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177.迷子のアルフと試練の中断

「ねぇねぇアルフ!」


「なんだお前、ついてくるのかよ」


「久しぶりーだからー! 二人でお散歩―!」


「あぁそうかい」


「ところでアルフ―、手術室ってどこにあるかわかってるのー?」


「あん? そんなの、この残骸追って行きゃ何とかなるんじゃねぇのか?」


そういうと、アルフはがらんと一つ機械人形の残骸を足で蹴とばすと。


「んーん! 一緒にいたおねーちゃんが、片っ端から機械人形使ってあっちこっちの罠を解除して行っていたから、この残骸をたどっていっても、手術室にはたどり着かないよー?

と言うか、四方八方に散らばってたのに、気づかなかったの?」


「なん……だと? じゃあ仕方ねぇ、マキナ、お前が案内してくれよ」


「えー? 私道わかんないよー?」


ふとマキナ・レプリカは首をかしげて、何を言っているのとアルフにあきれたようにため息を漏らす。


「なにぃ!? おまっ、この階層の管理人だろ!?」


「だってマキナずっと眠ってたもん。 それに、私専用お昼寝ルームなら行先とかも調べられるけど、出てきちゃったから調べようがないよ!」


「なんだとう!?」


「まぁまぁ、それでもメイズイーターが出て行っちゃったらなんとなーくわかるようにはなってるから、ゆっくり気長に探せばいいじゃないのー! きっとすぐ見つかるって……というかアルフ―、迷子になっちゃうのまだ治ってなかったの?」


「うるせぇ、そんなの百年や二百年でおいそれと治ったら苦労しねーっての」 


「あっはは、そっかー! 方向音痴―! 仕方ないからマキナが一緒についていってあげるよー! 少なくとも来たことある道は回避できるから! あれ、マキナすごーい優秀じゃない!? アルフの数倍役に立つよ!」


「あー、そうだな……勝手にそうしてくれ」


からからと笑いながらマキナはそう得意げに胸を張り、同時にアルフの手を取る。


「そうするー!やれやれ……おもりは大変ですなぁ! あはははは!」


「はぁ……」


アルフは得意げに自分を引っ張っていくちんちくりんの少女にため息を一つ漏らし、心の底から自分の方向音痴を呪うのであった。


                    ◇


「迷宮が……とまった?」


カルラの手術が終了するまで、僕は部屋の外、罠の解除された迷宮第三階層にて暇をしていると……。


不意に先ほどまで鳴り響いていた迷宮の駆動音が止まったことに気が付く。


一定時間経過で試練とやらが終了したのか、それとも試練そのものが失敗に終わったのか……はたまた何かほかの要因で試練が一時中断したのか……。


僕はそんな迷宮の変化に一つ首をかしげる……。


と。


「カシャン……カシャン」


「あーやっぱりそうなる?」


どうやら試練が終了したことにより、迷宮三階層に配置されていた魔物はすべて初期配置に戻るらしく……先ほどカルラによって操られ、迷宮の罠解除に一役買ってくれた機械人形がこちらに向かって走ってくる。


「試練のたびにここの機械人形再配備されるのかぁ……面倒だなぁ」


僕はそんなことを呑気に考えながらもホークウインドを抜く。


どちらにせよ、ここの扉を通すわけにはいかないのだ……。

【目標排除……目標排除!】


剣を振りかぶりながら、機械人形は僕に突進を仕掛け、同時に脳天から唐竹割にその腕に握られた大きなファルシオンの様な剣を振るい。


「まぁでも……」


僕はそれをパリイする。

白銀真珠の籠手が一度光り、同時に剣が弾かれ甲高い音を響かせ、パリイの成功を僕に伝え、

機械人形はなすすべも無くその場で体勢を崩す。


機械人形は人間と違って攻撃パターンが決まっており、フェイントも仕掛けてこないので格好のまとなのだ。

【性質変化!】


なるほど、体勢を崩されたら自主的に性質変化を行うようになっているのか……。


僕は少しこの機械人形を作ったものに感心をしながら、液体状になった機械人形に左手を伸ばし。


「メイク」


使えるようになったメイズイーターで液状化した機械人形ごと石の中へと閉じ込める。


「……あれ? そういえば機械人形だから……石のなかに入れても消滅しないのかな?」


アイテムや金貨は石の中に入っていても消滅することはない……ともすれば、機械人形も一応物であるから壊れないのか?


そんな好奇心から、僕はこっそりとメイズイーターで石を破壊してみると。

と。


「……あり?」


予想通り迷宮の壁の中から機械人形が消滅せずに現れるが、動く気配は見せずにばらばらと分解されてその場に崩れ落ちる。


「この機械人形って……一応生物扱いなのかな?」


僕はそんな疑問を一つ浮かべて残骸を拾い集める。


確かシンプソンが、機械人形は素材をドロップしないとか言っていたが……。


「ティズが言ってたけど、せーみつきかいって奴には金が含まれてたような……?」


機械が人間のように動くのだから……それはそれは精密……なような?

少なくとも僕が暮らしていたノスポール村の機械よりはずっと精密動作をすることができるだろう。


辺りを見回せば大量の機械人形が転がっており……防具となっている鉄板を外せば、なにやらコードやら金色のブツブツや、不思議な文様が書かれた板とかが現れる。


これがすべて金だとしたら……。


あれ、ひょっとしたらひょっとして……結構な金の量になるのでは?


きこり時代に教わったから、金の抽出法は一応わかっているし……炉もシオンとメイズイーターが

あれば条件はクリアできそうだ……。


帰りにほかの機械人形の素材も回収しなければ。


「マスターウイル……」


そんなことを考えていると……。 


手術室の扉が開き、中から司祭服を真っ赤に染めたシンプソンが現れた。


「シンプソン、手術は?」


あまり心配はしていなかったため、僕は当然の結果を聞くためにそう軽くシンプソンに問いかけると。


「えぇ、予定通りなんの不測の事態もなく、手術は無事終了でございますよマスターウイル。私に掛かれば縫合手術程度楽勝でございますとも! もしこの手際の良さに感服していただけたのであれば、私の実直な仕事にふさわしい報酬をいただきたいのですがとかなんとか言ってしまったり見たりして……」


「わかった……カルラの容態を確認して報酬を決めるよ」


「いいんですか!?」


「なんだかんだ言って無理やり連れてきちゃったからね……君がいなければカルラの命が危なかったのも事実だし、報酬も渡すという約束だからね……ただその代わり、報酬を渡すのはカルラの完治を見届けてからだよ?」


「分かっております! うっひょー! お金だお金!」


「まったく、相変わらずだね君は……」


大喜びをしながらカルラの血をあちこちに飛び散らせながら喜ぶ神父の姿はまさにスプラッターホラーであり、そんなシンプソンにため息を漏らし、手術室に入る。


「カルラの様子を見てくるから、見張りはよろしくね」


「はい! しかしマスターウイル、カルラ様は今……その、麻酔で眠っていますよ? 手術用の八時間ぐっすりの強力な奴なので……えーと、四捨五入してあと六時間はぐっすりですよ?」


「無事かどうかを確かめるだけだよ……悪いかい?」


その言葉にシンプソンはなぜかほほを赤らめてほっこりとした顔をし。


「そうですか……では、二人きりの時間をお楽しみくださいマスターウイル……ふふふ、いいいですねぇ……春ですねぇ」


「……なんなんだい一体……」


正直気持ち悪い。


「ではでは、邪魔者はこちらでおとなしくしておりますゆえ、お楽しみを……」


「……」


とりあえずシンプソンがおかしいのはいつものことなので、背後でまだいいですねぇ、いいですねぇとつぶやいているシンプソンを無視して、僕はそのまま手術室へ入っていく。


手術室の中は薬品の様な匂いが充満しており、手術台の上には血でぬれた布や、手術を行った器具がおかれていた。


カルラはと言うと、さすがに手術台に放置というわけにはいかないらしく、迷宮の中にあったベッド――入念にクリーンの魔法をかけたのか、ここだけ異様に輝いているようにも見える――の上で横たわっている。


当然のように息はしており、その血色はよい。


布団をかぶせられているため、傷がどうなったかを確認することは出来なかったが……。

それでもシンプソンの手術は大成功に終わったことは、十分に伝わった。


「ひとまずよかった……」


僕は近くにあったイスに腰を掛けて、眠っているカルラの隣に座る……。


「確か、しばらくは麻酔で眠っているんだっけ」


シンプソンの言葉を思い出し、僕はそっと、布団をかけなおしてあげようとベッドの布団に触れると……。


「そ、その……ご、ごめんなさい……起きてます」


そんな声が手術室に響き。

同時にカルラがおずおずとこちらを上目づかいで見つめているカルラと視線が交差するのであった。


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