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112.神父シンプソンvsアンデッド

王都・錬金術広場

「ちょっと……」


「聞いてないですよ」


「なんでこのあほ神父と一緒なのよおおおぉ!」 

「なんでティズさんと一緒なんですかああああ!?」



薬品とポーションのにおい、そして鉄と愉快な爆発の音が毎日のように響き渡る

、ハーフリングとノームの錬金術広場。


そう歌われる過去の技術科学と魔法を融合した町は、今日はお休み。ロバート王生誕祭に町中の人間が参加してしまっているため、愉快な音は響かず、代わりに甲高い妖精特有のキーキー声と、野太いおっさんの悲鳴に近い情けない声が響き渡り、襲撃に備えた騎士たちはうるさいなぁという感想とともに騒ぎ立てる助っ人を見やる。


クレイドル寺院リルガルム支部最高責任者、神父シンプソン・V・クライトス。

通称守銭奴神父。


王都襲撃の際にレベル七であるシンプソンの力は必ず助けになると伝説の騎士が助力を仰ぎ、この戦いに参列させたという話であるが。


「騙された!! 聞いてないですよ! 確かに、確かに仲間が一緒ではありますがそうじゃないでしょ!? 連れてくるならシオンさんかサリアさんでしょう!? 足りない!化け物度が足りないです! 化け物プリーズ!」


「あによ! それはこっちのセリフだってのよあほ神父! なんだってあほ神父と一緒に仲良く心中しなきゃいけないのよ馬鹿―!」


不安だ……。


だれもがそう感じ取り、不穏な空気が広場内に漂い始め。


【高度な魔力の流れを検出! 魔法陣が展開されます! 気を付けて!】


連絡用水晶から声が聞こえ、騎士たちは敵の襲来に備えて武器を各々構える。


防具や武器がこすれる金属音が響き渡り、同時に魔法陣が展開される。


「目視確認! 魔法陣確認!」


浮き上がる魔法陣、その膨大な魔力は騎士たちでさえも魔力の奔流が感じられるほど強大であり、 行使される魔法の異常さと危険性を知るには十分なものであった。


「ひるむなぁ! 敵の襲撃に備えよ!」


第四部隊長はそう部下たちに命令を下し、陣形を整え襲撃に備え。

緊張した面持ちで作戦の遂行を開始する。


「第四クレイドル寺院部隊! 行きます!」


構えを取る騎士たちの背後から、僧侶部隊は魔法を展開し【サモンブレイク】の詠唱を開始する。


【僧侶を止めろ!】


【オオオオオオ!】


「ぎゃああ!来た来た!」

「やってるの神父じゃないよ! 私関係ないですよ!!」


当然のように潜んでいた魔物たちは、サモンブレイクの発動を阻止するために攻撃を仕掛けるが。


「阻止せよ!」


「はっ!」


少数の魔物と騎士団が衝突し、魔物たちは騎士団にあっさりと制圧される。


「敵勢力沈黙! 敵影なし!」


「警戒態勢解除! クレイドル部隊! お願いします!」


「発動開始!! 第四部隊サモンブレイク発動まであと 3……」


「な~んか部下たちが軍のノリに悪ノリはじめてますね……あんな連携したことないですよ私たち」


「なんであんたはのんきに見てんのよ!? アンタの出番でしょ!いかなくていいの!?」


「ああーもう私はいいんですよ、使えないんですよ! 察してください!」


本当になにしに来たんだろうこの二人。


「2……1! 発動! 今!」


【サモンブレイク!】


魔法の成功により、召喚陣が破壊される。


「第四部隊、召喚陣の破壊に成功! 繰り返す、作戦成功! 目標消失(ロスト)!」


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


歓声に会場は包まれ、騎士団たちは勝利の雄たけびを上げる。


「あれ? なんか終わっちゃったみたいですよ」


「え? そうなの?」


結局何もしなかった二人は、仲良くきょとんとした顔で作戦の完了を見つめており、

騎士団たちはそんなふたりの存在意義に疑問を感じながらも、勝利に雄たけびを上げていたが。


【目標再発! 新たな召喚陣が出現しました! 場所は未定!】


通信用魔鉱石に新たな通信が入り、騎士団たちに絶望の色が宿る。


「隊長!召喚陣! 目視できません!」


「目標不明! 繰り返す、目標不明! 召喚陣の場所の特定を求む!」


【魔力検知、目前……皆様の目の前……来ます!!】


「全軍! 警戒態勢! 妨害不可、召喚陣の存在を確認できないため、第三プランに移行する! 陣形を保て!」


見えない召喚陣に対し、騎士団は動揺しながらも、ある程度は想定していた事態に剣と盾を構えて備える。


先ほどと同じ魔力の奔流……その激しさに加え見えない恐怖が騎士団を襲うと同時に……呪いのような冷たいささやきが、騎士団員たちの心をむしばみ。


【あああああああああああああああああああああああああああああああ!!】


召喚陣独特の紫色の閃光が走り、目前に千を超えるアンデッドの大群が現れる。


ざわりと騎士団の瞳に恐怖の色が宿る。


当然だ、他の戦場であるならば、仮に殺されたとしても復活の魔法によって生き返れる可能性がある。 しかし、それがアンデッドとなると話は変わる。


アンデッドは知っての通り殺された人間をアンデッドに変貌させる能力が存在する。


つまり、この戦いで死ねば、復活することは叶わないということであり、恐怖の色が騎士団たちの瞳に映る。


当然だ、かまれても傷を負わされてもアウト……そんな存在を前にして平常心を保てる人間などそういない…。


しかも。


「冒険者ギルド遊撃手からの報告です! 、アンデッドの大群の中に、エルダーリッチと思しき影が! 指揮を執っている者と思われます!」


「え、エルダーリッチだと!?」


団員の報告に、第四部隊長は驚愕に息をのむ。


ただでさえ千を超えるアンデッドなど前代未聞の恐ろしい事態であるにも関わらず、その士気をエルダーリッチが取り、群ではなく軍で攻めてきているのだ。


エルダーリッチは第八階層の魔物……単身で挑むにも討伐困難な相手を……この大群の中から探し出し……倒す。


「不可能だ」


兵士たちは突撃を仕掛ける前より戦意を喪失する。


アンデッドの大群も、エルダーリッチの存在も、たかが騎士団に防ぎきることは不可能であり、騎士団は目前の障害に絶望を抱く。


敗北必至……そんな始まる前から決まっていた結末に第四部隊長は絶望と焦燥を覚えるが。


「あれ? これもしかして私いけるんじゃないですか?」


そんな中で神父シンプソンだけは、能天気に希望を描いていた。


「ぎゃあああああ! なんかできるならあんた何とかしなさいよ!」

迫りくるアンデッドの集団、と騎士団は衝突し、数人があっという間にアンデッドと化していく。

士気も連携も最低値……すでに勝利を信じられなくなった騎士団は、アンデッドの群れに死の行軍を開始する。


「ふふっふふふふふ!」


そんな中、神父は騎士団が戦っているのをよそに、笑いをこらえ、魔物をせん滅する。


「不浄なるものよ! 闇の眷属よ、我は大神の代弁者! 神の名のもとにそなたらに安らかなる眠りと鉄槌を下す!!」


「んなっ!?」


騎士団たちは戦いのさなかに吐き出された魔法に驚きを隠せずそう声を漏らす。


当然だ、先ほどまで役立たずだと思っていた人間が、強大な奇跡の発動により、大気を震わせているのだ……。


「なっ!?」


神父は詠唱を終えると手をかざし、目前のアンデッド集団をその中に納め……


魔法を発動する!!。


【ターン! アンデッドぉ!!】


瞬間、騎士団に襲い掛かってきて言ったアンデッドの大群の前方半分が文字通り倒れ……

神父シンプソンはアンドリューの軍隊をたった一つの奇跡の行使で半壊させた。


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