144.ステータスオープン
「ステータス!」
ティズは赤ら顔のまま呪文を詠唱し、ステータスの魔法を唱える。
いつも通り浮き上がるステータスを、そのまま羊皮紙に移しこみ。
ティズは瞳を輝かせながらその羊皮紙をみる。
いつもと違うことがあるとすれば、今日取り出されたステータスの羊皮紙は三枚分であるということだろう。
テーブルの上に置いてある羊皮紙に各人のステータスが刻み込まれ、僕たちは全員覗き込むように羊皮紙を見る……と。
名前 シオン 年齢? 種族 人間? 職業 アークメイジ LV 11
筋力 7 状態 正常
生命力 6
敏捷 18 使用可能魔法
信仰心 3 第十一階位までの魔法すべて
知力 18 第十二階位魔法 火炎の壁
運 16 第十三階位魔法 メルトウエイブ
保有神聖魔法 なし
保有スキル
New【絶大な魔力】
炎武 / 炎の理/炎熱超増強+/ 魔法ダメージ半減/ 呪い耐性/ 穢れ/呪禁/呪術解析/
へ〜んしん/逃げ足/魔力吸収/魔力活性/集中/操槍術/時間停止無効/速力強化/身躱しの加護/
魔力拡散/詠唱破棄LV5/連続詠唱/物理耐性/身躱し/魔眼/洞察力/物理演算/魔力演算/偉大な魔力/尊大な魔力/
現在の称号 色々とおかしい
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「あら、爆発娘よかったわね、レベル上がって……しかもなんかスキルが三つもついているわよ?」
ふと気づいたのか、ティズがそう言葉を漏らす。
「ほんとだー!? あ、生命力も上がってる! わーい! やったー!」
羊皮紙を確認してみると、確かにシオンのステータスに、アークメイジレベル11と刻み込まれている。
以前まで空欄であった使用可能魔法欄もしっかりと埋まっており、シオンは鼻高々に胸を張る。
「……良くも悪くも予想通りって感じですね」
まだ魔力が上がるのか……という突っ込みは置いておこう。
「常識ってスキルはいつ覚えるのよアンタ、魔力よりもそっち習得しなさいよ」」
「ひどい!」
ティズの酷評にシオンはかわいらしくむくれ、生命力が一上がることの重要性を語り始めるが、まぁ当然僕たちは次の羊皮紙に目を向ける。
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名前 サリア 年齢秘密 種族 エルフ 職業 聖騎士 LV 14
筋力 18 状態 魔力欠乏
生命力 18
敏捷 18 使用可能魔法 なし
信仰心 18
知力 18
運 1
保有神聖魔法 第三階位まで全て
保有スキル 表示しきれません。
New! 【守護者】【石の中耐性】【得るもの問わず+】【魔力回復+】【聖騎士の心】
【武闘家の心】【限界突破】
現在の称号 筋肉エルフ
「おや、次のは私ですね……おお、レベルが上がっていますね」
「化け物ここに極まれりってところね……何よこのスキルの増え方」
「最近はなんかこのスキルが欲しいなと思うと勝手に習得しているようになっていますからね……恐らく先の忍との戦いで増えたものがほとんどでしょう」
「何その化け物発言、本当にあんた魔法覚えてどうするのよ」
「というかちゃっかり石の中耐性を取得しているあたりサリアの化け物具合がうかがえるよ」
なんだろう、いしのなかに飛ばしてももう死亡しなくなったってことだろうか?
下手をすると迷宮の壁さえも破壊してしまいそうだ。
「あんたこんなに強くなって何するつもりなのよ、世界征服?」
「それもいいかもしれませんね」
呆れたようにティズはそう軽口をたたくが、サリアは同じく軽口を返し、嬉しそうに羊皮紙を見つめる。
「減ってしまった生命力もいい感じに元通りですね……。 ただ、筋肉エルフという称号がいささか抗議を申し立てたいところではありますが」
「出ちゃったもんはしょうがないでしょうに、私が決めているわけじゃないんだから」
「まぁ、そうですが……」
「サリアちゃんの最近の行動を見てるとそれしか当てはまらないよー」
「ぐっ」
シオンの言葉にサリアは少し悔しそうな表情をするが、何も反論できないところを見るとやはりどこかで自覚はしていたようだ。
「と、とりあえず、マスターのステータスを見てみましょう!
あれだけの戦績を収めたのです! きっと華々しい成長を遂げていることでしょう!」
「サリア、お願いだからハードル上げないで」
そういって僕は残された最後の羊皮紙を広げる。 と。
名前 ウイル 年齢秘密 種族 人間 職業 戦士 LV 6
筋力 15 状態 正常
生命力 12
敏捷 13 使用可能魔法 なし
信仰心 3
知力 14
運 21
保有神聖魔法 なし
保有スキル New!【芸術】【軽業】【剛力】【頑強】【状態異状耐性・強】【疾走】
【蜘蛛の糸】【子宝】【火と氷】【隠密】【見切り】【回避性能】
メイズイーターlv3/繁殖力/逃走/消滅/パリイ
戦技・消滅の一撃
「おおおおおおおおお! 二つも、レベルが二つも上がっているティズ!」
僕はその現実に喜び浮かれ。
「さすがにあの大乱戦のなか戦い続けたとあって、スキルの増え方が尋常じゃないわね!いやーよかったよかった……まぁ運についてはもうなにも言わないわ」
「わーすごーい! おめでとーウイルクーン! 蜘蛛の糸って手から糸でも出せるようになるのかなー?」
「ちょっとやってみようか」
恐らく、蜘蛛の糸とはヒュージスパイダーとアラクネ―のスキルだから言葉通りのものなのだろうと考えながら、僕は心の中で「蜘蛛の糸」の発動を念じる。
と。
「おお~~~!」
手の甲から、蜘蛛の糸が射出され天井に張り付く。
「すごいすごーい!」
シオンは本当に蜘蛛の糸が出てきたことに驚いたのか、飛び跳ねて興奮している。
まぁ、世界広しと言えどもこんな奇天烈なスキルを保有しているのは僕ぐらいだろう。
随分と遠いところまで来てしまったものだ……。
そんな感想に浸りながら、とりあえず強度を僕は調べるために引っ張ってみると。
「お、おお! 意外と、強度が高い」
粘着力もかなり優れており、引っ張っても糸はびくともせず、束ねられた糸の一つも切れる様子はなく、天井に張り付いた部分も剥がれ落ちる気配を見せない。
これならぶら下がっても一切問題なさそうだし、色々と使えるかもしれない。
「素晴らしいですねマスター……この強靭さ、私でもなかなかちぎれないでしょう」
サリアは出された糸に触れながら、そんな感想を抱く。
サリアがちぎれないとなると相当な強度だ……。
「解除」
僕は満足し、頭の中で糸を切るイメージをすると、最初からつながりなどなかったかのように糸が手の平から切れ。
「消えろ」
残されて天井からぶら下がっていた糸も、幻だったかのように塵となって消えていく。
「しまうのも出すのも驚くほど簡単……随分といいもの手に入れたわねウイル」
そうティズは僕の頭の上に止まり、僕はそんなティズの嬉しそうな姿に苦笑を漏らし、再度羊皮紙に視線を戻す。
「ふむ……芸術と軽業がおそらくはフランクより奪ったスキルでしょうね……おおむねそのスキルのもとの持ち主はわかりますが……これは何でしょうか?」
そうやって浮かれている中、サリアは一つのスキルを指さして首をかしげる。
その指の先に書かれている文字は【火と氷】
一見矛盾する二つだが、火と氷合わせて一つのスキルというから謎が深まる。
これ以上に使用用途の不明なスキルも珍しい
「とりあえず使ってみりゃわかんじゃないの?」
「そうだね」
まぁ、スキルだし使用制限もないので、僕は軽い気持ちでスキルを試す。
火と氷というほどだ、両方いっぺんに使用することもできるだろうし、片方だけというのも可能だろう。
僕はそんなことを考えながら、とりあえず。
「氷……」
氷のスキルのみを使用するために片手を前に伸ばし、心の中でよくわからないけれども【氷】を発動してみる……。
【アイスエイジ……】 何かがどこかでそうつぶやいた気がした。




