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13.サリアの装備

さて、晴れてサリアがパーティーメンバーに加わった所で、サリアを丸腰で迷宮に向かわせるわけにも行かないということになり、デザートが出なくてぐずるティズをなだめたあとに、僕たちはサリアの防具をそろえるためにクリハバタイ商店へと向かう。


「へいらっしゃい、て、お前さんはウイルって言ったか? この前はリリムの奴がすまなかったな」


中に入ると、リリムさんは丁度外出中のようで代わりにトチノキ店長が店番をしていた。


「いえ。僕達も気付かなかったし、おかげでいい装備が整えられて助かりました」


「そういってもらえると助かるぜ。で、今日は何が必要なんだ?」


「ええと、彼女用の武器と防具をそろえたいんですけれども、見繕ってもらえますか?」


「んん?」


そういうと、トチノキさんは僕の隣に立っているサリアを見る。


「久しぶりになるのかな? トチノキ」


「あっ!? お前、サリアじゃねえか! 今までどこほっつき歩いてたんだ?」


どうやら知り合いだったようで、店長は死人でも見るかのように驚いている。


まぁ、実際昨日まで死んでいたんだけど。


「迷宮で寝過ごしてしまってな……」


「ったく、心配かけやがって無茶ばっかするからだ、その様子じゃあの装備も全部なくしたか?」


「あぁ、もうしわけないが。 まだ残っているだろうか?」


「あったりめえだろ、俺は約束を守らねえやつと嘘つきが一番嫌いなんだ、ばっちりしっかり、保管してあるよ」


店長はやれやれとため息をつきながら、椅子から立ち上がる。


「おーい、ミルク!!」

「はーいてんちょ~ なんですか~?」


出てきたのはミルクさんというアルバイトの店員さんであり、白と黒のまだらのエプロンをつけている。 どこかおっとりしている店員さんで、―しかも巨乳だ― リリムさんと同じくこのクリハバタイ商店の看板娘の一人である。


「少しばかり店番を頼む!」


「はいな~」



パタパタと上階からあわただしい音が響き、―ゆれてる―それが聞こえると同時に店長はカウンターの入り口を開けて中に入るように手招きをする。


「……ついてこい」


「いつもすまないな」


どうやらサリアは何度か入ったことがあるらしく、店長の後についていき、僕とティズはその後におっかなびっくり付いていく。


店の裏手は倉庫のようになっていて、店長は暗いその部屋のランタンに火を灯すと、オレンジ色の明かりが部屋を照らし出し、同時に白銀であろう鎧や剣が黄金色に輝きを放つ。


「ええと、ここは?」


「昔の話さ……死んだ冒険者が丸裸で帰ってきたときのために、あらかじめある程度の装備やものを預かるって商売をしてたのさ……まぁ、戻ってくる奴なんて殆どいなかったからやめちまったけどな……売るわけにもいかねえし、倉庫代を取ろうにも客は帰ってこねえ、売り物にするわけにもいかねえしでほとほと困ってたんだよ」


「へぇ……」


「確か預けていたのは、私の装備と、魔道書だったか?」


「それと防護のネックレスだ」


「あぁそうだった……まさかまたこれを装備することになろうとは。そなえあれば憂いなしとはこのことだな」


うんうんとサリアはうなずき、店長はがさがさと埃をかぶった品物の中からサリアの持ち物を探している。


「もう預からないからな!」


「分かっているよ。トチノキ、待っていてくれて感謝する」


「けっ」


悪態をつきながら、店長はぶっきらぼうに見つけ出した装備一式をサリアに渡し、体に付いたほこりを払いながら部屋を出て行き、僕達も後に続く。


「では早速」



そういうとサリアはクリーンの魔法を唱えながら店の試着室に入って行き、中で着替えを始めだした。


どうやらいつものことらしく、カウンターに座っていた店長は一度その様子を横目で見やるだけで、特に何も言わずに識別の仕事を再開させる。

装備を見ていても良かったけど、特にすることもないので僕達はサリアが防具を装備するまで外で待っていることにした。


「お待たせしましたマスター」


待つこと数分。 

女性の身支度は長いものだと教わっていたけれども、そんなこともなくサリアは店から出てくる。


クレイドル教会の聖衣の上から装備された白銀のミスリルのプレートメイルに腰当、その腰にはロングソードやブロードソードよりも少し長めで細身の剣がさされており、その首元には青く光る宝石が埋め込まれたネックレスがぶら下がっていた。


どこからどうみても立派な聖騎士であり、その精悍な出で立ちに、僕は心を奪われてほうけてしまう。


「な、何か変でしょうかマスター?」


「え!? ううん!そんなことないよ! す、すっごいにあってる!?」


「そうですか、それは安心しました……あまり異性受けする人間ではないもので……少し不安だったのですが。マスターに喜んでもらえているようで幸いです」


嘘だ……こんな綺麗で上品な人が異性受けをしないんだったらティズなんて……。


「何かしら? ウイル?」


「な、なんでもないよティズ!」


にこりと頭に青筋を浮かべてティズが僕のほうをみやる。


怖かった。


「……さて、これで私の装備も整った。 迷宮に挑戦することが出来ますよ、マスター」


まぶしい笑顔を浮かべ、サリアはそう高々と宣言する。


こうして、僕は始めての仲間を得て、僕達の冒険が今始まったのだ。

 

               ◇

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