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176.スーパーシオンちゃんバリア

「だーるーまーさーんがーこーろーんーだ!!」


やけに子供じみた詠唱呪文を唱えると同時に、シオンは炎熱魔法ではなく、召喚魔法をら発動する。


「この魔法陣は.....一度記録した状態を保存し、任意の時に、その状態を召喚する。 第十一階位魔法 倍増の蔵」


ブリューゲルは冷静にその魔法を分析し、同時に口元を緩める。


「ここになにがあったのかは知りませんが、その魔法には決定的な弱点がある。

まず質量制限があること、そして、魔力までは保存ができないということ、これで保存ができる物はせいぜい衣服や食料くらい。

迷宮最下層付近の備えとしては優秀ですが、この状況で一体なにができるというのでしょおおおおかあああ?」


煽り立てるブリューゲルは、ニヤリと一歩先へと歩みより。


「足止めくらいはできるんじゃないかなー?」

シオンはいつもの通り、杖で地面を叩き、魔法を放つ。


「んんんんんんんんんんん????」


同時に、あたり一帯に糸の様なものが召喚され、ブリューゲル率いる迷宮教会を取り囲むように、そして家を守るかのように半径十メートルの大きさ分の……文字通り巨大な糸の結界が……あたりに張り巡らされる。


「これは……一体」


いつの間にこんなものを、という疑問を浮かべて私はシオンにそう問いかけると、シオンは嬉しそうな表情をしたのち。


「これこそが、ウイル君からの依頼で作成した対泥棒さん撃退結界! スーパーシオンちゃんバリアーだよ!」


名前が究極にダサい。


だがいまは有事のため私はそこを突っ込むのはやめておく。


「ださっ」


せっかく飲み込んだというのにティズが直球でそうつぶやいてしまった。


「ダサくないもん! ウイル君だってシオンらしい名前だねって喜んでくれたもん!!」


マスター......お優しい。


「まぁそれは置いておいて、なんですかこれは?」


「見ての通り蜘蛛の糸を張り巡らせた結界だよ!」


「いや、まぁそうなのですが……」


私はそう言って口ごもる……この糸、おそらくはマスターと二人で結界を作っていたのでマスターの蜘蛛の糸で作られた結界なのだろうが……いくら丈夫だとは言え、この程度の結界では……。


「たかがこんな糸をあたり一帯に張り巡らせたところで! 私のラビに対する愛は! 信仰は! 止めることなどできませんよおおおおぉ!? そして今のこの私たちに対する行動は明らかな敵対行動! 神に対する反逆! 今この時をもってあなた方を襲うことは聖戦となりました! ラビに魂を捧げる同志たちよ! 迷える子羊たちよ! 聖戦に刃を取り! 祝福に涙をしながら戦いを開始しなさああああぁい!」


『ラビ万歳!ラビ万歳! ラビ万歳! ラビ万歳 ラビバン……』


怒号と共に、迷宮教会の信者たちは張り巡らされた糸に触れ、その糸を切断せんとするが……。


『ぼごがあぁ!』


糸に触れた瞬間、迷宮教会の人間たちは突如として現れた火球の魔法により吹き飛ばされ、煙を上げてピクリとも動かなくなる……あの様子では死んではいないだろうが、大やけどであろう。

ぶすぶすとなにかが焦げたような臭いが漂う。


第一階位魔法であの威力ということは、まず間違いなくシオンの魔法だろう。


「なっ」


自らの傍らを通り抜けていった火球に、吹き飛ばされていった信者たちの姿を見て、ブリューゲルと私たちはようやくこの結界の意味を理解し、息を飲む。


「まさか……この結界とは……糸を張り巡らせたバリケードではなく」


「ご明察! 糸だけじゃなく、この辺り一帯に私特製魔法陣を仕込ませてもらったよ! 触れればファイアーボールが撃ち込まれるように設定してあるから!触れただけで黒焦げファイアー!そんなファイアーボールの結界を、家を含む半径十メートルに張り巡らせたのー! さらにここのファイアーボールは、 触れたもののみを焼くよう指定しているからね、防ぐことも逃げることもできないから、気を付けるよーに!」


シオンはトネリコの杖を振りかざし、シオンは悪戯っぽくそう宣言をする。


「触れればファイアーボールですか……だったら!」


瞬間、ブリューゲルは一瞬うずくまり、背中から無数の呪いを振りまく……獣王と戦った時に見せたあのまがまがしい呪いだ。


忍の放つ不可視の呪いとは違い見る事ができる分脅威は薄いが獣王を退ける威力は変わらない。


「呪いならば話は別でしょう! 呪いに質量は【ない】ですからああねええぇ!」


【ク・リトルリトル!!】


しかし。

シオンは不敵に笑う。


「このシオンにとって、呪いとはかけがえのないお友達……だから無駄かもしれなくても、ありえないとののしられようとも、私はまず、先に、何においても呪いがあることを想定する……それが私、シオンなの! だから、それを引っ込めないと……ってあり?」


「はったりなど、私には通用しませんのですよおおおおおおおお!」


シオンが止めるのを聞かずに、ブリューゲルは触手を最大限まで召喚し、蜘蛛の糸を盛大に揺らしながら呪いを振りまき私達へ攻撃を仕掛けるが。


「あぼばがばあがぼぼごげぇ!?」


当然のことながら結界を盛大に揺らしたのち、ブリューゲルはあえなく罠にかかり無数のファイアーボールをその身に一心に受ける。


「司祭様―――!?」


「あ、あわわわわわ!? そんなつもりじゃなかったんだけど……どどど、どうしようサリアちゃん!? ティズちん!?」


まさかの展開にシオンは慌てふためく……。



「正真正銘の馬鹿ね……ほっときましょう……死んでないみたいだし、こいつらはここに置いておけばいいわよ……」


「そうですね……」


ティズは辛辣な言葉をブリューゲルに投げかけ、私もその狂信者たちをこのままに、迷宮へと向かうことにする。


「えっ、えっ……本当にいいの? なんかすごい私達どうすればいいの? みたいな顔してこっち見てるよー狂信者さんたち」


「放っておきなさい……そんなことよりも、今はウイルが優先なんだから!


「かなり有用な結界ですね、使い方によってはこうして相手を捕縛することもできる」


「ほ、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、本当に置いて行っちゃって大丈夫なのかな?」


「いいのよ、少しは頭冷やせばいいんだわ……シオン、これって私達にもファイアーボール飛んでくるの?」


「ううん、私達には飛んでこないようになってはいるけど」


「じゃあ、こんなやつら放って、さっさとウイルの救出に行くわよ」


そういうとティズと私は結界の外へと歩いていき、迷宮へと歩を進める。


焦げた司祭に、立ち尽くしの狂信者たち……。


「あ、あの……朝になったら自然とそれ消えるから―、も、もう襲ってきちゃダメだよー」


そんな狂信者たちを気の毒に思ったのか……シオンは狂信者たちにそう告げると……ひょこひょことティズの後に続いて、マスターのいる迷宮三階層へ、マスターの救助に向かうのであった。


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