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185.アルフVSサリア

薄い紫色の怪しい輝きを放ちながら、ムラマサは大斧を受け止め、アルフは驚いたような表情で目前のサリアを見つめる。


殺気は互いに十二分。


荒々しい猛獣の様な殺気を放つアルフに対し、サリアが見せるのは研ぎ澄まされた刃の様な殺気。


僕は痛む臓器や肋骨の痛みなど忘れ、その殺気に飲み込まれ息を止める。


カルラと最初に出会った時……チンピラに殴られたあの時よりもサリアは怒っている。


口調こそ穏やかだが、僕に微笑みかけたその笑顔も天使そのものであったが。


しかし、サリアから発せられる殺気は、今まで見たこともないほどに荒々しく。


アルフを圧倒している。


「確か、サリアって言ったっけか?」


アルフはそうサリアに対してつぶやくと。


「いかにも……アルフよ、マスターのご友人であるあなたがなぜこのような凶行に及んだのですか? 理由があるならば、私もこの剣を引けるというもの……それ相応の理由の提示を求めます」


ピリピリと、サリアの言葉から漏れる怒りに、隣で聞いている僕の方が緊張してしまう。


丁寧な口調な分、重みが二割増しされているように感じる。


「相変わらずおっかないですねー、サリアさん……」


そんな僕に、シンプソンはいそいそと近づいてきて、僕の傷を治し始める。


ついでに被害が及ばない範囲まで運んでくれてもいいのに……とも思ったが、よくよく考えるとこの二人が争って、迷宮三階層内に安全な場所を見つける方が無理な話なので、僕は一人納得して成り行きを見守る。


というか、サリア一人なのだろうか?


「理由は簡単だ、俺は冒険者としてカルラを、迷宮教会の聖女を連れ戻しに来ただけだ……それをウイルに邪魔された。 だから排除をした、それだけだ」


アルフはサリアに対し、どこに問題がある? とでも言いたそうな表情をしてそうサリアの問いに答える。


しかし。


「なるほど……なれば我がマスターをお守りするために、貴様の命散らされても異論はないな……アルフ!!」


瞬間に、サリアのムラマサがアルフの斧を弾き飛ばす。


「なっ……」


見えない一閃……目で追うことも、その予備動作も認知することができなかった。


ただわかったのは、アルフの刃が弾き飛ばされたという事と、その後に……三度の金属音が響き渡ったという事。


【隠し剣】


見ることはかなわなかったが、サリアはその一瞬で……三度の剣戟をアルフの斧へと放ち


【燕返し!!】


加えてアルフの体に一閃を叩き込もうと刃を振るっていた。


「なっ!?」


アルフは目を見開いたまま、反射的に後ろに飛ぶ。


細身の刀とは思えないほど重厚な風切り音が迷宮に響き、その追撃は空振りをする。


だが、サリアの追撃は終わらず、アルフへ向かって一本の矢のように飛ぶ。


しかし、アルフも呑気していたわけではない。


「ジャイアントグロウス!!」


その言葉を聞いて思い出す。


ジャイアントグロウス、確かスロウリーオールスターズの一人、無限頑強のアルフレッドが所有していた、世界に一人しか持つことの許されない神のスキル、ワールドスキルの名前であり……その力は確か、無限の成長。


そんな昔読んだおとぎ話の一文を思い出し、同時に僕はアルフの体から放たれる威圧感が、先ほどの比ではなくなっていることに気が付く。


あれが……アルフの本気。


そう理解するころには、サリアはアルフの懐に潜りこんでいた。


対するアルフは、いまだに余裕の表情。


当然だ……あれだけの威圧感、無限頑強と呼ばれたそのワールドスキルによる防御能力により……サリアの一撃を防ぎきれると判断したが故だろう。


しかし、レベル14の人間が、レベルが一瞬のうちに計測不能まで上がってしまう化け物にどうやって勝つというのか……その薄皮でさえも鉄板並みの強度があり、おとぎ話の中でも、その体を傷つけたのは、スロウリーオールスターズが一人、剣帝ルーシー。


現在の迷宮一階層の侍、ルーシーズゴーストの全盛期のみであるとされている。


そんな伝説上の英雄……いくらサリアだとしても本気を出されればひとたまりも……。


「黒龍葬送奥義……」


しかし、アルフを斬るために納刀をしたサリアは……悪鬼羅刹も震えて縮むほどの殺気と威圧感を見せる。


「これは……あいつの……!?」


アルフはその一撃を前に顔を青くし……同時にその一撃を受けたことをひどく後悔をしたのを理解する。


その一撃は……アルフを斬れる……。


その場にいた誰もがそのことを理解し。


【獨響!!】


アルフへ放たれた一撃は、そのまま轟音を響かせ迷宮三階層に暴風を巻き起こす。


踏みこんだ左足は迷宮の床を陥没させ、衝撃は嵐となって機械人形の残骸を巻き上げる。


「っ!メイク!」


襲い掛かる機械人形の頭やら足やらの鉄の塊を、僕はメイクで防ぎながら、カルラの部屋へと通じる扉が閉まっていた幸運に心から感謝をする。


しかし。


「あっだだだだあだだだあああだだだだだだだだだだ生命保険あだだだだだだああだだだあああだだだ!?」


シンプソンは直撃だったらしく、悲痛な声が響き渡る。


もう少しメイクを大きく作っていれば……僕はそう後悔しながらも、暴風が止むまで壁に身を隠し。


壁をたたく鉄の塊の音が消えると同時に、恐る恐る壁から顔を覗かせて、結末を見る。


「切るもの問わず……か……この俺様をこうもぶった切るとは……恐れ入ったぜ……」


「ちっ……未熟者」


アルフはサリアに対し称賛の言葉を贈り、サリアは自らの未熟さに舌打ちを漏らす。


結果は引き分け……と言っていいのだろうか?


ムラマサを見ると、獣王の一撃をも防ぎ切ったその名刀はサリアの一撃に耐えることができなかったのか、見るも無残にへし折れており、アルフはと言うと……サリアの一撃を腕で防いだのだろう……右腕がきれいに両断されていた。


サリアの振るった刃は、アルフののど元をしっかりととらえており、腕を斬ったところで刀が折れなければ、アルフの首は斬り落とされていたということを物語っており……。


サリアの一撃を腕一本で防ぎ切ったアルフの体の頑強さをほめるべきか。


代刀とはいえ、リリムの作った刀をこうも簡単にへし折ったサリアの剛腕にあきれるべきかを僕は迷っていると。


「だが、折れたぐらいじゃ止まれねぇんだろ?」


「当然です……まだ刃は残っている……」


片腕のアルフに、剣の折れたサリアは頭が冷えるどころかなおもヒートアップしそうな雰囲気になっており。


僕はこの迷宮三階層の崩壊を覚悟しながら何もできずに目を回しているシンプソンと共に成り行きを見つめていると。



「はいはーーーい! 結果は引き分け~~~! 喧嘩終わり!」


二人の殺気を解きほぐすかのように、一人の幼女の声が嵐の去った迷宮三階層に響き渡り。


同時に迷宮三階層の壁が一斉に起動し……どこからか現れた無数の銃口が、一斉にアルフとサリアを取り囲むのであった。


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