Stage59:2063/01/26/23:46:15【-0000:13:45】
レイモンドのかけ声と共に、戦闘は再開された。
俺を含めた剣士と一部の魔法使いは、後方に現れたインフェルスへと向かう。
同時に銃撃も再開されたけど、そっちも魔法特化の魔法使いが最上級魔法を間髪を置かずに連射をしているから、崩れるのは時間の問題だ。
SE組の人達も、一部が魔法攻撃に混じって援護しているから、あっちは大丈夫だろう。
問題があるとすれば、
「こっちか!」
最初の銃撃戦で、こっちもそれなりに人数が減っている。
SE組と端末近くのインフェルスに魔法攻撃している人をのぞけば、こっちの方がやや人数が少ない。しかも向こうは一気に蹴りを付けるたいらしく、更に十数人追加してきやがった。
そこはもう、技術と度胸でカバーするしかない。
「はぁッ!」
隙の少ないブラストスラッシャーを接触状態でレイモンドに放つも、上手い具合にバックジャンプして威力を殺されてしまった。
そのレイモンドと入れ替わるように、二人の剣士が俺に斬りかかってくる。
「邪魔だぁぁあああああああああ!」
移動補助の魔法は、まだ続いている。
二人の間に身体をねじ込み、片方は腕を斬り落とし、もう片方には顔面にかかとをぶちこんでやった。
リアルな痛みフィールドバックに悲鳴を上げるけど、そんなものは俺の耳に入らない。
「ダンナーシュティーツ!」
蒼白い雷光をまき散らし、レイモンドに強烈な突きを放つ。
「ん~~! やるではないか、速水瑛太くん!」
でもそれも、上手い具合に側面に反らされた。
くそっ、なんつう反応速度だよ。こっちは移動補助魔法を使ってるってのに。
急制動、反転して、回し蹴り。顔面狙いと見せかけて、どてっ腹に一発!
「スケラー!」
「っつぅぅ……!?」
その直前で防御力強化魔法。ステータスはカンストしてるはずなのに。
じぃぃんと足首に鈍い痛みが広がる。
「……アンビレルッ」
痛みを堪えて、反動ダメージ回復魔法を唱えつつ、わずかにバックステップしてまた斬りかかる。
「いったい、どんな目的があって、こんな事」
「だ~からさぁ、言っているではないか。まやかしの世界である現実を捨て、真なる楽園たる仮想世界へ適応した、情報生命体への進化。我々は、その手助けをしているだぁけだ」
斬り結んで弾いて、邪魔に入ってきた一人を魔法で打ち抜き、そこを突いてきたレイモンドの刺突を横に飛んでかわす。
「今回は上手くよけたね。ネットへの適応が、以前より上がっているようだ」
「元からだよ!」
後頭部を狙って足を振り抜いたけど、またギリギリでかわされてしまった。
後ろに目でも付いてんのかよ、コイツは。
「新人類って、その為に今まで何人殺したんだよ!」
「違ぁぁああああああああああああああう!! 殺してなど断じていない! あれは導いただけだ、それが分からぬから貴様は罪深いのだよ、速水瑛太くぅぅぅんッ!!」
激しく雷光を放つ双剣が、無造作に振るわれた。
ギリギリでかわしたけど、放電した電気のダメージでHPがっ。
想像はしてたけど、こいつらもステータスいじってやがる。
「レシナルトッ!」
回復魔法で、一気に全快。
くぅぅ、加速の負担が……。全身が引きつりそう。
「アンビレルッ!」
いったん加速を解き、反動ダメージを回復。
でもその間に、さっきまで見なかった装備のやつが三人。
ちっ、新しい戦力投入かよ。視界の端に、集まっていくポリゴンの欠片が見える。
もちろん、敵味方通して散っていくポリゴンも。
ただ、みんな上位のプレイヤーだけある。こっちの数も少しずつ減ってるけど、向こうの方が減っていく数は多い。
◇23:48:08◇
まだ二分しか経ってないのに、時間が長く感じる。
一人目は振り下ろす剣を弾きつつ腹部に手刀。悶絶してるそいつを、二人目に向かってタックルで弾き飛ばし、三人目はサイドステップで回避しながら膝蹴り。
「後ろがおるすだぞ~~~っ!」
しまっ、三人に気を取られてる間に!?
「ブラストフィンガー!」
その刃を、蒼髪蒼眼のアバターが横から弾き飛ばした。
白い炎のライトエフェクトに、目がくらみそうになる。
「シャイニング・フレア」
続けて近距離で、指向性の爆発が起こる。
「ぬぅぅぅうううううんッ!!」
「先輩、大丈夫ですか!?」
「咲希」
「先輩の在る所、私在りですから」
「う~ん、今のは効いたよ」
回復魔法でHPを全快にして、レイモンドが現れる。
反動ダメージを回復する魔法は使わないのか、コイツ。
「君はぁ…………眞鍋咲希くんだね」
「個人情報保護法違反ですよ。ゲス野郎」
「君かぁ。さっき外と連絡をとっていたのは。おかげで、さっきからユニコーンスタジオの構造情報が、ものすごい攻撃受けてるんだぞ~? もっともぅ~、管理してるサーバーが違うから、ここは大丈夫なんだけどねぇ」
ったく、演説を垂れてる間に次々と……!!
「咲希」
「はい!」
今度は八人かよ。
まぁ、下手くそばっかり集めたってっ!
「メニス・ジャッジメント!!」
瞬殺だけどな。
八人の先頭めがけて、咲希が頭上から光の柱降を降らせる。直撃を受けたプレイヤーのHPが、一気に七割近くも減った。
そいつの胸に、思いっ切りエンシェントブレードを突き刺す。妙に生々しい感触はしたけど、プレイヤーがポリゴンになって散ったせいて、呆気ない手応えだけが残った。
次は左右から挟み込むように二人が迫ってきた。でも遅い。遅すぎる。
そんなんで、俺に追いつけると思うなよ。
「アレスク」
移動補助魔法を唱え、体を回転させながら片方の剣を蹴り、進路をもう一人へと向けさせた。
「あぐわぁあああ!?」
「うっ、うわぁああ!?」
「ヴォーパル……」
片方の剣がもう片方の腹に刺さり、痛みに悲鳴を挙げ、自分の行為に動揺している。
お前ら、本当はVRゲームした事ないだろ。
「ボルテッカー!!」
体の動かし方が、雑すぎるんだよ。
爆発みたいな雷撃を纏い、鮮烈な突きを見舞ってやった。
更にもう一発の魔法を、ポリゴンすら消し飛ぶ勢いでぶちかましてやる。
「シャイニング・ジャベリン!」
動きの止まった俺を狙おうとしていた魔法使い三人を、すでに横に回り込んでいた咲希が、最上位の光の槍を放って蹴散らす。
第一斉射でゴミほど残ったHPも、第二斉射で跡形も残らず消え去った。
さすがに一瞬で六人もやられたせいで、残りの二人はひるんでいる。
逃がすかよ、カルト集団。
「ブーステッドザンバー!」
「ライトニングフィンガー!」
俺の超重量の一撃と、魔法をまとった咲希の掌打。一瞬で半分以上のHPが溶け、行動不能になった。
「咲希、お前はSEの人達の方を。もう時間もないけど、向こうも残り少ない。先輩と合流して、一気に蹴散らせ」
「……わかりました。先輩も、気を付けて」
端末攻略に向かう咲希を、見送る事はできない。
◇23:50:39◇
どこのマッドハンドだよって言いたくなるくらい、無尽蔵に敵アバターが増えていく。こっちは時間がないってのに。
侵攻を防げてはいるけど、これじゃあ今にも抜かれてしまう。
飛びかかってくる二人の剣をかわし、足を払って同時に腹にエンシェントブレードを突き立て、もう片方は武器を持っている方の手首を手刀で打ってから顎を蹴り上げた。
悶絶中の所を更に雷の矢で射抜き、インフェルスのプレイヤーはポリゴンとなって消失する。
「速水!」
「速水くん!」
「よかった、二人とも生き残ってたんだな」
二人の無事を確認して、状況も忘れてついついほっとしちゃった。
魔法で牽制しつつ、HPとMPバーに目をやる。
よし、HPバーは満タン。MPバーもなをだかんだでまだまだ七割方残ってる。
「お前、よくこの数相手にやれるよな」
「慣れだよ、慣れ。前やった格闘ゲームで、百体のNPC倒す百人組み手とかあったから、人数ならまだいける」
でも、これ以上増えるとさすがにキツいな。柏木も三枝さんも、明らかに疲労してる。
他を見渡しても、残ってるメンバーは最強プレイヤーの人達と二〇人やそこらの三〇人弱。
一人が五人や十人や、それ以上を同時に相手している。さすがだな、上位ランカー。
でも俺も、
「ブラスターブレイダー!」
人の事言えないか。
必殺技名を叫びながら、エンシェントブレードを真横に振るう。刃先から伸びた爆風の刃が、飛びかかってきていた二人をまとめて薙ぎ払った。
その時だ。空間に突然、ノイズみたいなものが走ったのは。
『あーあー、ただいまマイクのテスト中。おーい、咲希ちゃーん、聞こえておるか? おじーちゃんじゃよー』
え、なんでここでマナベグループの会長が?
『ユニコーンスタジオのネット空間から、半分以上コントロールを奪ってやったからな。咲希ちゃんの今居る空間に接続しようとしておった不届き者共がおったんで、新規の接続は全て切らせた』
おぉ、会長ナイス!
「ちぃ、マナベ会長めぇ、余計な真似を」
『とにかく外の事は気にせず、頑張るんじゃぞ! お爺ちゃんも頑張って、咲希ちゃん達をログアウトさせてみるからな!』
ぶつって……。乱暴な切り方でもしたのかよ。今ので耳が……。
でも、それはそれとして、
「もうこれ以上は、増えないみたいだな」
「それなら、なんとかなるかもね」
「二人ともスゲーな、オレ自信ないわ」
◇23:51:49◇
やばい、もう十分切った。
SE組の突破まだなのかよ。
そんな俺の願いが通じたのか、
『SE組、端末に到着! ログアウト作業に入った!』
残り少なくなったメンバーに、護衛組から電話回線で連絡が飛んできた。
よかった、松井先輩も生き残ってた。
俺は表情を引きつらせるレイモンドに、狙いを定める。
「二人共、絶対に死ぬなよ」
「もちろん!」
「ぜ、善処します」
三枝さん、柏木、また現実で会おうな。
俺は最後の力を振り絞り、有象無象を切り捨ててレイモンドに向かって走った。




