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171.機械人形式罠解除術

「手伝うって……また無茶する気じゃないだろうね!」


ホークウインドで、性質を変えながら奇怪な攻撃を繰り出す機械人形の攻撃をいなしつつ、僕はカルラにそう問う。


こうして運びながら戦っているだけでも、カルラには負担がかかっているのだ、これ以上負担がかかるようなことをさせるのはいくらピンチと言えども許可は出来ない。


しかし。


「大丈夫です、体には負担がかかりませんから」

カルラはそう僕の質問に返す。


聞きようによっては体以外では負担がかかると言っているようにも聞こえるが……。


「本当?」


「約束します……それに、ウイル君を信じていますから!」


カルラのその言葉に僕は少し考えたのち。


「しょうがない、やっちゃって、カルラ!」


カルラの協力にゴーサインを出す。


「はいっ!」


それにカルラは嬉しそうな表情で返答をすると、瞼を閉じ。


【……こい】


同時に体から呪いの触手を放出し、機械兵士を絡めとる。


【危険判断!性質変化!】


【私の呪いは侵食性……逃げることは出来ません!】


カルラとは異なる何かの声をカルラの口から響かせながら、その触手は目前の獲物をそのまま侵食し。


【ば、ばか………な】


停止させる。


「……っぷは! 侵食成功です!」


大きく息を吐き、カルラは少し身を乗り出すと、僕の腕の中で僕を見上げてそう結果を報告する。


「えーと、一体何が起こったの?」


とりあえず状況を理解できていない僕は、カルラに何があったのかの説明を求めると、カルラは一つうなずいて。


「ええ、この機械人形の主導権を掌握しました」


そうさらに混乱するようなセリフを言ってきた。


「……掌握?」


「はい、わ、私に備わっているラビの呪いは、人、物の主導権を奪うことがで、できまひゅ。せせ、生物に使えばその生物をじ、自在に操ることができ、こ、このような人形であれば……強制的に主従関係を終了させ……わ、私が主人にな、なり替わることもできるんです」


「へぇ、でもそれって魔力とか消費するんじゃ」


「ら、ラビの呪いから力を得ているので……わ、私にかかる魔力コストはゼロ……た、ただ、多用しすぎると、ら、ラビの人格に、の、乗っ取られるんです」


あぁなるほど、王都襲撃時に見せたあの表情や言葉は……ラビの人格だったのか。


違和感どころの話ではなかったから疑問に感じていたけれど、これで納得だ。


「って、かなり君に負担かかるじゃないか其れ」


「だ、大丈夫……です」


「なんで?」


「う、ウイル君が傍にいるから……」


そういわれて僕はなるほどと納得をする。


メイズイーターの力でラビの呪いを鎮静化できるのはカルラも先の出来事で理解したという事か……僕がこうしてカルラに触れている限り、ラビがカルラの意思に反して姿を現せば、すぐさま僕はラビを喰らいつくす。


この前は触手の一部に触れただけであったが、それだけでも丸太のように太かった触手がえぐれるように大きく喰らわれた、この密着状態で表に出てくればどうなるか……ラビの人格もそれを重々承知しているのだろう。 


僕がこうしている間は、カルラの意思でしかラビの呪いは動かないということか。


「なるほどね、頭いいねカルラ。 こうしていれば確かにラビも悪さは出来ないよ」


「あれ? ……え? あれ? そういう意味じゃ」


「? 違うの?」


「あ、え、えと、いや……はい、そういう意味です!」


「?」


なにやら歯切れの悪いカルラに僕は疑問符を浮かべ、その理由を問おうかとも考えたのだが。


「ちょっと何呑気してるんですかあああぁ!?」


「あ、やっべ」


依然としてシンプソンのいる場所からはモンスターハウスの警報がひたすらになり続け、その音を頼りに奥から機械兵士がやって来て、さらには続けざまに僕たちの周りにも機械兵士が召喚されていく。


どれも先ほどの奴らと似たような形であり、僕は少し戸惑いながらも。


「カルラ……これ全部いけるの?」


そう恐る恐るカルラに問うも。

「もちろん……です」


意外にも返ってきたのはなんとも頼もしいセリフであり。


【ク・リトルリトル!!】


どこかで聞いたことのあるような技名と共に、カルラは僕の周りにいたすべての機械兵士に呪いを振りまく。


【ががっ??! あ……ががかっ】


機械になぜ呪いが侵食するのかはわからないが、とりあえず呪いの力により、機械兵士は皆カルラの支配下に堕ちる。


「少し遠いけど、シンプソンは助けてあげられないの?」


先ほどから遠距離射撃による攻撃を、必至になってダンスを踊るように回避し続けるが、そのたびにモンスターハウスのトラップを起動させてしまうというなんとも面白くもかわいそうな事態に陥っているシンプソンを指さして僕はそう問うと。


「この触手にも射程距離があって……これだけ離れてると届かないです」


めちゃくちゃに走り回ったせいで、シンプソンはかなり遠い距離にいる。

シフトチェンジの罠がある場所までなら安全に僕たちも行くことができるが、シンプソンがどのルートでどうやってあのモンスターハウスまでたどり着いたのか――しかも途中でゴッドハンドによって吹き飛ばされている――分からない以上、うかつにシンプソンには近づけない。


最悪死んでも死なないからおとりにしてゆっくり安全ルートを探すというのでもいいのだが。


これ以上警報が鳴らされ続けるのも面倒であるという理由と、人としてさすがにそれはアウトだと感じたので僕はカルラにどうやってシンプソンを助けに行くかと相談を持ち替けけようとし……。


ふと隣にいた機械兵士に目を向ける。


数にしてすでに15体。 


シンプソンがモンスターハウスの罠を起動させるたびに現れる機械兵士は、カルラの力によって次々と支配下に堕ちていっている。


この分だといくらでも出てきそうだ。


「カルラ、その機械兵士を液状化させて罠潜り抜けさせてさ、シンプソンをこっちまで連れてこられないかな」


先ほどの液体化するスキルを使えば罠をすり抜けてシンプソンのもとまで行くことができるはずだ。


しかし。


「ご、ごめんなさい、この呪い……す、スキルは、使えなくなっちゃうから……罠にかかったら、こ、壊れちゃいます」


カルラは申し訳なさそうに沿う現実を告げる。


となると。


「そうか、じゃあ壊れてもいいから、この機械兵士全部使って、シンプソンまでの道の罠を解除しちゃおうか」


「へ? あ、そっか! さすがウイル君!」


僕の提案にカルラは一瞬理解ができなかったのかきょとんとした表情を浮かべた後に、目からうろこが落ちたように手をポンと打つ。


魔物の討伐と同時に罠の解除もできて一石二鳥だ。


数秒に一体のペースだが、モンスターハウスの罠でいくらでも出てくるのであれば、シンプソンの元への安全ルートくらいは見つけられるはずだ、あの様子じゃシンプソンも時間がかかるだろうし、どうやら罠のど真ん中にシンプソンは陣取っているらしく、機械兵士も遠距離攻撃しか仕掛けてきていない……。


「カルラ、とりあえずシフトチェンジの罠の前から、機械兵士を派遣していくんだ」


「は、はいい!」

僕はそう言って機械兵士を引き連れながら、シフトチェンジの罠があった場所一歩前までやってくると、カルラはそのまま機械兵士を操り、シンプソンまでの道の捜索を開始させる。


一斉にかけていく14体の機械人形は散らばるように迷宮をかけていき、そのほとんどが弓矢や串刺し張り、爆発床に高圧電線の罠により破壊されていく。

「やっぱり罠が多いな……」


「で、でも一体だけ! わ、罠を抜けました!」


だが、道全てが罠というわけはなく、残った一人の機械兵士は罠の山を抜けてシンプソンのもとまでかけていき、シンプソンがよけた機械兵士の流れ弾によりその動きを止める。


あのままシンプソンを回収できればよかったのだが、そうそう思い通りに事が運ばないのは世の常であり。


「カルラ、少し危ないかもしれないけど大丈夫?」


「ええ、この呪い……少しだけなら盾の効果もあるので」


「そっか、じゃあ行くよ!」


「は、はい!」


僕はカルラに一言断りを入れて危険地帯へと踏み込んでいく。


十五体の機械兵士が作り上げてくれたシンプソンへの道。


流れ弾が少しばかり不安要素であるが、僕の【回避性能】とカルラの呪いを今は信じるしかない……。


僕は一つ深呼吸をして、機械兵士の残骸を踏み越えてシンプソンの元へと駆ける。


「シンプソン! 今助ける!」



「まま! マスター――――ウイルううううううぅ!? は、早く助けて! も、息切れて……限界です! し、死ぬ! 金貨十枚また消える!」


出来れば助けに行くまでの間、シンプソンが遠距離攻撃を肉壁として受け続けてくれれば回収も楽なのだが、さすがにそれは鬼畜が過ぎるのでのどまで出かかったのを飲み込む。


「っと!?」


そんな余計なことを考えていると、僕の眉間を弓矢の様なものが掠る……シンプソンが回避した機械人形の攻撃であろう。


近づくにつれて、その本数は増えていき、次第にその量に僕は対応しながら前進することが難しくなってくる。


と。


「しまっ」


僕は矢を回避した後、足元に転がった機械兵士の腕につまずき体制を崩す。


「あ、危ない!」


不意にカルラは僕の眼前に走る弓矢を触手で弾き飛ばす。


「ありがとうカルラ……」


「いえ……」


僕は矢をかわしながら、カルラを見ずに礼をすると、カルラはそれに小さくそう答える。


短い会話であったが、カルラからの信頼を感じた。


「あああ、マスターウイル! 信じてました!私信じてました! さあ早く助けてください!」


シンプソンの都合の良い発言に僕は一つため息を漏らし、少し離れたところで歩みを止める。


近すぎても敵の攻撃が集中しかねないからだ。


「……カルラ、行けそうかい?」


「ええ……任せてください」


普段自身がない分、こう自信満々にカルラに発言をされるとなんとも頼もしい。


「じゃあ、やっちゃえ、カルラ!」


だからこそ僕は、心なしか楽しそうなカルラの背中をそう押すと。


「は、はい! 行きますよ!」


一斉にカルラの体から呪いが噴き出す。


僕は一瞬ラビの人格が現れたのかと身構えるが、しかしカルラは僕の方を見て微笑む。


その優しい微笑みが、彼女が間違いなくカルラだということを物語っていた。


【ザ・ダンウィッチ・ホラー!】


先ほどとは異なる、波の様な呪いがカルラから漏れ出し、一斉にシンプソンと一緒に

モンスターハウスの罠により集まった機械兵士をすべて飲み込んだ。


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