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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase06:Play the myself , as the melody of Fortissimum
59/62

Stage58:2063/01/26/23:29:35【-0000:30:25】

 システム中枢のフィールドは、ある意味ユニコーンスタジオのVR空間と似たようなデザインをしていた。床と壁は六角形のタイルで統一され、明かりのオブジェクトはないけど空間の明度を調整してあるので適度に明るい。

 ただし、色は正反対だ。

 タイルの色は黒く、タイルの境目からは非常灯みたいな赤い光が漏れている。

 そして、何より空間がむちゃくちゃでかい。端から端まで、もしかしたら一キロくらいあるんじゃないかってくらいでかい。

 その真ん中に、東京スカイツリーみたいなでっかい塔が建っていた。でもてっぺんは天井に埋もれているから、本物よりは高くない。実物は見た事ないから知らんけど。

 恐らく~とか言うまでもなく、あれがシステム中枢へとアクセスする端末だろう。

 周辺には同心円上に机のようなオブジェクトがいくつも構成されていて、その上には大量のホロウィンドウが映し出されている。

 どのフィールドでも、戦闘は行われていない。

 あんなメールが送られてきたんだ。誰だってゲームなんかやってる場合じゃないだろう。

 ユニコーンスタジオの職員やSEの人がいるサーバーでは、似たような事をやってるみたい。ホロウィンドウのいくつかに、フィールドからコードを引っ張ってきてる人達が映っている。

 色んなサーバーの人が映し出されてるって事は、さっきまでいたサーバーとは別のサーバーなのか。

 サーバー間での連絡ができれば、もっと大勢力で攻めてこれたのに。残念だな。

「全員入りましたね。端末は中心のアレです。急ぎましょう」


   ◇23:31:05◇


 ホログラスの設定をいじって表示させた時間は、三一分。残り三〇分を切った。

 SEの人達を真ん中に、その周囲に盾、魔法使い、剣士と陣形を組む。

 全員が周囲に警戒を払いながら、全力で走り出す。

 だがその矢先、中央付近に大量のポリゴンが漂い始めた。

 ポリゴンは数十ヶ所へと収束していき、人の形を作り出す。

「予想通り、やっぱりでてきやがったか」

 しかも、俺達のだいぶ予想外の姿で。

「伏せて!」

 俺を含めて、十数人のプレイヤーが叫んだ。

 複合パーティーはばらばらにわかれ、机型のオブジェクトに隠れるように伏せる。

 ドドドドドドドドッ!

 その頭上を、聞き覚えのある音が通り過ぎていく。

 絶え間なく空間に響くのは魔法による連続爆発の音ではなく、マシンガンによる掃射の音だった。

 俺達はてっきり、相手もブレゴスのアバターでくると思っていた。ブレゴスのシステム中枢に入るんだから、普通はそう思う。

 でもそこへ、インフェルスの連中はシューティングゲームのアバターを送り込んできた。

 全身に防弾装備を着込み、マシンガンやらショットガンやら、シューティングゲームで見慣れた携行火器がたくさん。

 こんなの、むちゃくちゃ強いモンスターを呼ばれるのより予想外だ。

 ばらけてしまった以上は仕方がない。近くのSEの人を守りつつ、応戦しないと。

「とっとと失せろ、フィアムンド・ハンドリー!」

 一瞬だけ顔を出したレヴィたんが、適当に狙いをつけて魔法を放つ。巨大な火球は緩やかな速度で、弾丸の飛んできた方へと撃ち出された。

 ドッと爆発が起き、余波で起きた凄まじい爆風と突風がすぐ近くを通り過ぎていく。

 しかし、

「っ、痛っっ!!」

 流れ弾みたいにどこからか流れてきた弾丸が、レヴィたんの肩を貫いた。

 レヴィたんは傷口をぎゅっと抑えてうずくまり、苦悶の表情を浮かべている。

「先輩!」

 思わずかけよりながら、パーティーのHPバーからレヴィたんのを見た。

 今の一発だけで、HPバーが一割以上消し飛んでいた。

「気を付けてください! かすっただけでも、HPが持って行かれます!」

 でも、もう遅い。

 あちこちで、銃に撃たれた激痛による悲鳴があがった。

「瑛太、これたぶん、痛みフィードバックが、百パーセントになってるぞ」

「でしょうね。俺も経験がありますから」

「ネカマ先輩、回復します」

 くそ、フィードバックのリミッターが解除されてやがる。

 しかも、今回は回線接続の強制解除も発生しない。

 これじゃ、仮想のフィードバックで本当に死にかねない。でも、それだと向こうの連中もタダじゃ済まないぞ?

 俺達と同じようなフィードバックがあるなら、今のレヴィたんの魔法で大火傷を負った人もいるはずだ。

「魔法だ! 魔法で適当に上から攻撃しろ!」

 横の方から、そんな声が飛んできた。

 なるほど、確かに魔法ならそんな使い方もできるな。

「グラム・グロム!」

 オブジェクトからエンシェントブレードだけを出して、雷系の魔法を唱えた。

 さっきのチートツールで獲得した魔法スキル、さっそく使わせてもらうぜ。

 剣の上に魔法陣ができたと思ったら、そこから十三本の極太の雷撃が撃ち出された。

 狙いはつけてないから、当たったかどうかはわからないけど。

 ただ、銃撃が薄くなってきたって事は、それなりに効いているんだろう。

「どうですか、ネカマ先輩」

「あぁ、ありがとう。どうやら、反動ダメージの回復魔法で、フィードバックの痛みも和らぐらしい」

 撃たれた肩を回しながら、レヴィたんは魔法をお見舞いした。

 頭上に浮かんだ無数の火球が、オブジェクトに隠れた過激派を襲う。

 ジューシーな肉の焼ける臭いがしないのが、唯一の救いかな……。いやいやいや、想像すんなって。

 嫌とか思いながら想像しそうになったのをやめて、魔法攻撃に専念する。

 MPも9999になったから、MP消費を気にすることなくどんどん魔法を放つ。

 これが、平地での戦闘でなくて良かった。

 もし開けた場所だったら、マシンガンの一斉射だけで全滅してただろう。

 と思っていると、銃声とは違うけど、カラララッて軽い金属音が。

 ただその音が聞こえた瞬間には、俺もレヴィたんもラピスも、音のした方とは正反対の方に飛んでいた。

 数秒遅れて、ドォォオオオンッ!! って手榴弾の爆発音が耳に入る。

「お、レヴィたん先輩達。見えないと思ったら、前の方いたんすね」

「みんな、すごい慣れてるんだね、銃撃戦。私とライトくんは怖いから、ここからずっと魔法撃ってた」

 そりゃ、シューティングゲーム慣れてますからね。

 あぁいうゲームって基本が全部一緒だから、慣れてるとどれやってもそれなりの得点だせるんなよねぇ。

 その経験がブレゴスで役立つ日が来るなんて、夢にも思わなかったけど。

「っくそ。あいつら、あといったいどれだけいんだよ」

 銃声の数は、明らかに減りつつある。でもそれと同時に、こっちの人数もちょっとずつ減っている。

 さっきの手榴弾もそうだけど、魔法砲撃の手薄なところは、爆発系の火器を使いまくってるみたいだ。

 さっきから、ロケットランチャーを連射してる音が聞こえるんだけど、お願いだから空耳であってくれ。


    ◇23:36:29◇


 あと二四分。このペースなら、向こうを全滅させてからでも十分に間に合う。

 あと五分くらいの辛抱だ。

 だがその前に、向こうも次の手を打ってきた。

 今度は俺達の後方に、多数のポリゴンが集まり始めたのだ。

 やばい……。このままだと、前後を挟まれて動けなくなる。

「ストォーーーーーーーーーップ!!」

 ドスの利いたしわ枯れた声に、銃声が鳴り止んだ。

 一方で後ろを取られた俺達も、前後からの攻撃を防ぐようにオブジェクトの間へともぐりこむ。

 俺達の後方に構成されたのは、三、四〇体のアバター。

 どこぞの特殊部隊みたいな全身迷彩服の銃火器装備ではなく、ブレゴスのアバターだ。

 相手の出方を窺うため、こちらも一旦攻撃をやめる。

 いったい何が目的で、あいつは攻撃をやめさせたんだ?

 余裕か、それとも慢心か。

 それなら、銃撃の止んでるこの隙に、一気に端末までの道を切り開いてやれるんだけど。

「やあやあ諸君。まさかこうして我々に直に会いに来てくれるとは、思ってもみなかったよ。導きし者達(エル・クワン)代表の、レイモンド・アイファルマだ。どうかな? 我々の準備した余興を、楽しんでいただけたかな?」

 銃撃を止めさせた男性型アバターが、この場にいる全員に向けて朗々と語りかけてくる。

 レイモンド・アイファルマ。一週間前の一斉メールで、アカウントを停止されたはずだけど、まあユニコーンスタジオに協力者がいれば、関係ないか。

 少しだけオブジェクトから顔を出してみると、レイモンドとかいうヤツのアバターが見えた。浅黒い肌、プラチナブロンドのオールバック、暗い紫を基調とした甲冑(かっちゅう)紫水晶(アメジスト)でできた剣を両手に携えている。

 芝居がかった大仰なしゃべり方が、少し鬱陶しい。

「そんなわけあるか! さっさとログアウトさせろ!」

 どこから別の場所から、誰かが声を張り上げる。

 その瞬間、銃を構え直す音がカシャッと聞こえた。

「やぁめろぅ! 客人には敬意を持って対応しろと、あれほど言っているだろう! 彼等は知らないだけなのだ、この世界の真理を」

 でもそれを、レイモンドは押さえた。

 ほんと、何なんだよコイツは……。

「ッ!?」

 うわっ、目が合った。

 慌ててオブジェクトに身を隠す。

「誰かと思えば、速水瑛太くんじゃないかぁ。三枝夏美くんもいるのかな。久し振りだねぇ。元気そうで、私も嬉しいよ」

 ただ、目が合ったのなんかとは比べられないくらい、ドキッと心臓が跳ね上がった。もちろん、悪い意味で。

 ドキドキすんなら、三枝さんと一緒の方が一億倍いいわ。

「瑛太、知り合いなのか?」

「知りませんよ、あんな知り合い」

「私もですよ、あんなの」

「おやおや~、忘れてるなんて心外だなぁ~。ほら、いつぞやのビーチで、私に鋭いタックルをくれたじゃないかぁ」

 レヴィたんに聞かれた時はわからなかったけど、レイモンドの言葉でようやく繋がった。

 あの時の仮面野郎が、レイモンドだったのか……。

 俺の中で、怒りがどんどん大きくなっていく。こいつのせいで、あの楽しい時間が台無しにされたかと思うと、自然と右手に力が入る。

「では特別に、第二審を開こうじゃないか。私の寛大な処置に、感謝するといい」

「誰がするかよ……」

「速水瑛太くん、我々と共に手を取り合い、真なる楽園(エデン)へと至ろうではないか!」

 俺は立ち上がり、真っ直ぐにレイモンドを見る。

「やなこった……」

 エンシェントブレードを握り、移動補助の魔法を唱え、レイモンドに斬りかかった。

 こいつだけは、絶対に許さねぇ!

「まだ、現実(リアル)でやり残してる事があるからな!」

 くそっ、受け止められちまった。

 交差させた双剣と俺のエンシェントブレードが、ばちばちと火花を散らす。

「それを、君達の総意と受け取らせていただこう。暗闇の底で、誤った教えを反省するといい。全員剣を抜け! 迷える同士達を、真なる自由へと解き放つのだ!」


    ◇23:46:04◇


 それを合図に、両方のプレイヤーが盛大な雄叫びを挙げた。

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