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200.ひとまず一件落着


「……ヒューイの入れ知恵ですが、お役に立てましたかね?」


ブリューゲルが去ったのち、レオンハルトはそう小さく嘆息すると、舌を小さくのぞかせて僕らにそう問いかける。


「ええ、素晴らしい一手だったよレオンハルトさん……フォースに変わって、心から感謝の言葉を贈ったうえで最高級のマタタビ酒をおごらせてほしい気分だよ」


僕はカルラを抱きしめた状態で、レオンハルトに対してそう考え突く限りの言葉を使って感謝の気持ちを表現する。


「パーフェクトです……」


「――――――!」


「やるじゃないレオンハルト!」


サリアもシオンも同じ感想のようで、サリアは短く、シオンはしゃべれないため身振り手振りでその感謝の気持ちを各々表現し、ティズに至ってはレオンハルトの頭の上に乗っかって鬣を撫でまわしている。


「はっはっは、な、なんだか照れますな! こちらも借りてばかりというわけにはいきませんからね、お役に立てたのであれば光栄です」


褒められて素直にうれしかったのか、レオンハルトは鎧から覗く尻尾をパタパタとあわただしく降って喜びを表現する。


ブリューゲがこの契約だけで完全にカルラをあきらめるとは到底思えないが、すぐにまた僕たちが襲撃される……という事態はこれで避けられただろう……。


色々あった一日であったが……それもこれで終わりであり、僕たちはレオンハルトを囲みながら、とりあえずはカルラの無事を……。


「ちょっとちょっと!! 何終わろうとしてんですか皆さん!」


そう僕たちが勝利の雰囲気に包まれ、モノローグに入ろうとしていたところに、シンプソンが茶々をいれる。


「何よ、今いい所なのよ」


ティズはそう不機嫌そうにレオンハルトの鬣の中からそう苦言を呈すが。


「いやいや、これどうするんですか本当に、寺院の壁も応接室もめちゃくちゃですし! ブリューゲルとあのアンデッドハントに私自身三度殺された挙句に呪いまでかけられたんですよ!?」


「そーですそーです! 神父様大変だったんですよ!」


「クーラさんは無事だったの?」


「バッチリ呪われておりました」


「それは災難だったね」


「生命保険で呪いが解けて助かりましたよ……はぁ、そうじゃなかったら一体何をしていたか……」


「心がきれいになってみんなにお金配って回るようにでもなったんじゃない?」


「おおおおおおおそろしいいいいいい!」


シンプソンは顔を青ざめさせて絶叫を上げ、そんな様子に僕たちは笑い声をあげる。


「はっはっは……まぁしかし、今回の迷宮教会の襲撃で受けた損害は、我ら王国騎士団が負担いたしましょう……壁を壊したのは私ですからね」


「その言葉を聞いて安心しましたよ……はぁ、とんだ厄日です」


シンプソンはそうつぶやいたのち、疲れ果てたのか、襲撃や戦いでボロボロになってしまったソファに腰を掛けて大きく息を吐く。


お金お金と騒ぎ立ててはいるが、昨日と今日、迷宮三階層の攻略に、アンデッドリオールの撃退と、金貨一袋では足りないほどの働きをしてくれた。


僕はそんな彼の評価を心の中で大きく改め、同時に彼が喜ぶだけの報酬を用意することを確定させる。


悪態をつきながらも、最後まで彼が付き合ってくれなかったらカルラを助けることなどできなかった。


「ありがとうね、シンプソン」


「いいですよそんな……お金だけいただければ」


シンプソンはそう疲れたような声で彼らしい言葉を漏らし、気が付けばクーラさんはその隣に座ってワインをシンプソンのグラスに注いでいた。


「……ふっふふ、なかなかに大変だったようですね」


「まぁね……」


「これからはどうするおつもりで?」


「まずは彼女にかけられている呪いを解くよ……そのあとは、彼女を迷宮教会から逃がすつもり……契約があるとはいえ、諦めるとは思えないし」


「なるほど……確かに一理ある発言ですね……となると、アルフからの頼みもあります、王国騎士団も護衛を務めさせていただきますよ……目は多ければ多いほどいいと思いますし」


そういうとレオンハルトは、周りを見回すと、騎士団たちは小さくうなずいていく。


「では、これから、皆様の護衛に一個小隊をローテーションでお送りします……。

これからどこで生活をするつもりですか?」


「呪いが解けるまではこのクレイドル寺院で寝泊まりをする予定だよ」


「では、一日交代で王国騎士団部隊長を含む一個小隊を派遣して、護衛の任に当たらせます……彼らには何かがあったとき私が察知できるようにしてありますので」


「そこまでしていただけるのですか? レオンハルト」


サリアは少し驚いたような表情をして問いかけると、レオンハルトは力強く頷く。


「ええ、伝説の騎士不在の間、皆さんに何かあっては合わせる顔がありませんし……ただ」


「ただ?」


レオンハルトは少し申し訳なさそうにそうつぶやくと。


「その、できればですが、我ら王国騎士団でも……伝説の騎士との握手会を開いていただきたいのですが」


そう提案をしてくる……。


よく見ると全員が全員そわそわしているのがわかる……この国ではすっかりと伝説の騎士は有名人になってしまったようだ。


嬉しい反面、姿がばれる恐れもあるが……しかしそれだけの報酬で、これだけのことをしてくれるというのだ……。

「分かった。 きっとフォースも承諾してくれるはずだよ」


契約の成立にレオンハルトは嬉しそうに尻尾を更に振るうと。


「では、我々はこれで……一番隊の部隊だけを残していきますので……失礼」


忙しい身の上なのか、レオンハルトは重要な話だけを済ませると、悠々と王城へと部下を引き連れて帰っていく。




すっかりと静かとなったクレイドル寺院。


「とりあえず、一件落着かな……」


そんな寺院を僕は一度見つめながら……そうため息をついてとりあえず、カルラが落ち着いて横に成れる場所を探すのであった。


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