないわよ!」


「いたたたた!? 痛い……痛いですティズさん!」


部屋に戻ると、大騒ぎをしているティズと半泣き状態のカルラがいた。


よく見てみるとティズは櫛を持っており、櫛に髪の毛が引っかかってしまっているようだ。


「何いじめてるんですかティズ」


ティズの暴挙に私はため息をついてそうたしなめるが。


「違うわよ! この子ったら髪の毛の手入れとか全くしてないもんだから、私直々に櫛を通してあげたんだけどね! この通り」


そう手に持った櫛を全力で下にひくティズ。


「いたたたたたたた!? 痛いですぅ!?」


それに半泣き状態のカルラ……腹部を刺し貫かれても痛いとも言わなかった少女がこれだけ悲鳴を上げるのだ……よほどの髪の毛が絡まっていると見える。


まぁ、ティズが下手であるのも原因の一つなのであろうが……。


「ほらね?」


「とりあえずティズが下手なのは置いておくとして」


「アンですってー!?」


「迷宮教会でも迷宮でも……ろくに手入れもしなかったのですね……まぁ私も修行時代はそんな感じでしたが」


「一年三百六十五日迷宮で暮らしてれば仕方のないことねぇ……サキュバスとかどうやってあの美貌保ってるのかしら」


「サキュバスさんみたいな迷宮下層の魔物さんのためにアンドリューさんは温泉とかを作ってあげてるんですよ……有名なのは五階層ですね。 あそこは六階が灼熱フロアなので

泉がちょうどいい温泉になってるんです……魔物さんによってはそこで温泉につかったりするんですよ?」


「へぇ……じゃああんたは?」


「わ、私は隠密機動だったので……潜伏中にシャンプーの香りとか論外ですので」


「確かにね……痛んではいるけど、汚いってわけじゃなさそうだしね……」


「音も香りも姿もなきが如く……それが隠密機動なので」


「まぁしかし、それも今日までです、あなたは晴れて私たちの仲間になったのですから」


「そ……その件に関してはシオンさんから聞きました……ブリューゲルからそんな約束を取り付けるなんて……ほ、本当にウイル君はすごいです」


「そーなのよ! ウイルはすごいの! さいっこうなのよ! アンタも見どころあるじゃない!」


「え、えへへ! 私は本当に幸せ者です」


にこにことはかなげに笑う少女。


なるほど、マスターがあれだけ守ってあげたいとしきりに訴えるのも納得がいく。


「うんうんー! もう隠れることなんて気にしなくていいんだから―! しっかりとおしゃれにしちゃおうよー!」


貴方も特に身だしなみなんて気にしていないでしょう……と私は突っ込みを入れそうになるが、それは飲み込み、私はマスターに頼まれていた本題に移る。


「というわけで、カルラ……シンプソンの許可もいただきましたので、ともにお風呂に入りましょう」


「お風呂?」


そんな唐突な私の発言に、カルラはきょとんとして目を丸くするのであった。

 

                      ◇

「ふ~~……お風呂ってのは本当に人類史上最高の発明だよねぇ」


そう過去の偉人に称賛の言葉を贈り、僕は湯船に肩まで使って疲れをいやす。


クレイドル寺院に設置されている豪華絢爛な温泉は、天然温泉であり様々な効能があるのか? 疲れが見る見るうちに消えていく。


ゆっくり浸かって今日はぐっすり眠れば、明日にはまた迷宮に挑むくらいの体力は回復をするだろう……。

カルラの傷の治りも少し早くなるかもしれない。



そんなことを考えながら、僕はなぜか中央に突き出している岩に背を預けながら僕は両腕を伸ばして伸びをする。


「そういえば……サリアはちゃんとオフロハイレール渡せたのかな?」


ふと岩の陰から顔を出し、木で仕切られた場所を見る。


あの仕切りを挟んだ反対側が、女湯のようだ。


……なんかノゾキアナみたいなものがある気がする……もしかしたら。


僕は少し邪な考えが頭をよぎるがすぐにその考えを打ち消す。


「何を考えているんだ……そもそも、少し時間がかかるってサリアも言っていたじゃないか」


あほな考えを僕は拭い去り、これ以上邪なことを考えるより先に上がってしまおうと決意する。


体もほどほどにあったまってきたし……。


そう思い立ち、立ち上がろうと僕はすると……。


「わーーー! ひっろーい!」


そんな大声が響き渡る。


「シオン、そんなにはしゃぐと転びますよ」


「す、すごい……おっきい……こんなの見たことない……」


「なーに入り口て突っ立ってんのよぼさぼさ! ほらほら入った入った!」


「ぼ、ぼさぼさって、私のことですか!」


「ほかに誰がいるってのよ」


「あ、あだ名なんて初めてです! ありがとうティズ!」


「カルランそこ怒るところだよー?」


「止血帯の調子はどうですか? カルラ」


「えっと……うん、なじむ、実によくなじむよーです!」


「それは良かった、もし入って痛むようならばすぐに言うんですよ? そうすればすぐに……」


「サリアちゃんがシンプソンの首を取ってくるから」


「ひっ……」


「何吹き込んでるんですかシオンは!? 私そんなことしませんからね!」


「どーかしら、獣王素手で投げ飛ばしたんだから、シンプソンの首ぐらい簡単でしょ?」


「ひぃっ!?」


「サリアちゃん、カルラン怯えてるよー?」


「誰のせいですか誰の! ほら、こわくなーい! こわくないですよー」


入ってきたのが誰かなど聞くまでもなく、僕は女性陣が入ってきたことに気が付く。


「……も、もう少し入ってようかな」


特にやましいことなどするつもりはないが……なんだろう、いつも僕がいないところではどんなことを話しているのかが気になり、僕は出来るだけ音を立てないように湯船につかりなおす。


もう少し仕切りの近くに寄ろうかとも思ったが、そんなことをせずとも彼女たちの騒がしい声が風呂中に響き渡る。


陰口とか言われたら……速攻で上がろう。


「ふ、ふあ~~。 すごいわよこのシャンプー! ノンシリコンだって!」


「のんしりこん?」


「ノンシリコンシャンプーはですね、傷んだ髪に良いのですよ……カルラの髪は迷宮暮らしで痛んでいるので、ちょうどいいでしょう」


「私……ぼさぼさ卒業します!」


「ウエーブがかかった癖っ毛もかわいいけどねー……うらやましいよー」


「前髪もちゃんと分けなさいよしっかり、ヘアピンとか持ってないの?」


「お、隠密機動は人相を覚えられては……」


「じゃあこれからは必要ないですね……」


「はっ! そ、そうでした! ヘアピン買わないと!」


「あ、ヘアピンで思い出した! カルラン髪留めとかちゃんと持ってきた?」


「え? 髪?」


「湯船に髪の毛をつけるのは良くないですよ。 あなたは少し短めなので束ねられませんし……髪留めがないとせっかく綺麗に髪を洗っても汚れてしまいます」


「な、なるほどー」


「私余ってるから貸してあげるよー」


「あ、ありがとうございます……」

「背中流しながらシャンプーもしてあげよう! ほらこっちこっちー!」


「ふぁっ!ふわわっ!? ちょっ、シオンさんく、くすぐったいです!」


「こうやってー爪を立てないように撫でるよーに撫でるよーにするんだよー♪」


「あっ……うんっ……そこっあっ……きもちっ……あんっ」


「わー凄―い! このシャンプーダークロータスの香りがするよー!」


「え、本当ですかシオン……おぉ……すごいです」


「すっごい上品な香り……高そうね」


「あっ、ティズちんお鼻についてるよ」


「ぎゃっ!?」


楽しそうな声が響き渡り、キャッキャと騒ぐみんなの声に僕は少し安堵をする。


カルラも無事に打ち解けているようだし、他のみんなもとても楽しそうだ。


僕はそんなみんなの楽しそうな声に満足し、今度こそ出ようと立ち上がると。


「あー……いいお湯加減~! 生き返るわねー」


「ティズ、沈まないように気をつけて」


「はいはい、大丈夫よ、この羽は飾りじゃないんだから」


「あ……あったかいです……」


「沁みませんか?」


「だ、大丈夫です……この止血帯、すごい……本当に……自分の肌みたい……」


「それは良かった……ですが、マスター曰くあくまで止血帯ですので……あまり長居は禁物だそうです」


「わ、わかりました」


「……ねぇねぇ、こっちって男湯だよねー? ウイル君いるかなー?」


そんな恐ろしい言葉が響き、その言葉が何かの聞き違いなのではないかと思案していると、少ししてひょっこりとシオンが仕切りを上ってこちらに顔を出した。


「あ、やっほー」


「きゃああああああ!!」


ふつうは逆だろうと思うのだが、ついつい覗かれた側の僕が叫んだ。


「マスター!? いたんですか!? ちょっ、シオン! だったら降りなさい!」


「え、エッチなのはい、い、いけないと思います!」


「アンタ何やってんのよ爆発娘!恥らいってもん少しは考えなさいよ!?」


「え? だってタオル撒いてるし顔しか出してないよ?」


「男湯覗く行為のこと言ってんのよ!?」


「とりあえず降りなさいシオン!」


不意に、僕の方をまじまじと見つめていたシオンが揺らぎ、同時に騒がしいサリアとシオン、ついでにカルラの声が響きわたる。


どうやら下から足を引っ張られて無理やり降ろされめーそうになっているらしい。


「ちょちょっ! サリアちゃん! そそ、そんなに引っ張ったら―!?」


ガタン……という音が響き渡り、同時に仕切りが音を立てて揺らぎ……。


ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。


「なっ……」


「あっ……」


「ふえっ!?」


「げっ……」


「あいたたた……およ?」


目前には、衣という人を守るものをすべて取り払った、生まれた姿のままの魅惑の女性たち。


魅惑の果実は隠れることをせず、僕は見たことのない世界に足を踏み入れ心臓が張り裂けんばかりに脈打つ……。

湯気でほとんど見えないとはいえ……しかしそこには確かに、全裸の美しい女性たちが立っていたのであった。


「……………きゅう」


僕はあまりの刺激の強さと、長風呂に入りすぎた影響で……目の前が真っ暗になり、水の中に沈む感覚と共に意識も沈ませていくのであった。



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