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プロローグ

「あーあ、やっぱりそうなるんだ。つまんないなぁ。」

一人の天使が眼下の人間達の様子を見ながら、つまらなそうにそうぼやいた。

「何言ってるのさ?最高の結末じゃないか!」

いつの間にか天使の隣に現れた男は、天使とは対照的に満足そうに頷いている。

「いいかい?タブリス。多くの人が望んでるからこそ、それはお約束となるんだ。つまりそれは人々の望みであり、歓びを与えることができるんだよ。ほら、彼等もすれ違いの後に結ばれて、とっても幸せそうだ。」

タブリスと呼ばれた彼女はなおも不満げに彼等を見下ろしている。

「そうかなぁ?見てるこっちとしては結末が分かりすぎてつまんない。まるで最初の一話見ただけで最終回が分かっちゃうドラマだね。すれ違いもお前らわざとだろってくらいお約束通りだし。」

そんな素っ気ないタブリスの返事にも、男は楽しげだ。

「タブリスはひねくれてるね。」

「ユピテル様が素直過ぎるだけですー。こう何百年も同じことの繰り返しだと、たまには違う結末にならないかなって気分にもなってこない?流石に見飽きたっていうか…」

タブリスの言葉を聞いて、彼、ユピテルは少し考えて口を開いた。

「じゃあ、キミが直接体験してみるかい?」

「いいの?!」

「いいよ。タブリスもお約束の幸せを感じておいで。」

ユピテルの言葉にタブリスは嬉しそうに笑ったが、良いことを思い付いたとすぐにその笑顔を挑発的なものに変えた。

「申し訳ないけど、私はお約束通りの行動をとるつもりはないから。ユピテル様のことも楽しませてあげるよ。」

一方ユピテルは呆れ顔だ。

「神である僕がそれを望まないんだから、そんなことできるわけないでしょ?―キミが楽しそうなのは嬉しいけど、そばに居ないのは寂しいから早く帰って来てね。」

馬鹿にしたような言葉の後に向けられたのは、突然の甘い言葉と、まるで愛しいものを見るような目。

タブリスは思わず赤くなってしまったが、すぐにはっとした。

「そっ…そそっ、そんな言葉にはのらないからね!…ホントに帰って来て欲しければせいぜい引っ掻き回させて楽しませてよ。」

「それじゃタブリスがお約束の良さが解らないじゃない。」

タブリスとしては、ユピテルが本当に一緒に居たいと思ってくれているか確かめたかったのが半分、素直に楽しませてほしかったのが半分の言葉だったのだが、全く伝わらなかったらしくあっさり却下された。

実はこれらの一連の流れもある意味少女漫画のお約束と言えるのだが、タブリスは気づいていない。

「まぁいいや。折角だし楽しんできまーす!」

「いってらっしゃい。」

元気に旅立ったタブリスをユピテルは笑顔で見送った。

「…早く帰って来てね、愛しいタブリス。」

そんなユピテルの小さな呟きは、もちろんタブリスには届かない。

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